会社にケンカを売った社員たち

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メルマガ名
会社にケンカを売った社員たち
発行周期
隔週刊
最終発行日
2018年06月20日
 
発行部数
3,192部
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0000116175
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
ビジネス・キャリア > 経営 > 法務・特許

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■ 今週の事件【東日本旅客鉄道事件】
▽ <主な争点>
賞与支給日在籍要件と差別的取扱いなど

1.事件の概要は?
2.前提事実および事件の経過は?
3.元社員Aらの主な言い分は?
4.判決の要旨は?

■ 編集後記



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■ 今週の事件

【東日本旅客鉄道(以下、H社)事件・東京地裁判決】(平成29年6月29日)

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 1.  事件の概要は?
━━━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥

本件は、平成28年4月末日でH社を退職したAら3名に対し、基準日要件(基準日
である6月1日前1ヵ月以内に退職した者)に該当しないことから、退職日の属す
る年度の夏季手当を支給しなかったことについて、合理性のない差別的取扱いであ
ると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求(夏季手当相当額)の支払を求めた
もの。



━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 2.  前提事実および事件の経過は?
━━━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥

<H社およびAら3名について>

★ H社は、旅客鉄道事業、貨物鉄道事業などを主な目的とする会社である。

★ A・B・C(いずれも4月生まれ)は、H社に雇用されていた元従業員であり、
平成28年4月末日付で同社を定年退職した者である。


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<定年に関する就業規則、期末手当に関する賃金規程の定め等について>

★ H社が昭和62年4月に定めた就業規則(旧就業規則)45条は従業員の定年に
関し、次のとおり定めている。
(1)社員の定年は満60歳とする。
(2)定年退職日は、社員が定年に達する日の属する月の末日とする。


★ 旧就業規則の一部を構成する賃金規程(旧賃金規程)には、期末手当に関し、
要旨次のとおり定めている。

141条(支給範囲)
期末手当は、6月1日および12月1日(以下、両日を「基準日」という)にそれぞ
れ在職する社員および基準日前一ヵ月以内に退職しまたは死亡した社員に対して支
給する。

142条(調査期間)
調査期間は、夏季手当については前年12月1日から5月31日まで、年末手当につ
いては6月1日から11月30日までとする。


★ H社は平成元年4月、旧賃金規程142条が規定する調査期間を「夏季手当につい
ては、前年10月1日から3月31日まで、年末手当については4月1日から9月30日
まで」に、年末手当の基準日を12月1日から11月1日にそれぞれ改定した。


--------------------------------------------------------------------------

<平成28年度夏季手当の支給について>

▼ H社は上記改定後の賃金規程に基づき、28年6月30日、従業員に対し夏季手当
を支給したが、Aらは28年度夏季手当の基準日要件(基準日である6月1日前1ヵ
月以内に退職した者)に該当しないことから、上記手当の支給を受けなかった。



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 3.  元社員Aらの主な言い分は?
━━━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥

1)4月定年退職者に対する取扱いは合理性のない差別的取扱いに該当するもので
あり、公序良俗に反し違法だ!

[国鉄時代からの期末手当の支給に関する取扱いの変遷]
▼ 分割・民営化以前の国鉄時代には定年退職の日は労働者の誕生日にかかわらず、
一律55歳に達した年度の年度末である3月31日付とされていたため、該当年度に
退職する労働者には全員に対して該当年度の夏季手当および年末手当が支給されて
いた。

▼ ところが、H社が旧賃金規程および現行賃金規程を定めたことにより、同社に
雇用された労働者(国鉄時代からの労働者であり、国鉄の分割・民営化により昭和
62年4月1日付でH社に採用された者を含む)のうち、4月生まれの労働者には定
年退職日の属する年度の期末手当が一切支給されなくなってしまった。

▼ すなわち、H社に雇用された労働者は年度ごとにみれば、5月から9月までの
各月末日付で定年退職する労働者には夏季手当が、10月から3月までの各月末日付
で定年退職する労働者には夏季手当および年末手当が支給されるにもかかわらず、
4月末日付で定年退職する労働者には期末手当が支給されないこととなったのである。


[4月定年退職者に対する取扱いの違法性]
▼ 期末手当の支給額は、基準額、期間率、成績率によって算出されるが、そのうち
期間率は調査期間内の欠勤期間によって算出される。また、成績率は調査期間内の
労働に対する賃金の一部を構成するものであり、調査期間を満了した者には当該期
間に対応する期末手当が支給されなければならないことは当然である。

▼ しかし、4月末日付で定年退職する労働者は夏季期末手当の調査期間(前年10月
1日から当年3月31日まで)の労働を行っているにもかかわらず、5月1日時点で
在籍していないが故に当該手当が支給されなくなったのである。

▼ このようにAらのように4月生まれの労働者のみに対し、H社が定年退職年度の
期末手当を一切支給しないことは他の月生まれ労働者に対する取扱いと比較して、
合理性のない差別的取扱いに該当するものであり、公序良俗に反し違法である。


--------------------------------------------------------------------------

2)H社の不作為もまた合理性のない差別的取扱いを継続するものであり、公序良
俗に反し違法だ!

▼ Aらの所属する労働組合は27年4月以降、H社に対し、上記の差別的取扱いを
是正し、4月生まれの者が同社を定年退職するにあたっても夏季手当を支給するよ
う何回も申し入れを行ってきたから、H社には27年4月以降、4月生まれの労働者
のみに対する合理性のない上記差別的取扱いを是正する義務が生じていた。

▼ しかるに、H社は現行制度で妥当と考えているとの回答に終始し、上記取扱いの
是正を怠ってきた。したがって、上記差別的取扱いの是正を行わないという同社の
不作為もまた、4月生まれの労働者のみに対する合理性のない差別的取扱いを継続
するものであって、公序良俗に反し違法である。


▼ Aらは上記差別的取扱いにより、28年6月30日に支給されるべき夏季手当
(A…93万1606円、B…111万2097円、C…113万0878円)の支給を受けられず、
それぞれ支給金額相当額の損害を被った。



━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 4.  判決の要旨は?
━━━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥

[在籍要件の合理性]
▼ 賞与が査定対象期間における労働に対する報償的な性質を有するにとどまらず、
将来の労働への意欲向上や将来の貢献への期待という要素を併せ持つものであるこ
と、企業においては多数の従業員に対する賞与の支給事務を迅速かつ画一的に行う
必要があることなどを踏まえると、企業が賞与の支給について、支給日に近接した
基準日を設け、当該基準日に企業に在籍していること(在籍要件)を要求すること
は当該企業の経営上の裁量に属する事項として合理性が認められると解するのが相
当である。

[H社における期末手当の取扱いの合理性]
▼ H社が期末手当の支給について、支給日に近接した基準日を設け、基準日におけ
る在籍要件を設ける取扱いをすることには一定の合理性が認められるというべきで
ある。その他一件記録に照らしても期末手当に関する同社の当該取扱いが公序良俗
に反することを基礎づける事情は何ら認められない。

[H社における取扱いを是正すべき義務の有無]
▼ H社の上記取扱いに合理性が認められる以上、当該取扱いを是正すべき義務も生
じないから、差別的取扱いの是正を行わないという不作為が公序良俗に反する旨の
Aらの主張も同様に理由がない。

1)Aらの請求をいずれも棄却する。
2)訴訟費用はAらの負担とする。

※ 本件は、『労働経済判例速報』平成29年10月10日号(日本経済団体連合会
労政第二本部 編)を参考に編集しています。


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■ 編集後記

先週まで約1ヵ月半の間、週1回大学の公開講座を受講しました。最近の大学は昔
と違って施設もきれいで快適です。受講生の年齢層は結構幅がある感じでしたが、
目的意識を持った人が多いという印象を受けました。講座の前に学食で若い学生の
姿を眺めながら、食事をとるのもちょっとした気分転換になりました。条件が整え
ば、また通ってみたいと思っています。

次号では、行為の悪質性と懲戒解雇事由該当性について争われた事例を取り上げる
予定です。なお、次回配信日は7月4日(水)となります。(Y)


─────────────────────────────────────

※ 当マガジンでは、会社側の主張、争点に対する裁判所の判断の詳細はあえて割愛
しています。これは裁判の結果(勝訴・敗訴)ではなく、争点が生じた原因を探る
ことに重きを置いているためです。もちろん従業員側の主張の全てが真実というわ
けではありませんが、訴えられる余地を最小限に抑えることによって、無用な争い
を事前に回避することが可能になると考えます。株式会社リーガル・リテラシーは、
裁判で勝てる・負けない会社作りよりも社員にケンカを売られない社内環境作りを
サポートするための各種サービスを提供しております。詳しくは当社ホームページ
( http://www.ll-inc.co.jp/ )をご参照下さい。

なお、当マガジンで扱っている判例はほとんどが地裁レベルのものであり、第二審
以降の経過をフォローすることは本来の目的ではありませんので、興味をお持ちの
方はご自身でお調べいただけたら幸いです。

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□ 編集担当者 荻野 泰男(社会保険労務士)

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