クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りするラジオ番組『Why So Good?』。毎回ゲストを迎え、「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか」を掘り下げる30分番組だ。今回のゲストは、株式会社福商 代表取締役の豊岡舞子氏。
豊岡氏は、高級商材を中心とした小売業におよそ20年携わってきた。ウェディングドレス、着物、ジュエリー、婦人服の販売に加え、店舗運営、ブランディング、人材育成、販促企画までを経験。全国の催事会場を巡り、単日の売り上げで前年同日比475%を達成した実績を持つ。現在は、そこで培った「価値を見つけ、価値を伝える力」を一次産業・地域資源の再生に生かし、株式会社福商を設立。松阪牛発祥の地・三重県松阪市飯南町深野に残る昔ながらの肥育文化を、未来へつなぐ事業に取り組んでいる。
MC・越川慎司氏(株式会社クロスリバー代表取締役)が開口一番に触れたのは、肩書きではなく、スタジオを華やかにした豊岡氏の着物姿だった。アパレルの世界から、なぜ松阪牛へ。ここから、深野の牛と「価値を伝える」ことへの思いが、豊岡氏の言葉で語られていく。
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着物から松阪牛へ——共通するのは「日本のいいものを伝えたい」という思い
越川:素晴らしい肩書なんですが、それよりもリスナーの皆さんにお伝えしたいのが、豊岡さんが素敵なお着物を召されていることです。前職とのつながりで、着物を着る機会が多いんですか? それとも、着物の文化を日本に根付かせたいという思いが?
豊岡:きっかけは前職の仕事ですね。
越川:この素敵さを理解していただくには、ぜひYouTubeでもご覧いただきたいです。スタジオが一気に華やかになりました。
上條:本当に上品で、とてもお似合いです。
越川:そこから一気に松阪牛に変わる。ここを今日は掘り下げたいと思います。この番組は『Why So Good?』ですので、最初にゲストの方に「Goodな点」を伺っています。豊岡さん、今回リスナーに一番届けたいGoodな点を教えていただけますか?
豊岡:はい。松阪牛発祥の地、深野の特産松阪牛です。
松阪牛は有名なのに、「発祥の地」は知られていない
越川:深野の松阪牛という、地域に根差したところがポイントなんですね。
豊岡:そうですね。発祥の地というところが。
越川:僕も発祥の地は知りませんでした。広い意味で、この地域全体が松阪牛なのかなと思っていたら、深野が発祥で、そこから広がっているんですね。
豊岡:そうなんです。
上條:歴史としては、長い歴史があるんですか?
豊岡:かなり長いですね。そもそも日本で牛を食べる習慣が広く根付いたのは、それほど古い話ではないんです。もともと深野という地域は、牛飼いの文化で発展したところでした。歴史をたどると、豊臣秀吉がいい牛を集めたところから。農耕用の牛ですね。
越川:その文化を継承するために、今活動されているということですか。
豊岡:それもあるんですけれども、皆様に届けたいのは、本当に美味しい、いいものを残したい、本物を伝えたいという気持ちです。
越川:売りたい相手にちゃんと届いて、相手が笑顔になることがゴールで、その提供の形が、お着物だったり、ファッションブランドだったり、松阪牛だったりするのかなと。ただ、着物と松阪牛の共通点がずっと気になっていまして。
豊岡:私は個人的に着物が好きで、普段から着る機会が多いんですが、日本のいいものを伝えたいという意味では、着物はビジュアルで分かりやすいんですよね。松阪牛は名前がとても有名で、食べたことがなくても、ほぼ誰でも聞いたことがある牛です。世界でも有名ですし、三大和牛の一つでもあります。ただ、詳しいかというと、皆さんご存じないんです。特に「発祥の地」は聞いたことがないという方が多い。松阪牛といっても、松阪市以外の地域で作っている牛のほうが数は多いんですよ。
越川:なるほど。ビジネスで考えても、「松阪牛」とついていれば食べてみたくなりますし、売れそうな感じがしますよね。
豊岡:高級というイメージはとても強いんですが、発祥の地の牛舎が、今現存しているのはたった4社なんです。
越川:4社しかないんですか。
豊岡:昔は牛飼いが40社、50社近くあったものが、どんどん減って、残りは4社だけという現状です。
越川:聞けば聞くほど、日本の魅力が溢れている感じがします。僕もアメリカに住んでいたとき、海外にいればいるほど日本の良さが分かると感じました。最近、欧米の友人が日本に来ると、昔は「和牛を食べに行く」だったんですが、最近は「松阪牛」と言い始めているんですよ。
日本は「焼き」ではなく「煮込み」の文化——すき焼きに込めた理由
豊岡:特にすき焼きを食べていただきたいんです。
越川:そうなんですよ。焼肉は海外だとコリアンバーベキューと訳されることが多くて、韓国が主軸のように考えがちですが、すき焼きは日本にしかありません。
豊岡:そうなんです。なぜ私が発祥の地や日本の文化にこだわるのかにもつながるんですが、日本人はもともと、焼きではなく煮込みの文化なんです。
上條:確かに、煮込み料理はすごく多いかもしれないですね。
豊岡:だから、肉を焼いて食べるというより、もともとはすき焼きとか煮込みの肉料理がおいしい、ということなんです。
越川:我々日本人はもともと狩猟民族ではなく、農耕民族で、さらに言えば米作ですよね。定住地でご飯をおいしく食べるという意味では、外で焼いたものを食べるのとは少し違う文化です。
豊岡:そうなんです。特に深野は棚田で有名なところです。本当に山奥で、田んぼが段々畑のようになっていて、道もすごく細く、急な下り坂や上り坂があります。そういうところで、昔は牛が物を運んでいたんですね。田んぼを耕すのも牛でした。もともと農耕用の牛で発展した地域なんです。今でもその棚田の風景は、棚田百選に選ばれているほどきれいなんですよ。山奥すぎて、Googleマップに住所を入れても出ないような秘境で、自然がきれいで、水がきれいで、少し掘れば湧き水が出てくるようなところです。
越川:自然のミネラルウォーターですね。
豊岡:そうです。だからお米もおいしいですし、お茶も栽培していて、もともと自然が豊かで農作物もおいしい土地柄なんです。そこで牛が農耕に使われていて、農機具が機械化されるにつれて、牛を食べる文化に変わっていった経緯があります。
越川:素敵ですね。思いがすごく伝わってきて、今すき焼きが食べたくてしょうがないです。
マイルールは「本当に価値があるものを、相手に伝わるように伝える」
越川:日本の素晴らしいものを世界に発信し、文化を守るというお話には、共感しすぎて顎が机にぶつかるくらいです。この活動をするうえで、ご自身のマイルールはありますか? 日本には牛以外にも素晴らしいものがいろいろありますよね。伝えたいものを選ぶ基準のようなものがあれば。
豊岡:マイルールは、私の中では一貫しています。本当に価値があるものを、相手に伝わるように伝えたい、ということです。
越川:一流は「伝える」ではなく「伝わる」と言うんですよ。「伝える」は自分が主体で、伝えたいことを言うこと。「伝わる」は相手が主体なので、相手に伝わるようにコミュニケーションをとっているということですね。
豊岡:そうですね。前職の流れもあるんですが、高級商材を扱っていた頃、お客様の層は知識人というか、お勉強が好きな方が非常に多かったんです。百貨店をはじめいろいろな店舗に入らせていただいて、お客様におすすめするとき、お客様は本当に価値があるものにお金を払いたいんですね。流行っているからでも、ブランド名でもなく、自分にとってどのような価値があるかについては、惜しみなくお金を払われる方が非常に多いと感じていました。
牛や食材の文化も同じです。牛に限らず、お米でもお水でも、本当に価値があるものは体にもいいですし、いいものにお金を払うということについて、その良さや価値は、何も言わないとなかなか伝わらないんですよね。なので、それを文化活動としていかに伝えられるか、というところを私のマイルールにしています。
越川:分かりやすい。背筋が伸びますね。お着物を着ていらっしゃるので姿勢がとてもいいんですが、今ので私も背筋が3センチくらい伸びました。
豊岡:3センチ。いいですね。ありがとうございます。
越川:今のお話を聞いて、リアルな裕福な方の価値観が見えてきました。裕福な方は、経済的に豊かな人というより、精神的に豊かな人が多いんですよね。そして、誰かが持っているから、誰かが買っているから、という他人軸がありません。自分がそれを好きでいられるかどうか。その食材を、自分の意思で体の中に入れられるかどうか。他人という価値観を外して、自分が納得するために、背景や歴史といったストーリーがすごく重要なんです。
豊岡:おっしゃる通りで、私が言いたいことを全部言っていただきました。
越川:素晴らしい。3人で机に顎がぶつかった感じですね。
牛だけでなく、深野という土地の文化的価値を世界へ
越川:この素敵なストーリーを今後発信していくうえでのビジョンがあれば、ぜひ教えてください。
豊岡:今後のビジョンとしては、牛だけではなく、単純にお肉を売るということではなく、その背景ですよね。歴史的なものや、誰がどのように作り上げてきたのかという文化的な価値を高めていきたいです。そうなると、深野という土地の良さにつながります。例えばお酒などにもGIがありますが、地理的証明のような価値を、もっと世界に発信していきたいと思っています。
上條:本当に心強いですね。
「レジェンドの牛舎」にたどり着くまで
上條:今、松阪牛に取り組んでいらっしゃいますが、そこに至ったきっかけも気になります。出会いのきっかけはあったんですか?
豊岡:もともとは洋服やアパレル関連の仕事を長くやってきました。先ほどお話ししたように、お客様の層は本当にいいものを求める方々で、いいものを届けるという意味では、食に関しても、身につけるものに関しても、全く同じことが言えるんです。そんなご縁があって、食の仕事に携わるようになりました。数人で別の会社を立ち上げて食材を卸す仕事を、アパレルとは別に始めた際、たまたまお肉を仕入れる機会がありまして。すごく評判が良かったんです。
越川:まさに、味が伝わった瞬間ですね。
豊岡:そうなんです。松阪牛はみんなが知っていて、「えっ、お肉あるの? ブランド牛?」と、わーっと笑顔になる感じがありました。それで、今まで別の食材では断られたお店に、今度は松阪牛をお話ししたらどうかというのがきっかけでした。ただ、その時点で私は、牛のことを何も話せないし、何も分からなかったんです。調べないと、勉強しないと、これは扱っていいものではないと思って、現地に何回も取材というかたちで通わせていただきました。牛舎の方とお話しするうちに、レジェンドの牛舎までたどり着いたんです。
上條:偶然ですね。活動していたから、そこまでたどり着いたということですよね。
豊岡:一番初めから、レジェンドのところにピンポイントでは分からないので、ご紹介をいただいて。栃谷治郎さんという「松阪牛の神様」と言われている方がいらっしゃるんですが、今年94歳になられて、その方の牛舎までたどり着いたんです。
越川:相手に思いを届けたいという一心で行動したら、場所と人に出会えた。これは今日聞いているビジネスパーソンにも、すごく参考になります。キャリアは8割が偶然で生まれるわけですから、聞いて終わりではなく、ぜひ行動に移すリスナーが一人でも増えてくれると嬉しいですね。
すき焼きの匂いを感じながら——「脂」がおいしい理由
越川:今日はもう、すき焼きの匂いを感じながらずっと聞いていて、時間があっという間でした。
上條:本当に早いですね。
越川:まだ割り下を作っているくらいのところで時間が来てしまいました。
上條:卵を溶いているくらいです。
越川:絶対、今日の夕飯はすき焼きにしたいと思うくらい、思いが伝わってきました。
豊岡:特に、霜降りがおすすめのお肉なので、脂がいいんです。
越川:脂がおいしいんですよね。
豊岡:旨味成分が脂なので、焼くと脂が落ちてしまってもったいない。すき焼きなら全部体に染み渡るかたちになります。
越川:いいお肉は、脂が甘くてすっと溶けるんですよ。
豊岡:後味が違いますし、お肌にもいいんです。
越川:いいことづくめですね。「よし、これは」と思った方は、ぜひ自分から情報を探りに行ってみてください。勇気をもらえるお話、ありがとうございました。
豊岡:こちらこそ、ありがとうございました。
番組概要
- 番組名:Why So Good?
- 放送局:interfm
- 放送日時:毎週木曜25:00~25:30
- 出演:越川慎司氏(株式会社クロスリバー 代表取締役)
上條美沙子氏 - ゲスト出演:豊岡舞子氏(株式会社福商 代表取締役)
- 公式サイト:https://www.fukushop.net/ - プロデューサー:エダコDX
- ラジオ本編はこちらから https://www.interfm.co.jp/whysogood
- interfm(東京:89.7MHz 横浜:76.5 MHz) https://www.interfm.co.jp/
- 番組TikTok(https://www.tiktok.com/@whysogood_radio)
※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです