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日本を蹴散らした韓国と台湾の地位を今度は中国が?「世界の下請け」で力を付けたメーカーが「上流」を目指した結果

AIやロボット、半導体などの先端分野で存在感を高め、世界の製造業における地位を大きく変えてきた中国。その成長を支えてきた政府主導の産業育成政策が今、大きく変わろうとしているようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、中国の製造業が高度化を遂げてきた歴史を振り返るとともに、共産党中央と国務院が発表した新たな政策文書の内容を紹介。さらに「国進民退」と呼ばれてきた経済構造に変化が生じる可能性を探りつつ、中国のハイテク産業の今後を占っています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:中国のハイテク産業育成計画は「民進国退」へと転換するのか

習近平が打ち出した新方針。中国ハイテク産業育成計画は「民進国退」へと転換するのか

9月の米中首脳会談ではAIが一つの重要な話題であった。世界はこのとき最先端分野では米中が話し合いを持たなければならなくなった現実を見せつけられた。

考えてみれば皮肉だが、日本が「失われた30年」の中で呻吟する裏側で中国は着実に自国の産業を押し上げてきたのだ。

今、AIを筆頭に通信、ロボット、ドローン、半導体に至るまで中国企業の存在感は増すばかりだ。

一方で、かつて「メイド・イン・ジャパン」の強さの象徴であった家電と自動車において存在感を発揮しているのは中国勢だ。

日本の家電量販店でも目立つのは海爾集団公司(ハイアール)や海信集団(ハイセンス)、美的集団(メディア・グループ)、格力電器(グリー・エレクトリック)、そしてTCLグルーブなどだ。

ひょっとしたら未だ日本人の頭の中では、中国は「日本企業の下請け」というイメージが残っているかもしれないが、もはやそんな時代ではない。中国が「世界の工場」という名の「世界の下請け」であったのは2000年代までのことだ。

日本がデジタル化と水平分業の波に乗り遅れ衰退へと向かうのは90年代後半から2000年代にかけてのことだ。水平分業への乗り換えに成功し、中国の部品メーカーをフル活用した韓国や台湾のメーカーが日本を追い越していった。

これは「ケイレツ」に代表される日本の「垂直分業」が韓国・台湾の「水平分業」に価格の点で敗れた結果だと解説される。

もっともこの裏側では例えばテレビ業界ではプラズマと液晶の戦いでの日本メーカーの戦略ミスが響くなど、要因は実に複雑なのだが、大きな流れを見ればやはり製品の構成部品が標準化・モジュール化(共通パーツ化)され、それに対する日本のメーカーの対応の遅れが響いたことは否定できない。

内製化(=ケイレツ)で品質にこだわり、水平分業での価格競争力を軽視した日本を称して「ガラパゴス」という言葉が流行したのは記憶に新しい。

さて、こうした日本メーカーVS韓国・台湾のメーカーという戦いの裏で、その製造を一手に引き受けたのが中国であった。

中国の役割は当初「組み立て」などの単純な作業だったが、製造業の下流から上流を目指す動きは政府の後押しもあり、急速に進んだ。

具体的には90年代にはすでに中国のモノづくりの一大拠点となっていた広東省の政策である。低付加価値産業から高付加価値産業へと脱皮することを意味する「騰籠換鳥(とうろうかんちょう=鳥かごを空けて(新しい)鳥に入れ替える)」だ。

同じ時期、中国は労働者の賃金を引き上げるための労働契約法を施行し、労働集約型産業に厳しい環境も作り出した。

こうしたことが相乗効果を生んで、広東省の製造業は瞬く間に高付加価値化を実現していった。

同時に、韓国・台湾の下請けとして力を付けたメーカーが上流に上る動きも活発化してゆく。

こうした変化は最終的に日本を蹴散らした韓国・台湾の地位を今度は中国のメーカーが脅かすという状況を作り出してゆくのである。

中国テック・ビジネス専門メディア『36Kr Japan』は2026年6月1日に、「サムスンすら陥落――中国で崩れた『外国産=高級』の神話」という象徴的な記事を掲載して話題となった。

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中国の製造業をさらに強化する「国から民間へ」というシフト

さて、そうした中でも中国は官民挙げて製造業の高度化を推進してきた。途中、「中国製造2025」を打ち出し、政策的推進力とすることを目指した。

しかし「2035年までに製造強国の中位、2049年にはトップレベルになる」という具体的な目標を立てたことが中国をライバル視し、同時に中国からの輸入増(対中貿易赤字拡大)を警戒した国々の反発を招き、ほどなくこの政策はトーンダウンを余儀なくされた。

もっとも、かといって中国が製造業の高度化を諦めたわけではなく、間もなく「新しい質の高い生産力(新質生産力)」というワードが打ち出された。これは2023年9月、習近平国家主席が黒竜江省を視察した際に初めて言及した言葉だ。

新質生産力とは、イノベーションが主導的役割を果たし、従来型の経済成長方式と生産力発展アプローチから脱却し、ハイテク、高効率、高い質という特徴を持ち、新たな発展理念に合致した先進的な生産力を指すとされている。

このメルマガでも注目すべき六大産業(量子技術、エンボディドAI、ブレイン・コンピュータ・インターフェース、6G、バイオ)については触れた。

では、その新質生産力はどうやって達成されるのか。

新質生産力を実現するための政策は、主に党の政治局会議、国務院、そして全人代という三本柱で進められているが、その一つの集大成として出されたのが10月9日に中国共産党中央と国務院が共同で出した「新質生産力を発展させるための意見」である。

長い文書なのですべてをここで紹介することはできないが、最も大きな変化は「国から民間へ」というシフトだろう。

清華大学グローバル証券市場研究院秘書長で、新質生産力の専門家として知られる遅永勝氏は、自ら執筆した記事の中でそのことに触れている。

記事の中で遅氏は、文書が〈「企業の科学技術革新主体地位を強化する」ことを明確に提起した〉ことに注目している。

具体的には、「企業研究開発準備金制度の確立」「企業研究開発費用加算控除比例の引き上げ」「国家戦略需要に合致する企業研究開発プロジェクトを手続に従い国家プロジェクトに格上げ」「能力の高い民間企業が国家重大技術の発展任務をリードし担うことの支援」「大企業による中小零細企業に対するサプライチェーンの開放」などである。

中国を見回すとアリババやファーウェイ、BYD、テンセントなど、目立つのは名前の知れた民間企業のパフォーマンスだ。しかし、一方で莫大な利益を稼ぎ出し、科学技術全般の発展に率先して貢献してきたのは国有企業であった。そして「国高民低」を意味する「国進民退」は、ここ数年の中国経済を象徴する言葉であり続けたのだ。

コロナ禍以降顕著であったこの流れは本当に変わるのだろうか。そうだとすれば、中国の製造儀容は今後さらに強化されることになるだろう。

少なくとも笛は吹かれたようだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年10月11日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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image by: photocosmos1 / Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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