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トランプついに弾劾か?中間選挙「民主党の上院勝利」と「共和党から相当数の造反」で“裸の王様”に下される審判

物価高や生活費の上昇を背景に、トランプ政権への逆風が伝えられるアメリカ。かような状況下で行われる中間選挙は、共和党と民主党の勢力図だけでなく「大統領弾劾」の可能性にも関わる重要な局面となっています。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では作家で米国在住の冷泉彰彦さんが、連邦上院の過半数を巡る攻防に焦点を当て、勝敗のカギを握る7州の選挙情勢を分析。さらに各州の世論調査や候補者の動向を比較しつつ、民主党が議席を上積みできる可能性について独自の予測を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:連邦上院過半数の行方(中間選挙直前情勢)

注目はとにかく上院。「アメリカ中間選挙」直前情勢

現時点での連邦上院の議席数は、共和党53に対して民主党が47となっています。この関係が逆転するかどうかが、今回の中間選挙における最大の焦点といえます。連邦下院については多くの調査の結果として、民主党の過半数奪還は揺るがないという情勢のようですから、注目はとにかく上院になります。

もっとも、本当の焦点は選挙後に「大統領弾劾」が進むかどうかであり、その場合は上院の単純過半数では全く足りません。定数100の中で3分の2にああたる67を確保しなくてはならないわけで。これは民主党にとっては不可能です。そうではあるのですが、共和党からは相当数の造反が見込まれると言われており、弾劾の可能性は否定できません。

では上院の共和党議員団の一定数が造反して弾劾に賛成するのなら、上院の選挙結果の細かな部分は意味合いが薄いのかというと、これも違います。まずもって、共和党サイドの造反に期待するとしても、民主党が1議席でも上乗せしていくということは弾劾に関しては、確実に近づくことになります。

更に、今後の人事を考えると上院の過半数は極めて重要です。例えば、1月以降に閣僚交代や、最高裁判事の入れ替えが発生した場合、また、トランプ氏が弾劾もしくは辞任した場合に、ヴァンス政権の副大統領を選任する場合などです。こうした場合には、上院の過半数の同意が必要だからです。

さて、先ほど申し上げたように、上院は現在共和党53対民主党(無所属含む)47で、民主党が多数派を奪うには差し引き4議席の上積みが必要です。副大統領は共和党ですので、50対50ではダメであり、野党の民主党としてはどうしても51議席が必要です。この「プラス4議席」というのが、民主党にとって可能かどうかということを今回は検討して参りたいと思います。

そこで、本稿では、上院の多数派を左右する激戦州として、メイン、ノースカロライナ、ジョージア、ミシガン、オハイオ、テキサス、アラスカの7州を取り上げてみました。この7州の改選議席に関しては、共和党の現有が5議席(メイン、ノースカロライナ、オハイオ、テキサス、アラスカ)、民主党の現有が2議席(ジョージア、ミシガン)です。

大枠としてのストーリーは、民主党側から見て現有(ジョージア、ミシガン)を確保して、残りの5州の中で「1つは落とすが、残りの4は勝つ」ということになります。そうすれば、51対49で過半数に達します。ちなみに、アメリカの大手メディアがしきりに主張しているのは「民主党55議席」という説です。この説が実現するには、今回検討する7州を全て民主党が取り、更に「アイオワ+カンザス+ネブラスカ」を取るシナリオになります。

全体の空気は民主党に追い風だと言われています。イラン戦争などによるガソリン高+灯油高騰、関税による物価高、生活費の上昇でトランプ大統領の支持率は20~40%台に落ち込み、政党支持も民主党が7ポイント前後リードしています。大手のメディアはこうしたムードを基調として報道を続けています。

そうは申し上げても共和党寄りの州では過去に世論調査が民主党を過大評価した例が多く、特に2016年以降はその傾向があります。ですから、以下の考察ではその偏りも加味して考えるようにしています。ちなみに、投票日は11月3日(火)に迫っています。

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テレビ討論で「炎上気味」の共和党候補。メイン州

1.メイン州:コリンズ(共・現職)対ジャクソン(民)

予測:ジャクソンの勝利(僅差といわれているが実は有利かも)

共和党のスーザン・コリンズ氏は1997年から上院議員を務める5期目のベテランで、現在は上院歳出委員長です。穏健派と言いますか、中道寄りといっても良いようなイメージと地元への予算配分の実績を武器に、基本的には民主党寄りの州で勝ち続けてきました。ちなみに、共和党予備選は対立候補がおらず無投票でした。

一方で、民主党側は異例の展開をたどりました。6月9日の予備選では、カキ養殖業者で退役軍人のグラハム・プラトナー候補が約75%の得票で圧勝しました。党指導部が推したジャネット・ミルズ州知事は資金不足で4月に撤退していました。

ところがプラトナー氏は7月、性的暴行の疑惑(本人は否定)で撤退に追い込まれます。州の民主党は7月25日の党大会で、元州上院議長のトロイ・ジャクソン氏を代わりの候補に選びました。ジャクソン氏は北部メインの5代目の木こりだそうで、労働組合色の強い左派です。

争点は「コリンズ氏は本当にトランプ政権から独立しているのか」です。ジャクソン氏は、イラン戦争やカナダへの関税によるエネルギー価格の高騰を、コリンズ氏の抵抗不足に結び付けています。また2018年のカバナー最高裁判事について結果的にコリンズ氏が承認したことを持ち出して批判、中絶の権利も争点化しました。

反対にコリンズ氏は、高い生活費はジャクソン氏が州議会で進めた政策のせいだと反論し、自分の政治経験の長さをアピールしています。そのコリンズ氏については、特に最近になって、政治献金者との関係を報じたプロパブリカ(公共オンライン通信社)の記事が注目を集めました。このため、TV討論ではコリンズ氏が「炎上」気味となっています。

10月の世論調査は、マリスト大学(登録有権者)でジャクソン51%対コリンズ47%、ワシントン・ポスト/ジョージ・メイソン大学で50%対46%、全米退職者協会の調査で50%対47%です。一方9月中旬のニューヨーク・タイムズ/シエナ大学の調査はコリンズ49%対46%と逆の結果でした。平均するとジャクソン氏が2~3ポイントリードしています。

ただしコリンズ氏は2020年、調査で劣勢だったにもかかわらず約9ポイント差で勝っています。マリスト大学の調査でも「実際に勝つのはコリンズ氏」と見る人が57%います。今回は反トランプ感情が2020年より強く、未決定層も薄いため、ジャクソン氏が若干有利と言われています。ただし「追い詰められたコリンズ氏のギリギリの踏ん張り」が再現すれば結果は容易に入れ替わるため、7州で最も不確実な予測の一つという見方もあります。

個人的には、政治とカネの問題が噴出した中では、コリンズ氏に「カネの匂い」を感じる有権者は一気に増えているような感触をもっています。6年前には、「保守化する政争の中で中道が評価」されたという要素もあり、だとすれば今回は違う雰囲気もあります。そんな中で、ジャクソン氏は意外と差をつけることが可能かもしれません。一般的な見方とは異なりますが、ジャクソン勝利という予測を現時点ではしておこうと思います。

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新人同士の争いは民主党に軍配か。ノースカロライナ州

2.ノースカロライナ州:クーパー(民)対ワトリー(共)、新人同士の対決

予測:クーパーの勝利(確度は高い、民主党が議席を奪う)

共和党のトム・ティリス上院議員が引退したため、新人同士の争いです。民主党は、州知事を2期8年務めたロイ・クーパー氏(68歳)を擁立しました。クーパー氏は州司法長官を4期務めるなど、1980年代に州議会選挙に出て以来、州内の選挙で一度も負けたことがありません。

共和党は、共和党全国委員会の委員長を務めたマイケル・ワトリー氏(57歳)を立てました。トランプ大統領とスーン上院院内総務が自ら出馬を促した人物で、政権に忠実とされます。

3月3日の予備選では両者とも大差で指名を得ました。クーパー氏の出馬表明直後に有力対抗馬のワイリー・ニッケル元下院議員が撤退し、民主党は早々に一本化していました。ワトリー氏もトランプ氏の支持を後ろ盾に対立候補をよせつけませんでした。

ここでの争点の中心はやはりアフォーダビリティ(生活防衛)です。クーパー氏は、共和党主導の州議会と協力して低所得者向け医療保険(メディケイド)を拡大した実績を強調し、「大統領とも必要なら対決する独立した議員」を掲げています。またワトリー氏が公益企業のロビイストだった過去や、ハリケーン「ヘリーン」復興での対応の遅さを攻撃しています。ワトリー氏は、減税と治安を前面に出し、クーパー氏は「急進左派」だとして批判しています。

TV討論については9月の時点でも両陣営が開催に合意しておらず、優勢のクーパー氏には討論に応じる動機が少ないと地元の専門家は指摘しています。話題となっているのはむしろ資金力の差で、クーパー氏は第2四半期に1,480万ドルを集め、ワトリー氏の約3倍でした。

世論調査では一貫してクーパー氏が優勢です。10月のイースト・カロライナ大学の調査は50%対43%、9月のイーロン大学は49%対38%で、集計サイトのリアルクリアポーリングの平均で8.5ポイント差です。イーロン調査ではワトリー氏について「何も知らない」人が15%いて、知名度不足も解消できていません。

クーパー氏は複数の調査で支持率50%前後を確保しており、未決定層がすべてワトリー氏に流れても逆転は難しい水準です。同州の世論調査には共和党を過小評価する傾向がありますが、誤差を3~4ポイント見込んでもクーパー氏が上回ります。民主党にとって2008年以来の同州上院選勝利となる可能性が高いというのが、多くの調査機関の一致した予測となっています。

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極めて確度が高い現職民主党候補の再選。ジョージア州

3.ジョージア州:オソフ(民・現職)対マイク・コリンズ(共)

予測:オソフの再選(確度は高い)

民主党のジョン・オソフ氏は2021年の決選投票で初当選し、今回が初の再選挑戦です。トランプ氏が2024年に約2ポイント差で制した州のため、共和党の最大の攻勢目標と目されていました。しかし人気の高いブライアン・ケンプ州知事(共和)が出馬を見送ったことで、構図が大きく変わりました。

共和党予備選は分裂しました。5月19日の第1回投票では、自らを「MAGA(米国を再び偉大に)の戦士」と称するマイク・コリンズ下院議員が約40%で首位、ケンプ氏が推す元アメリカンフットボール監督デレク・ドゥーリー氏が2位でした。バディ・カーター下院議員は敗退しています。

6月16日の決選投票直前にトランプ氏がコリンズ氏支持を表明し、コリンズ氏が約55%対45%で勝利しました。「トランプ派対ケンプ派」の代理戦争はトランプ派の勝利に終わりましたが、本選挙で穏健層を取り込む上では困難を抱えた格好です。

争点は生活費、関税、移民、そしてトランプ氏との距離です。オソフ氏はインスリン価格の上限設定などの実績を訴え、コリンズ氏を大統領の言いなりだと攻撃しています。コリンズ氏は、オソフ氏を急進左派と一体のリベラルだと描き、トランプ政策の擁護を崩していません。実際のところは、ユダヤ系であるオソフ氏は、民主党内でも中道寄りで、そのことはかなり知られています。

選挙戦は個人攻撃の応酬が目立ち、オソフ氏はコリンズ氏の事務所人事や公金の使い方も糾弾してきました。10月8日の第1回討論会では、オソフ氏が冒頭から「コリンズ氏を裁く場」と位置づけ、攻勢に終始しました。地元紙の評論家は討論の技術面ではオソフ氏の勝ちと評価しています。第2回はアトランタ記者クラブ主催で今週開かれる予定です。

世論調査ではオソフ氏の優勢が明確です。10月初旬のウェッジウッド調査は55%対45%、ビッグ・データ・ポールは投票見込み層で52%対41%です。比較的接戦を示した9月のクアンタス・インサイツでも約4ポイント差で、平均するとオソフ氏が8~9ポイントリードしています。共和党の全国組織が資金を他州へ振り向け始めたとの報道もあります。

オソフ氏については、再選の可能性が高いとされているだけでなく、民主党の中には穏健派の新星だとして、2028年大統領選への待望論すらあるという状況です。

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初のイスラム教徒の上院議員が誕生か。ミシガン州

4.ミシガン州:エルサイード(民)対ロジャーズ(共)、新人どうし

予測:エルサイードの僅差勝利(確度は中程度)

民主党のゲーリー・ピーターズ上院議員の引退に伴う空席選挙です。共和党は、元下院情報委員長で元連邦捜査局捜査官のマイク・ロジャーズ氏を立てました。同氏は4年前の2024年の上院選で、民主党のエリッサ・スロトキン氏に約1万9,000票という僅差で敗れています。今回はトランプ氏の支持もあって共和党予備選に対立候補がおらず、早くから資金と組織を本選挙に集中できました。

民主党予備選(8月4日)は、党内の進歩派と中道派の全面対決となりました。元デトロイト市保健局長のアブドゥル・エルサイード氏は、バーニー・サンダース上院議員の支持を受け、政治とお金の切り離しや国民皆保険(メディケア・フォー・オール)を訴えました。これに対し、党主流派は中道派のヘイリー・スティーブンス下院議員を推しました。結果は約1万5,000票差という大接戦で、翌朝まで当選が決まりませんでした。

エルサイード氏は、自分への外部支出による攻撃が約7,000万ドルに上ったとして、それを覆した勝利だと誇っています。スティーブンス氏は敗北を認めてエルサイード氏支持を表明しました。

争点は、イラン戦争とイスラエルを含む中東政策、カナダへの関税による物価高、そして医療です。ロジャーズ氏はエルサイード氏を「過激派」と呈び、支持者の配信者ハサン・パイカー氏の過去の発言を持ち出して攻撃しています。エルサイード氏はロジャーズ氏を不人気なトランプ政権と一体だと訴え、討論から逃げる「マイク・ドジャーズ」と揶揄してきました。

当選すればエルサイード氏は初のイスラム教徒の上院議員となり、約30万人のアラブ系住民の動向も注目されます。ただ、このエルサイードという人物は、学生時代にはアメフトの有力選手でしたし、コロンビアの医科大学院の出身であるなど、イスラム系の異端というより、アメリカの本流エリートという性格も持ち合わせています。

10月8日にグランドラピッズで開かれた第1回討論会は、個人攻撃の応酬に終始しました。司会者が「30年間でCM中にも口論が続いたのは初めて」と漏らすほどでした。何しろ、ロジャース氏は、医学研究博士であるエルサイード氏を「臨床医ではないから、診察したらニセ医者になる」などという、子供のダダコネのような中傷を行っていたのです。第2回は10月21日にデトロイトで予定されています。

世論調査はエルサイード氏の小幅リードです。10月のミッチェル・リサーチは46%対41%、ギャニット(共和党系)は48%対43%です。一方、ユーガブは49%対48%、クアンタスは48%対47%とほぼ互角で、9月末には同率の調査もありました。平均すると約3ポイント差です。

全体の追い風を考えればエルサイード氏が小幅に有利と予測します。ただしロジャーズ氏は2024年に調査以上の健闘を見せた実績があり、進歩派候補に対する穏健層の警戒感も残ります。民主党が守る2席のうち、失う危険がより大きいのはこちらです。反対に、ここでエルサイード氏が勝つと、党内左派の勢いには大きな追い風になると思います。

また中東情勢の変化が影響する構図もあります。例えばですが、原理主義(フーシ派、イラン革命防衛軍など)による激しいテロ事件などが起きると、エルサイード氏への反発が強まる危険もあります。

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「データセンター」が選挙戦最大の争点に。オハイオ州

5.オハイオ州(補欠選挙):ハステッド(共・現職)対ブラウン(民)

予測:ブラウンの僅差勝利(確度は低い~中程度)

JDヴァンス氏の副大統領就任で空いた席の残り任期(2028年まで)を争う補欠選挙です。共和党のジョン・ハステッド氏(57歳)は元副知事で、マイク・デワイン知事に任命されて2025年1月から在任しています。州内務長官や州下院議長も務めたベテランで、トランプ氏の支持も得て共和党予備選では有力な挑戦者が現れませんでした。

民主党は、上院を3期18年務めたシェロッド・ブラウン氏(73歳)が復帰を目指しています。同氏は2024年に共和党のバーニー・モレノ氏に約3.6ポイント差で敗れましたが、トランプ氏が同州を約11ポイント差で制する中での健闘でした。シューマー上院院内総務が自ら何度も説得に訪れた経緯があり、民主党内では他の候補が道を譲る形で一本化しました。

選挙戦の最大の争点は「データセンター」です。ブラウン氏は、ハステッド氏が税制優遇でデータセンター誘致を進めた結果、家庭の電気代が上がったとする広告を大量に流しています。ハステッド氏は、ブラウン氏も過去に誘致を支持していたと反論しています。その上で「自分はオハイオの人間、相手はワシントンの人間」という構図を訴え、ブラウン氏はオハイオにはリベラルすぎると攻撃しています。そのほか、関税(州民の60%が反対)や暗号資産規制法案も話題となりました。

討論会は本稿執筆時点で開催が確認できていません。ブラウン氏は2024年にも討論会に応じず、同州の上院選で討論がなかったのは1988年以来でした。ハステッド陣営は今回も、ブラウン氏が討論に応じたら驚きだと皮肉っており、討論の有無そのものが攻撃材料になっています。終盤にはトランプ氏がハステッド氏の応援に入る予定です。

世論調査は夏以降ブラウン氏に傾いています。10月の大手テレビ局の調査は49%対43%、ユーガブは49%対45%、マリスト大学(登録有権者)は51%対43%です。サフォーク大学は47%対44%と、より小さな差でした。平均するとブラウン氏が4~5ポイントリードしています。同じ調査では知事選でも民主党のエイミー・アクトン氏がビベック・ラマスワミ氏(トランプ派でIT長者、インド系)をリードしており、州全体に反トランプの空気が広がっています。

ただし、オハイオでは世論調査が民主党を過大評価してきた歴史があり、2024年のブラウン氏も調査上は互角でした。それでも今回は支持率50%前後を維持しており、全国的な逆風も共和党側に吹いています。というような要素を総合すれば、ブラウン氏の僅差勝利という予測が成立します。仮にブラウン氏が勝てば、ヴァンス副大統領の地元での共和党離れということになります。

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ついにトランプ批判まで始めた共和党候補。テキサス州

6.テキサス州:タラリコ(民)対パクストン(共)

予測:事実上イーブンの情勢

ここでの共和党予備選は今回最大の波乱となりました。3月3日の第1回投票では、現職のジョン・コーニン氏が約42%、州司法長官のケン・パクストン氏が約41%、ウェスリー・ハント下院議員が約14%で、上位2人による決選となりました。その後トランプ氏が、議事妨害の撤廃に積極的なパクストン氏支持を表明します。

5月26日の決選ではパクストン氏が約63%対37%で圧勝し、同州で現職上院議員が公認を失うのは1970年以来となりました。パクストン氏は汚職疑惑で州議会から弾劾された(のち無罪)過去や離婚訴訟を抱えており、コーニン氏は決選でそれを徹底的に攻撃していました。

民主党側では、元教師で州下院議員のジェームズ・タラリコ氏が、全国的な知名度を持つジャスミン・クロケット下院議員を約53%対46%で破りました。タラリコ氏はキリスト教の信仰を前面に出す語り口で知られ、37歳という若さも武器にして、若年層や穏健層に浸透しています。

争点は生活費で、世論調査でも有権者が最重視する課題に挙げています。そのほか医療費、年金、移民、州内で急増するデータセンターも争点です。共和党側は、タラリコ氏が2022年に母親の住所で有権者登録していた問題を「居住要件違反」として攻撃し、「リベラルすぎる」というイメージ付けも進めています。FOXニュースの調査では、「タラリコ氏はリベラルすぎる」と懸念する人が53%、「パクストン氏はトランプ氏に近すぎる」と懸念する人が51%と、どちらの弱点も拮抗しています。

討論会は実現していません。タラリコ氏は何度も討論を申し入れてきましたが、パクストン陣営は応じていません。10月7日にはトランプ氏がサンアントニオで応援集会を開き、翌日には「タラリコは討論の場に出てこい」と投稿しました。タラリコ氏がすぐに応諾したため、ボールはパクストン氏側にあります。

世論調査ではタラリコ氏が先行しています。ニューヨーク・タイムズ/シエナ大学(9月下旬~10月初め)とユーガブはともに6ポイント差(ユーガブは50%対44%)、フォックス・ニュースは51%対49%です。ユーガブでは18~29歳の69%がタラリコ氏を支持し、世代間の差が際立ちます。

ただしテキサスでは直近の大統領選で、世論調査が共和党の得票を4~6ポイント過小評価してきました。平均約5ポイントのリードからこの偏りを差し引くと、実質的には五分です。それでも、資金力と好感度でタラリコ氏が上回り、パクストン氏のスキャンダル疑惑が穏健層の離反を招いている点を重く見ると、タラリコ氏がわずかに優位。パクストン氏はついにトランプ批判まで始めていました。

ところが、9月末に、その優位なはずのタラリコ氏は突如選挙戦から「消え」ました。様々な憶測がされましたが、インフルに罹患していたようで今月中旬になって復活しています。この間の「不在」が影響しており、現時点では全く情勢が読めなくなりました。いずれにしても、2028年の大統領選への影響も含めて、今回の最大の注目選挙区だと思います。

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民主党候補が「僅差で勝利」と予測。アラスカ州

7.アラスカ州:サリバン(共・現職)対ペルトラ(民)

予測:ペルトラの僅差勝利

共和党のダン・サリバン氏は、2014年に民主党現職を破って初当選し、今回3期目を目指しています。挑むのは、先住民として初めて連邦議会入りした元下院議員のメアリー・ペルトラ氏です。同氏は2022年に全州1区の下院議席を得ましたが、2024年に共和党に破れています。知事選出馬も取り沙汰されましたが、上院選を選びました。

アラスカでは政党を問わず全候補が同じ投票用紙で争い、上位4人が本選挙に進む仕組みです。本選挙では順位付き投票が採用されています。8月18日の予備選には16人が立候補し、ペルトラ氏が約49.5%、トランプ氏の支持を受けたサリバン氏が約41.4%で、現職を約8ポイント上回る異例の結果となりました。さらに、現職と同姓同名の元小学校教師「ダン・ジェー・サリバン」氏(共和党)が3位で本選挙に進みました。現職陣営は有権者の混乱を警戒し、「本物のダン・サリバンに投票を」と呼びかけています。

争点は生活費、石油・ガス開発、漁業、そして連邦職員削減などトランプ政権の政策が州に与える影響です。ペルトラ氏は「魚、家族、自由」を合言葉に中道路線を取り、ウィロー油田開発への支持も強調しています。サリバン氏は、ペルトラ氏を在任中に法案を1本も成立させられなかった「無能な議員」と批判し、当選すれば開発に反対する民主党を利するだけだと訴えています。

9月12日にコディアックで開かれた漁業問題の討論会では、一問一答の場面でサリバン氏がペルトラ氏の札を盗み見て同じ回答を出し、会場の失笑を買いました。この映像は全国的に拡散しています。一方ペルトラ氏にも、ニューヨーク・タイムズが報じた部下への高圧的なパワハラ疑惑が浮上しました。サリバン氏についても、在任中の株取引で資産を増やしたとの報道があります。

世論調査ではペルトラ氏が優位です。9月末~10月初めのニューヨーク・タイムズ/シエナ大学の調査は50%対43%と、部下へのパワハラ疑惑の報道後も差を保っています。地元のアラスカ・サーベイ・リサーチは順位付き投票の最終集計で51%対49%、クアンタス・インサイツは46%で同率でした。選挙分析媒体のサバト・クリスタル・ボールは、評価を「民主党やや優位」に変更しました。

アラスカの世論調査は伝統的に共和党を過小評価してきたため、平均約3ポイントのリードは盤石ではありません。ただし予備選で現職に8ポイント差をつけた実績は重く、順位付き投票も幅広い支持を持つペルトラ氏に有利に働くと言われています。現時点では、ペルトラ氏の僅差勝利と予測します。

ということで、現時点では検討した7州に関しては、テキサスがイーブンで、残りの6州は民主党優勢という状況だとお伝えしておきます。更に現状の全体像ということでは、アイオワ、ネブラスカ、カンザスは共和党が議席を守り、51対48で民主党が有利、テキサスは完全にイーブンとしておきましょう。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年10月13日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「沖縄女性強殺事件、地位協定の改善は待ったなし」、人気連載「フラッシュバック81」もすぐに読めます。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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