公認会計士の資格を自ら手放して―未経験から「男社会」のドローン・宇宙業界に挑んだ、もう一つのキャリアの描き方

2026.10.09
by まぐまぐニュース スタッフ
記事サムネ
 

クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りするラジオ番組『Why So Good?』。MCの越川慎司氏とアシスタントMCの上條美沙子氏が、ゲストの「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか(Why)」を掘り下げていく30分番組だ。

今回のゲストは、株式会社Kanatta代表取締役社長の井口恵氏。男性が8〜9割を占めるとされるドローン業界・宇宙業界で、女性限定コミュニティ「ドローンジョプラス」「コスモ女子」を運営している。2024年にはコスモ女子発の人工衛星「Emma」の打ち上げに成功し、女性だけの団体としては日本で初めての快挙として注目を集めた。同年、Forbes JAPAN「WOMEN AWARD 2024」ではパイオニア賞も受賞している。

テクノロジー領域で女性が挑戦するきっかけをつくり、ジェンダー平等の実現に貢献することをミッションに掲げるKanatta。男性が9割を占めるとされるドローン業界では、およそ100名の女性ドローンパイロットが活躍するドローンジョプラスを運営し、2020年には宇宙が好きな女性のためのコミュニティ・コスモ女子を発足。2016年の創業から約10年、男性中心の業界構造にコツコツと風穴を開けてきたその歩みの原点には、井口氏自身の「公認会計士」というまったく異なるキャリアがあった。

井口氏のキャリアの出発点は、意外にもドローンでも宇宙でもない。2010年に横浜国立大学経営学部を卒業後、新卒で有限責任あずさ監査法人に入所し、国際部で国内上場企業や外資系企業の監査を担当する公認会計士だった。2013年にLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンへ転職してアナリストとして市場分析・財務戦略に携わり、2016年、株式会社Kanattaを創業。そして起業にあたって、井口氏は自ら公認会計士の資格を抹消するという決断をしている。

公認会計士、ラグジュアリーブランドのアナリスト、そしてドローン・宇宙業界の経営者。一見するとバラバラに見えるキャリアの一本の線をたどると、その中心には常に「女性としてキャリアをどう描くか」という一貫した問いがあったことが見えてくる。なぜ、積み上げてきた資格を手放してまで、まったくの未経験だったドローン・宇宙業界に飛び込んだのか。番組での対話をもとにたどっていく。

入社初日から終電、2年目からは朝帰り――監査法人というスタート地点

井口氏のキャリアは、決して楽な道のりではなかった。新卒で入所した監査法人では、入社初日から終電帰りが当たり前。2年目にはクライアントの近くに引っ越したこともあり、朝帰りが常態化していたという。

井口:すごい忙しかったです。入社初日から終電帰りで。2年目にクライアントの近くに引っ越してしまったので、もう朝帰りが当たり前になってしまいました。

越川氏が「もう寝に帰る、シャワー浴びに帰るみたいな」と水を向けると、井口氏も「そんな感じで」と笑いながら認める。越川氏がそれを「ちょっとブラックな感じですね」と評すると、井口氏も「そうですね。ブラックな」と苦笑いで返した。

会計士業界は8割以上が男性とされる業界だ。新人の時期こそ女性も一定数いるものの、管理職になるとほとんど女性が残っていない状況を目の当たりにし、井口氏は「女性としてキャリアを描きづらい」と感じていたという。

その後転職したLVMHは、従業員の約8割が女性という職場だった。定時より前に帰してもらえることもある、いわゆる「ホワイトな会社」。越川氏が「女性が比較的多い職場ですかね」と尋ねると、井口氏は「8割ぐらい女性の職場でした」と答える。しかし、ここでも役員陣はほとんどが男性だったという。

会計士時代とは異なる業界・会社でありながら、現場の多様性と意思決定層の偏りという、同じ構造の壁に突き当たったことになる。働きやすさが改善されても、キャリアの天井そのものは変わらない―その実感が、後の起業の原動力の一つになっていく。

きっかけは首相官邸のドローン落下事故

女性のキャリアにつながる会社をいつか立ち上げたい――そう考えていた井口氏に転機が訪れたのは、2015年。首相官邸にドローンが落下した事故が大きなニュースになった時のことだ。当時勤務していたLVMHのオフィスが永田町にあり、現場のすぐ近くにいたという。

井口:すごい怖かったんですけど、その時に初めてドローンを知って。ドローンの存在すら知らなくて。なんか落ちたって言われて、怖い怖いってみんなで見た時に、ドローンって何なんだろうって思って調べたら、中国とかアメリカではかなり成長してる産業で、日本でもこれからも絶対大きくなっていくだろうって思ったんですけど、9割以上が男性っていうのを知った時に、もしかしたらここにチャンスがあるんじゃないかって思って、翌年に仕事を辞めて起業したっていう感じです。

当時のドローン業界は男性が9割以上を占めるとされていた。その偏りをハンデではなく「チャンス」と捉える発想の転換が、井口氏のその後の活動すべての起点になっている。

越川氏も「LVMHって就職人気ランキングかなり上位でホワイトな職場で活躍されてたにも関わらず起業するって、やっぱり何か捨てなきゃいけないものってあったんじゃないか」と、起業に伴う決断の重さに踏み込んでいく。会計士という安定した専門職、さらにはホワイトな環境で働ける人気企業というキャリアを二重に積み上げていた井口氏にとって、起業という選択はゼロからのスタートというより、積み上げてきたものをあえて手放すところから始まった。

「戻れる場所」をなくすために、公認会計士の資格を抹消した

誰もがうらやむ人気企業からの起業は、傍目には華やかに映る。しかし、起業すれば毎月決まった日に給料が振り込まれる保証はなくなる。越川氏が「手放したものはあるか」と尋ねると、井口氏は迷わず答えた。

「うまくいかなくても会計士に戻ればいいやと思ってしまいそうだったので、あえて会計士資格はその時に抹消しました」

公認会計士は三大資格・四大資格の一つにも数えられ、取得には相応の努力を要する。越川氏が思わず「僕なんかお金出しても欲しいぐらいの資格なのに」と漏らすほどの重みを持つその資格を、井口氏は自ら手放した。保険にも足掛かりにもなる資格を残しておけば、きっと甘えが出る。その逃げ道を断つための、あえての選択だったという。

その動機は、誰かのためというより、まず自分自身のためだったと井口氏は振り返る。

井口:自分がその経済的に自立したいとか、その子供ができても活躍し続けたいっていう思いから、なんとかこの事業を形にしようって思って、全力投球するために、退路を断ちました。

女性活躍そのものを旗印に掲げるより先に、自分自身が経済的に自立し、挑戦し続けられる状態をつくる。その覚悟の表れが、資格の抹消という決断だった。番組内でも上條氏が「すごい自ら」と驚きの声を上げる場面があったほど、本人にとっても後戻りのきかない選択だったことがうかがえる。

安全網を外した状態で全力投球する――その姿勢は、後にドローン・宇宙業界という未知の領域へ飛び込む際の基本姿勢にもなっていく。

ドローンから宇宙へ――隣接する二つの「男社会」

創業後、井口氏はドローン交流コミュニティ「ドローンジョプラス」の運営を軸に事業を広げていく。現在、同コミュニティに所属する女性ドローンパイロットは約100名。ドローンの操縦体験会を全国各地で開催し、「ヒルナンデス」「ガイアの夜明け」「スッキリ」といったテレビ番組でも取り上げられてきた実績を持つ。

ドローン事業を手がける中で、井口氏は次第に宇宙業界の関係者とも接点を持つようになる。衛星写真では見えにくい細部をドローンで撮影するなど、両分野は実務上近い関係にあり、自然と人脈が重なっていったという。

越川:空飛んでるっていう意味では一緒ですけど。でも飛行距離は相当違いますよね。

井口:はい。ただその衛星写真だとちょっと細かいところまで見れないから、じゃあドローンで撮ってみようみたいな形で、結構あの、両方を使う方が多いんですよ。なんで、そのドローン業界でお仕事する中で、宇宙業界の方とも知り合いになることが多くなってきた時に、その宇宙業界もドローンと同じように男性が八割以上。

周囲の女性に話を聞くと、「本当は宇宙業界で働きたかったけれど、自分には無理だと諦めた」という声が少なくなかったという。その声が、井口氏を宇宙業界への参入に向かわせた。

「本当は宇宙業界で働きたかったけど、自分には無理だと思って諦めた――そういう人が多かったので、またきっかけが作れたら、女性が宇宙業界でもっと活躍できるようになるんじゃないか」

2020年、宇宙が好きな女性のためのコミュニティ「コスモ女子」が発足した。「宇宙を身近に」をテーマに、専門的な勉強会から初心者向けのイベントまでを定期的に開催し、宇宙業界でのキャリア形成やビジョン実現を後押ししている。

ドローンジョプラスの活動は、コミュニティ内にとどまらない。全国各地での操縦体験会を通じて、これまでに延べ1万人を超える方々にドローンの魅力を届けてきた実績があり、テレビ番組での特集も相次いだ。井口氏自身、こうした草の根の活動の積み重ねが、未経験者の裾野を広げる土台になっていると考えている。

井口:本当に女性に限定したコミュニティなので、最初は怖いとか難しそうって思っていた方でも、同じ立場の仲間がいるからこそ一歩踏み出せるっていうのはあると思います。

子ども向けのドローン×プログラミング体験会など、次世代への働きかけも続けている。学校や自治体、企業と連携したワークショップは、ドローンや宇宙を「自分とは縁遠いもの」から「いつか自分も関われるかもしれないもの」へと印象を変えていく仕掛けの一つだ。井口氏がドローンの存在すら知らなかったところから出発したように、最初の接点があるかないかが、その後の選択肢の広がりを大きく左右する。番組中でも越川氏は「認知度って結構重要ですね」と繰り返し強調していた。

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文系でも宇宙に携われる、という選択肢

「理系でなければ宇宙業界には縁がない」というイメージを、井口氏は自身の活動を通じて塗り替えようとしている。番組では、越川氏が「もともと理系の学校を出た方が入社しているのか、それとも文系の方が後に興味を持つこともあるのか」と尋ねた。

井口:多分ドローンジョプラスはほとんど文系で。コスモ女子はアンケートを取ったら半分。

越川:でも半分なんですね。でも文系でもそういった宇宙の事業に携わることはできるってことですね。

井口:そうなんです。今コスモ女子の会の二割ぐらいが未経験だったところから宇宙業界に転職をできているので。

宇宙業界ではエンジニア不足が指摘される一方、民間企業の参入拡大に伴って営業や広報といった文系人材の需要も今後高まっていく、と井口氏は見ている。ファンディングを集める仕事はまさに広報・文系領域の仕事であり、専門知識の有無にかかわらず活躍できる場は広がっているというのが井口氏の実感だ。

井口:なんだろう、ずっと宇宙の勉強されてきた男性が話すよりも、今まで全然違う分野でお仕事してきた女性が今宇宙業界で働いてますって言った方が、なんかもしかしたら自分にもチャンスがあるかもっていう。身近にするっていうところで、すごく重宝していただいてるなって思います。

越川氏も「自分で選択肢を消すことはないですもんね。こういうこともできるんだっていう選択肢があれば、学生のうちから理系に行ってみようかな、宇宙事業に関わろうかなって思えるから、やっぱり認知度って結構重要ですね」と応じ、未経験からの越境者であること自体が、後に続く女性たちへのメッセージになっていると評した。

「職業は宇宙です」と言えるようになった女性が、文系・理系の垣根を越えて増えていく。井口氏の語る数字の一つひとつは、派手な成功譚というより、地道な接点づくりの積み重ねの結果として読める。未経験だった自分自身がドローンを知り、起業し、宇宙業界に参入してきた過程そのものが再現可能なロールモデルとして機能している点に、このコミュニティ運営の強みがある。

女性だけのチームで挑んだ人工衛星打ち上げ、日本初の快挙

番組冒頭、越川氏が開口一番に切り出したのも、この実績についてだった。

越川:空を飛ぶドローンじゃなくて、とうとう宇宙まで行っちゃうっていう。人工衛星打ち上げちゃったんですよ。

上條:すごすぎますね。

井口:そうですね。2024年に人工衛星を打ち上げまして。

女性中心のコミュニティとして日本初となる人工衛星の打ち上げという快挙であり、この実績は番組の外でも評価され、2024年9月にはForbes JAPAN「WOMEN AWARD 2024」のパイオニア賞受賞にもつながっている。

日本のGDPを支える産業として――宇宙・ドローンへの期待

越川氏はIT業界出身という自らの経歴にも触れながら、宇宙産業への期待をこう語った。

越川:そのIT業界、僕ももともとマイクロソフトのIT業界ですけど、テクノロジー業界は、例えばドローンとかAIとかっていうのは、他の業界に比べれば早く知ってたかもしれないけども、もうそのIT業界も八割男性なので、そこを女性に門戸を広げるってことと、僕は個人的に日本のGDPを上げるのは僕、宇宙産業だと思ってるので。

日本は精密機器など得意分野を多く抱える上、太平洋側へロケットを打ち上げる際に障害物が少ないという地理的なアドバンテージもある、と越川氏は指摘する。

井口:そう、だから絶対スペースポート日本でたくさんできるはずなのに、まだないのが残念。

越川:でも一応成長戦略の延長線上にそういったものも入ってますし、まあなんかある程度ビジネスになり始めたらお金が集まりやすいかなと思うんですけど、やっぱり人材不足はあるのはあるんですかね。

井口:人材不足ありますね。特に今エンジニアが足りないというふうに言われていて。で、ただもうちょっとしたら、今まで国とかしかやってこなかった宇宙事業を今民間がどんどん参入している。なので今までいらなかった、その営業とか広報とか、そういう文系の仕事も絶対必要になってくるので。

越川氏が「これからファンディング集めるのなんて完全に広報・文系の仕事ですもんね」と応じると、スタジオからも「女性ならではの強みがその業界で活かせるみたいなことも増えてくるんですかね」という声が上がった。ビジネスとしての土台が整えば人材もお金も集まりやすくなるとの見方で意見が一致し、エンジニア不足という課題の裏側に、文系人材を含めた裾野拡大のチャンスがあるという認識が共有された。

テクノロジー業界全体を見渡しても、ドローンやAIといった新しい分野はいち早く知る機会があったはずの業界でさえ、依然として男性が多数を占める構造が続いている。井口氏がドローン・宇宙という二つの業界で同時に取り組んでいるのは、個別の技術分野の課題というより、テクノロジー産業全体に根を張るこの構造そのものへのアプローチだと捉えることもできる。

「迷ったらチャレンジングな方へ」――マイルールと子育てとの両立

男性中心のルールが根強く残る業界で働く上で、井口氏が大切にしているマイルールがある。越川氏から「迷ったらリスクが低い方を選ぶとか、何かご自身のマイルールはあるか」と問われ、井口氏は即答した。

「迷ったら、よりチャレンジングな方を選ぶ」

越川氏も「僕と一緒だな」と頷き、「迷ったらゴー」という合言葉で意気投合する一幕もあった。

井口:迷ゴーですか。

越川:迷ゴー。ありましたね、迷ったらゴー。

軽快なやり取りの一方で、越川氏は「公認会計士を諦めるんですよ。僕なんかお金出しても欲しいぐらいの資格なのに」と、井口氏の覚悟の大きさをあらためて強調する場面もあった。スタジオからも「すごいストイックというか、自分への向き合い方がすごいな」という声が上がったほど、迷ったら挑戦を選ぶというシンプルなマイルールの裏には、相応の胆力が必要とされることがうかがえる。

もう一つ、子どもが生まれてから徹底しているのが、社内のミーティングを午前中にすべて終わらせるというルールだ。子育て中のメンバーが多く、早朝や深夜の方がかえって落ち着いて話せるため、現在は朝6時から会議を行うこともあるという。

井口:もう今六時から会議してます。結構子育て中の方が多いので、早朝とか深夜の方が落ち着いて話せるっていうのもあって。特に定時もないので。

午前中にミーティングを終える、というルールを聞いた越川氏は「さあ、もうこれ全会社に聞いてほしいですね」と前のめりになった。

越川:働く人調べたら働く時間の39%社内会議なんですよ。それもAI使って調べたら41%が内職して聞いてないっていう。社内会議はエンタメ化しやすくて、上司が言うことを聞くみたいな、好きなことを喋るみたいなやつが、特に日本企業では蔓延しちゃってるから、午前中だけとかってまとめるのはすごくいいですね。

勤務時間ではなく成果で報酬を測るという働き方は、グローバルでは一般的とされながらも、日本ではまだ浸透しきっていない。越川氏も「もう基本的に裁量労働で、勤務時間ではなく成果を報酬に出すっていうのは、もうグローバルレベルでは一般的なことですが、これを日本でやるってすごく大変」と評した。それを自らの組織で、しかも子育てをしながら実践している点に、井口氏なりの働き方の再設計が表れている。会計士時代の終電帰り、LVMH時代の定時退社、そして今の朝6時会議。環境も肩書きも大きく変わりながら、井口氏はその時々で最適な働き方を模索し続けてきた。その延長線上に、ドローン・宇宙というもう一つの「男社会」への挑戦がある。

これからのビジョンと、国家ライセンスという新たな挑戦

今後のビジョンを問われた井口氏は、明確に言い切った。

井口:ビジョンはドローン宇宙業界のジェンダーバランスを対等にすること。優秀な方たくさんいらっしゃるので、その方々がドローン宇宙業界をキャリアに選ぶっていう状態。

ジェンダーバランスが対等になれば、それは優秀な人材がすでに集まり始めている状態の一つの指標にもなる、と越川氏も同意を示した。

その歩みは、組織の活動だけにとどまらない。井口氏自身も現在、ドローンの国家ライセンス取得に挑戦している。ドローン業界に携わって年月を重ねてきた今、改めて自分自身も資格を取ろうと決めたのだという。学科はともかく、実技が想像以上に難しいというのが本人の実感だ。本人によれば、通常のドローンはGPSによる姿勢制御機能が働き、手を離しても定点にとどまってくれるが、挑戦中の資格ではその機能をあえて無効にした状態で、風の影響を受けながら機体を制御することが求められるという。

井口:学科はそう言っていただくんですけど、実技もあるので、実技が本当に難しいんですよ。こんなにドローン難しかったんだっていう。今のドローンってGPS使って姿勢制御をする機能がついてるんで、正直言うと手離してもずっと定点で止まっててくれるんですよ。なんですけど、私が今チャレンジしてる資格はその機能をあえて切って、もう風が吹いたらそのまま飛ばされるっていう状態の中でちゃんとコントロールできるかって。

越川氏は「昔はそんなこと一切考えてなかったわけですよね。キャリアってほんとわかんないですね」と感慨深げに振り返る。ドローンが首相官邸に落下した事故から始まった道のりは、本人すら想像していなかった場所へとつながっていた。越川氏は「公認会計士の資格を持ってて、ドローンのライセンスを取る人って、この重なりのところって極めて少ない」と笑いながらも、「こういうキャリアを自ら切り開くっていうのは、ほんと応援したい限り」と締めくくった。

番組の最後には、井口氏自身やKanattaの活動をより知りたいリスナーに向けて、Instagramをはじめとする公式SNSでの発信が紹介された。ラジオという音声の場だけでなく、日々の活動を発信し続けることもまた、未経験からドローン・宇宙業界を目指す女性たちとの接点を増やす地道な取り組みの一つになっている。

監査法人の終電帰りから始まり、LVMHでの転職、資格の抹消、そして未経験からのドローン・宇宙業界への挑戦。井口氏のキャリアを振り返ると、どの転機にも共通しているのは、与えられた環境にとどまるのではなく、自ら環境を選び直してきたという姿勢だ。その選び直しの積み重ねが、結果として「女性だけの団体による日本初の人工衛星打ち上げ」という、誰も予想し得なかった成果につながっている。

公認会計士の資格を自ら手放した人物が、今度は自らの手でドローンの資格を取りにいく。回り道のようでいて、その軌跡はまっすぐに「ジェンダーバランスを対等にする」というビジョンへとつながっている。

番組を通じて井口氏が繰り返し語っていたのは、「未経験」を弱みではなく強みとして扱う視点だ。ドローンの存在すら知らなかった自分が起業し、宇宙の専門教育を受けてこなかったメンバーたちが人工衛星を打ち上げる。その道のりそのものが、同じように「自分には無理だ」と諦めかけている誰かへの、何よりも説得力のあるメッセージになっている。学歴や専門性ではなく、一歩踏み出すかどうか。未経験から宇宙を仕事にする女性たちの存在が、次の誰かの「自分にもできるかもしれない」を後押ししていく。井口氏とKanattaの挑戦は、まだ道半ばだ。

 

番組概要

  • 番組名:Why So Good?
  • 放送局:interfm
  • 放送日時:毎週木曜25:00~25:30
  • 出演:越川慎司氏(株式会社クロスリバー 代表取締役)
       上條美沙子氏
  • ゲスト出演:井口恵氏(株式会社Kanatta 代表取締役社長)
          - 公式サイト:https://kanatta.co.jp/
  • プロデューサー:エダコDX
  • ラジオ本編はこちらから https://www.interfm.co.jp/whysogood 
  • interfm(東京:89.7MHz 横浜:76.5 MHz) https://www.interfm.co.jp/
  • 番組TikTok(https://www.tiktok.com/@whysogood_radio)

※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです

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