永田町異聞/新 恭(あらた きょう)
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国家権力&メディア一刀両断

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国家権力&メディア一刀両断

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記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。

著者プロフィール

永田町異聞/新 恭(あらた きょう)

全国紙の社会部記者として13年間活動したあと、アクセサリーショップをチェーン展開。そのかたわら、政治ブログ「永田町異聞」を発信し続けている。

サンプル号
永田町異聞メルマガ版

     「国家権力&メディア一刀両断」 2016.09.22

                  新 恭(あらた きょう)

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        “東京大改革”劇場で自縄自縛の小池都知事

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豊洲新市場の建物の地下に、ひそかに設けられていた箱型コンクリート空洞。
その存在が報道されて以来、テレビ各局では謎解き、犯人捜しが連日、繰り広
げられている。

敷地全てに盛土をほどこしたとウソをついてきたのは言語道断だが、設計図の
通りに建設されているのだから、設計の指示、チェックをした都側の責任者が
出てきて、盛土にせず空洞にした理由を説明すればよい。

なぜ、そうならないのか。小池百合子知事プロデュースの「勧善懲悪劇」にな
ってしまっているからだろう。東京都の「ブラックボックス」を暴くと啖呵を
きって乗り込んできた第一幕のシーンが続いているのである。

今出ていけば、有無を言わせず、極悪人扱いされるのは目に見えている。だか
ら、みんな他人のせいにして知らんぷりを決め込んでいるのだ。

つまり、真相解明を遅らせているのは情報公開の名のもとに、有識者会議とか
プロジェクトチームとかをつくることに余念がない小池知事自身ともいえる。

もっとも、小池知事には見込み違いがあった。「空洞」問題が浮上したのは想
定外だったのだ。

知事選期間中の約束、すなわち「立ち止まって考える」を実行するため、地下
水のモニタリング調査が終わっていないことを理由に、「豊洲移転延期」を宣
言、来年1月ごろに予定される調査結果公表を待って、移転ゴーサインという
段取りを考えていたはずだ。

ところが8月下旬、共産党に地下空洞があることを知らせた人がいた。職員か、
工事関係者か、誰なのかは今のところわからないが、「東京大改革」を唱えて
いるにもかかわらず知事サイドに“直訴”しなかったところをみると、ある程
度、行政の狡猾さを心得ている人物のようだ。

都とすったもんだの交渉の末、9月7日に現地調査を許され、写真まで撮った
共産党都議らの指摘で、小池知事は空洞の存在をはじめて知る。

「延期」の刺激がもたらした情報という意味ではメディアが持ち上げるように
小池知事の功績といえるかもしれないが、おそらく、小池知事は想定外のこと
に一時は困惑しただろう。

普通の知事ならすぐに担当者を呼び、説明を聞くはずだ。敷地内すべて盛土を
ほどこすと説明してきたのに、なぜ空洞が建物の下に広がっているのか、と問
いただすだろう。

小池知事もそうしたに違いない。新参の知事であっても、今や都職員を率いる
リーダーである。過去のこととはいえ、いつまでも他人のしでかしたこととし
て片づけられるわけがない。

2011年の基本設計時、すでに建物地下の空洞が図に描きこまれていたとい
う。そのいきさつを知る職員から、知事が話を聞くのは簡単なことだろう。

だが、空洞の意味についてはなにがしかの説明ができても、なぜ都民への約束
と異なるのかとなると、言葉を濁すかもしれない。誰もウソの責任を背負いた
くないからだ。

「人生マーケティング」を標榜する小池百合子は気を取り直し、脳内コンピ
ューターをフル稼働させたに違いない。

ここは「ブラックボックスvs正義の小池」という都知事選から続く小池劇場
をそのまま演じるしかない。都の組織とは一線を画しておこう。調査チームに
追及させて過去の都政の膿を出す「東京大改革」のイメージを強調するのだ。

小池知事は9月10日にこの問題を暴露する緊急記者会見を開き、今後の対応
についてこう述べた。

「専門家会議の方々に安全なのかどうか、お調べいただきます。一方で、新し
いプロジェクトチームの方々にはそれぞれのご専門から、この安全性、そして
豊洲そのものの安全性と、それから妥当性、価格などの問題点、コストの問題
をお諮りするということで、二段構えになります」

二つの有識者チームをつくればうまくいくなら、こんな事態にはならなかった
はずだ。石原慎太郎都知事の時代、専門家会議と技術会議があったにもかかわ
らず、結局は都当局の思うようにコトを運ばれ、いつのまにか建物地下にコン
クリート空洞ができていたのだ。

要するに、すべてを統括する責任者が明確でないまま、会議やチームで議論し
ても、縦割りの弊害に陥りやすい担当当局の議事運営に左右され、その末に、
まずい事態を招けば、責任のなすり合いに終わるのがオチであろう。

本来、豊洲は生鮮食料品の市場としてはならない場所である。たとえ有識者会
議の提言通り、敷地全体に盛土を施していたとしても、埋め立て地特有の軟弱
地盤であり、ひとたび巨大地震が起きれば、土壌改良や盛土による安全性など
吹き飛んでしまう。

盛土はあくまで、土壌汚染対策である。大地震が起きれば液状化現象で地下汚
水は湧きあがって地上に滲み出してくるだろう。

もし仮に、建物地下のコンクリート空洞が地震対策であるというのなら、担当
者はそう説明すればいいではないか。逃げ回っている場合ではない。

また、一部報道によると、「空洞は土壌汚染が再び見つかった場合に備え、パ
ワーショベルが作業できる場所とする目的でつくられた」と都の幹部が話して
いるというが、それならそれで一刻も早く公表し、これまでの広報との違いに
ついて、謝罪するなり責任をとるなりしなければならないのではないか。

いずれにせよ、豊洲移転計画は最初から間違っていた。この深刻な問題の元凶
は石原慎太郎元知事である。

ほかに4~5か所の有力候補地が臨海地区にあったにもかかわらず、築地市場
を豊洲の東京ガス工場跡地へ移転することを最終的に決断したのは石原元知事
のほか、誰もいない。

2000年7月から2005年6月まで副知事をつとめた浜渦武生に豊洲の件は
任せていたと石原は弁明しているようだが、実際に用地を購入したのは201
1年であり、とっくに浜渦は副知事を退いていた。

2011年3月25日に東京ガスが公表した「豊洲地区用地における東京都と
の土地売買契約ならびに土壌汚染対策費の負担に関する合意について」という
文書によると、約10.5ヘクタールの工場跡地を東京都が東京ガスから55
9億円で買い、土壌汚染対策費として東京ガスに78億円を負担させている。

これは東京ガス関係だけの数字で、敷地全体40ヘクタールの用地取得費は1
860億円にものぼっている。

事前に東京ガスが自前で土壌改良工事をしたとはいえ、その後に基準値の4万30
00倍ものベンゼンや860倍ものシアン化合物が測定された土地をこんなに高い値
段で買ってくれるバカなところは東京都以外にありえない。

石原慎太郎に「わが都政の回顧録 東京革命」という著書がある。回顧録とい
うのはだいたい自慢話である。石原が革命をなしたはずの東京。小池はその東
京を大改革したいというのだから面白い。

回顧録のなかで、石原は豊洲市場問題について、こう述べている。

◇移転が予定されていた東京ガス跡地にも…驚くほど多量の危険物質が埋もれ
ていることが分かりました…が、現代の日本の様々な技術を駆使すれば、この
問題は当然解消される…最終的には化学的な手立てを講じて汚染された土壌を
正常なものにする技術的なメドもついた…◇

2014年から15年にかけて執筆された文章である。日本の技術力への盲信
。というより、豊洲移転ありきで、汚染問題の何かいい解決策はないものかと
考えたとき、「日本の技術力」という信仰は、石原自身のなによりの精神安定
剤になったのだろう。

地下の空洞も、石原の発言に端を発しているという見方がある。その根拠は2
008年5月30日の定例会見における石原都知事の以下の発言だ。

「この間、担当の局長に言ったんですがね、もっと違う発想でものを考えたら
どうだと。日大の名誉教授をしている海洋工学の専門家によると、土を全部さ
らった後、地下2階ぐらいに、3メートル、2メートル、1メートルか、そう
いうコンクリートの箱を埋め込み、市場としてのインフラを支える、そのほう
がずっと安くて早く終わるんじゃないかということでしたね」

この担当局長というのが、中央卸売市場長だった比留間英人で、「コストを下
げるため知事からコンクリ案について調べるよう指示があった。検討後、コン
クリ案は余計に費用がかかるため断念しますと知事に報告した」と各メディア
の取材に対して語っている。

コンクリートの箱を地下に埋め込むという発想がその後も、都の担当者に引き
継がれていたからこそ、今の空洞問題につながっているのだろう。

にもかかわらず、石原は9月13日、BSフジ「プライムニュース」に出演し
「(知事時代の)僕はだまされたんですね。結局、してない仕事をしたことに
して予算を出したわけですから。その金、どこ行ったんですかね?」と他人事
のように語った。

大プロジェクトの最高責任者であり、最終チェックを行う立場であったという
自覚はまるで感じられない。

そもそも、2011年当時、石原が検討せよと命じたコンクリ案を盛り込んだ
設計図ができたというのに、担当者が石原にその図面について説明していない
というのは、常識的には考えにくいのではないか。

石原が当初、取材陣にコンクリ案を「担当局長から聞いた」と言っていたのを
「私が言った」と訂正するなど、かなりブレがひどいことを考え合わせると、
地下空洞の存在を知らされていた可能性もある。ただし、空とぼけているのか、
記憶力の問題なのかは、定かでない。

さて、このように原点に戻ってこの問題を考えることができるのは、小池知事
が「立ち止まって」くれたからであり、そのこと自体はいいのだが、石原都政
の杜撰な運営による大失策の尻拭いがはたして小池知事にうまくできるだろう
か。

意図せずパンドラの箱を開けてしまい、次から次へと奇怪なものが飛び出して
きて、どうにもならなくなりつつあるのではないだろうか。

メディアでは「豊洲移転白紙撤回」の声が出始めた。それが小池知事にできる
のなら、ぜひやってもらいたい。が、その場合、過去にさかのぼって石原元知
事らの責任を追及してもらう必要がある。そうでなければ納税者の理解は得ら
れまい。

小池知事は当初、「東京大改革」の仮面をかぶりながら、既得権勢力と手を握
り、その支援のもとに築地市場移転や東京五輪をスムーズにやり遂げたいと考
えていたはずだ。

しかし、地下空洞にたまった水からヒ素やシアン化合物が検出され、豊洲市場
の安全性に世間の疑いが強まっている以上、それを無視して移転を強行するこ
となどできない。

少なくとも、小池知事は来年春までという移転計画の腹づもりを変えざるを得
なくなった。そうなると、いままでは事態を静観していた都議会の自民党も移
転利権を死守するために動き始めるだろう。畢竟、小池知事はジレンマに陥る
ことになる。

巷間言われているような都議会との全面対決などできはしない。さりとて、都
民の彼女に対する幻想を維持するには、ある程度の対決姿勢も必要だ。小池知
事はいつまで涼しげに微笑んでいられるだろうか。

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>>> 付録 <<<

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   新恭の現代文リライトで読む宮武外骨
~明治のジャーナリストかくありけり~
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明治41年10月5日発行 滑稽新聞 第172号

『蛮的法条の削除』

国家の根本は人民である。官吏は国家が使役する一種の雇人にすぎない。それ
は文明的な活論である。

昔は人民を土芥のごとく扱い、あらゆる官吏は糞威張りに威張っていた。もし
官吏を侮辱すれば「無礼至極」とたちまち首をはねられたものである。

明治維新後でもその悪弊はやまず、明治8年制定の讒謗律に「官吏の職務に関
し誹謗する者は禁獄5日以上1年以下、罰金5円以上300円以下」とあった。

明治13年制定の刑法にも同様の条項が引き継がれた。こうした法条は東洋の
文明国を自称するわが国に明治41年9月30日まで存在していたのである。

ところが、今月1日(明治41年10月1日)から実施された新刑法では、この条
項は完全に削除されている。その理由は、官吏侮辱という法律は官尊民卑の余
弊である、官吏も人民もその権利に変わりはない、というものだ。そこで単に
名誉棄損罪のみを定めているのである。

これまで、立憲国家にあるまじき官吏侮辱罪で罰せられた人々は実に気の毒だ。
旧団団珍聞の編集人は、伊藤博文がキリスト教に引き込まれたらしいという寓
意画を掲載したために官吏侮辱として重禁固に処せられた。そのほか、国家公
益のために、悪官吏を悪官吏と罵り、収賄奴を収賄奴と書いたために、官吏侮
辱罪で罰せられた実例は数多い。滑稽記者なども、この法条で再三、罰せられ
た。

徳川幕府の末期、大罪人として迫害を受けた勤王家諸氏に対して、明治の政府
はそれぞれ褒賞、贈位を行ったが、明治において官吏侮辱罪で罰せられた公益
家諸氏に対しては、天が高貴な位を与えるとみるべきだ。


宮武外骨
1867年(慶応3年)現香川県生まれ。85年、ジャーナリストをめざして
上京し、87年、「頓智協会雑誌」を創刊。同誌で大日本帝国憲法を揶揄し、
治安妨害罪で収監される。1901年に創刊した「滑稽新聞」の記事で官吏侮辱罪
に問われ有罪となって収監。その後、同紙はたびたび発行禁止処分を受け、190
8年、滑稽新聞173号を「自殺号」として、終刊させた。1955年、89歳で死去。
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国家権力&メディア一刀両断
発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0001093681.html
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