知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード

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知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 000
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みなさん、初めまして！ITジャーナリストの牧野武文です。
「中華IT最新事情」というブログの発行人を務めていることもあり、この度、中国のITビジネスに関するメールマガジンを発行することになりました。このメルマガでは、中国ITビジネスを理解するキーワードを毎回１つ取り上げて、深く解説していきます。
「このようなキーワードを取り上げてほしい」というご要望にも可能な限りお応えしようと思っています。
今回は、「ファーウェイ」です。

中国のITビジネスを深く理解するためのキーワード vol. 000
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▼目次▼

1. ファーウェイと創業者、任正非
2. 今週の「中華IT最新事情」
3. Q&Aコーナー
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ファーウェイと創業者、任正非
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ファーウェイは言うまでもなく、世界最大の通信機器ベンダーです。スマートフォンのグローバルシェアも、サムスン、アップルに次ぐ、第３位の企業です。
世界のIT企業の営業収入ランキングでも、第１位のアマゾン、第２位のアルファベット（グーグル）に次ぐ、第３位の1070億ドルで、Facebookの２倍弱の売上があります。
中国のテック企業３強を表す言葉で、BAT（バイドゥ、アリババ、テンセント）という言葉がありますが、ファーウェイの売上は、アリババとテンセントの売上合計を超えています。中国の中でも、頭抜けたテック企業であり、最近では百度（バイドゥ）が業績を落としていることもあり、ファーウェイ（Huawei）を入れて、HATという言い方もよく使われるようになっています。

多くの日本人がファーウェイの名前を意識し始めたのは、米国のファーウェイ排除の動きが起きてからでしょう。日本でも、創業者の任正非（レン・ジャンフェイ）が人民解放軍に在籍した過去があることから、政府や軍との結びつきについて多くの報道がありました。
本当に、ファーウェイが人民解放軍と結託して、通信データや個人情報を収集しているのか、その真偽は私にはわかりません。しかし、スマホや通信機器というのは、自動的に個人情報などが収集できてしまう装置です。アップルのiPhoneやグーグルのAndroidも、「サービスの品質改善のため」として、多くの情報をサーバーに送信して収集しています。
2013年には、NSA（米国家安全保障局）が、このようなデータを違法に盗聴し、テロ対策に使っていたと、元NSA、CIA職員のエドワード・スノーデンが告発したこともあります。
つまり、通信設備やスマホは、情報が取れてしまう装置なので、米国が中国製品を警戒するのは当然のことなのかもしれません。ファーウェイが「人民解放軍の手先」であるかどうかは関係なく、米国としては用心しておかなければならないのです。

では、ファーウェイというのはどのような企業なのでしょうか。任正非とはどんな人なのでしょうか。
任正非は、1944年生まれの75歳です。貴州省の山の中にある貧困の村に生まれました。両親はその村の学校の教師をしていました。任正非は７人兄弟の長男です。貧乏人の子だくさんの言葉通り、家は食べるものにも困るほど貧しく、任正非は「子ども時代に、お腹いっぱい食べたという記憶がない」と言います。任正非の人生にとって「どうやって食べていくか」が常に最大のテーマであり続けることになります。

父親は、貧しくてもインテリでした。若い頃には抗日運動や共産主義運動にも参加をしていました。父親は「知識こそ力だ。周りが学ばなくても、お前は学べ」と、任正非に言い続けていたと言います。
任正非も、この貧困から抜け出すには、上級学校に進むしかないと一心不乱に勉強をしました。
1963年、任正非は現在の重慶大学の建築学科に進学します。両親が貧しくても進学資金を以前から蓄え、足りない分は駆け回って借金をしてくれたからです。任正非は、大学で建築学を学ぶだけでなく、学生寮に帰ってから、独学で電子計算機、数学、哲学、外国語などを学びました。

大学は卒業したものの、文化大革命の真っ最中であったために、就職口などありません。そこで仕方なく、「すぐに食べられる」人民解放軍に入隊をして、建築兵になり、飛行機工場などの建設に携わることになります。
しかし、つらい時代だったといいます。父親が、過去に政治活動をしていたことから、文化大革命時代に反革命的だとして投獄されていました。任正非は、犯罪人の子どもであるということから、人民解放軍の中でどれだけ成果を上げても、まったく評価されなかったのです。
文化大革命をご存知ない方も多いと思いますが、一言で言って狂気の時代です。毛沢東が政敵を追い落として復権するために、反革命的な人物を糾弾することを奨励します。お金を持っているだけで退廃主義者だとされ、書物を持っているだけで修正主義者だというレッテルを貼られ、過酷な私刑を受けたり、投獄されたりしました。密告と疑心暗鬼が吹き荒れ、無数の人が理不尽な理由で投獄されたり、命を落とした時代です。

文化大革命が終わると、今度は人民解放軍の大規模なリストラが始まりました。任正非は真っ先にリストラ対象になります。仕方なく、1982年に、国営企業である南油集団傘下の、ある電子機器企業の副社長の職を見つけました。
しかし、副社長といっても、わずか20人ぐらいの工場のことで、お金もなければ仕事もない企業です。
しかも、任正非は焦るあまり、悪い人間に会社のお金を200万元も騙し取られてしまいます。都市部の平均月給が100元に満たない時代のことです。
どのような事件だったのかは、任正非自身、口をつぐんでいますが、「世間知らずで、ビジネスに関する知識がなかったため」と回想しています。
このせいで、任正非は、副社長を辞職せざるを得なくなります。

しかも、この時、妻が愛想を尽かしたのか、離婚を切り出してきました。子どもも一男一女がいて、さらに両親、さらには６人の弟、妹まで、任正非を頼ってきています。この人たちをなんとか食べさせていかなければならない。
困り果てた任正非は、南油集団時代の仲間５人と、2万元の創業資金を集めて、華為（ホワウェイ、ファーウェイ）を創業します。それは、食い扶持をなんとかするためでした。
「成功した人は、大きな夢を持って起業したと言うが、私には会社を大きくしようとか、何かを成し遂げようということはまったくなかった。起業したのは、ただただ生き延びるためで、これに活路を見出すより他になかった」と言っています。

創業当初は、なんでも売りました。ダイエット薬品も売ったことがありますし、墓石を売ろうと考えたこともあったそうです。
その中で、事業の柱になったのが、普及をし始めた電話のデジタル交換機でした。当時の中国では国産のものがないので、欧州メーカーの交換機を輸入するしかありません。しかし、ファーウェイには直接輸入する手立てがない。
そこで、香港の輸入商を経由して、中国国内で輸入販売をしていました。しかし、香港の輸入商は、足元を見て、高い手数料を取るため、ファーウェイは少しも儲かりません。
そこで、任正非はデジタル交換機を分解して、見よう見まねで独自開発する道を選びました。
1991年に、住宅を借りて、ファーウェイの研究所を開設します。研究所といっても、製造工場を兼ねており、社員食堂を兼ねており、社員寮を兼ねているというもので、社員数はすでに50名になっていたのに、寝る場所は10人分しかありません。50人が交代で寝たそうです。任正非のオフィスも、ベッド用マットレス１枚の上でした。

当初は、性能もあまりよくなく、交換できる電話の台数も24台までと少なかったので、細々と病院や鉱山に売っていました。
1994年に開発をしたC&C08A型交換機がヒット商品になりました。ライバルの交換機よりも扱える電話の台数は多いのに、価格は半分だったからです。
それでも、大手電話会社はファーウェイを信用せず及び腰だったため、ファーウェイは農村などの地方の小さな電話会社に積極的に営業をしました。地方電話会社は、性能よりも価格を優先したからです。しかし、使ってみると、意外に性能も優れているということから、次第に都市部の大手電話会社にも導入されていくようになりました。
ここから、通信設備、ポケットベル、携帯電話、スマートフォンと手を広げて行ったのです。

ファーウェイの強みは研究投資です。現在でも、利益の多くを研究投資に回していると言われています。そのために、株式を非公開にしています。有限責任公司という中国版LLC（Limited Liability Company、合同会社）の統治方式を採用しています。これは、株式比率に限らず、約款で意思決定機構を定められるという方式です。任正非と孫亜芳取締役会会長の２人で、すべての意思決定ができる内容になっていると言われています。
ファーウェイの意思決定の仕組みは、輪番制CEOなどがあり、非常に複雑で、外部の人間にとって正確に知るのは難しいことですが、いずれにせよ、事実上、創業者の任正非が相当の影響力を持って、スピード感があり、独自の決定が可能になっているようです。
世界屈指の通信設備企業でありながら、事実上、一人が意思決定をし、研究に莫大な投資をしている。これがファーウェイの競争力に強さになっていることは間違いありません。

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今週の中華IT最新事情
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11月25日（月）
広州地下鉄が顔認証改札を導入。長い処理時間を解消する工夫とは
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11月27日（水）
60歳以上の優待乗車を顔認証乗車にした深圳地下鉄
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11月28日（木）
飛行機の中でもキャッシュレス決済。WeChatペイとアモイ航空が正式スタート
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11月29日（金）
QRコード決済窃盗に登場した第３の手口。バーコードがセキュリティホールに
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Q&Aコーナー
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