名作落語大全集

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   名作落語大全集#320 発行者:越智健
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 発行日:2017年5月26日

「まぐまぐ」寄席に100名様ご来場いただいております。

 ご来場ありがとうございます。
 いつも五月初旬に朝顔の種を蒔くのですが、今年は色々ありまして、月末にやっと
……昨年朝顔の種が二百粒ほど取れて、近所でほしい人は持って行って下さいって置
いていたのに、ほとんど無くなりませんでした。何か料理して食べられないかしら。
 蒔いた途端に雨になったのはいいのか悪いのか、いよいよ梅雨が近付いているので
しょうか。
 本日は珍しい一席。

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15 綱七(つなしち)

【粗筋】
 芝居で幕が開くと、海岸の場面。藤原鎌足の忘れ形見である淡海は、蘇我入鹿に狙
われて与四郎と名を代えてこの辺りに住んでいる。目を患っているため、腰元の錦木
が、これもお船という海女に身をやつして付き添っている。お船が薬を取りに行き、
与四郎は手探りで小屋に入る。
 藤原家の臣、沢田新九郎政輝は、主人の勘気に触れて追い出され、綱七と名乗って
漁師になっているが、忠義を忘れず行方不明の若君と腰元を探していた。与四郎とお
船がそうに違いないと気付くが、代官が現れて漁師らに二人の人相書きを渡して帰る。
漁師らは二人の正体に気付き、ちょうど戻ったお船を捕らえる。そこで綱七が正体を
現して彼女を救い、「若君を船で逃がせ」と命じて、大勢の漁師と立ち回りとなる。
しかしお船が殺されて若君が捕まり船で運ばれているという知らせを聞くと、綱七は、
「なにとぞ船を戻させたまえ」と竜神に祈りつつ腹を切って臓腑をつかみ出して投げ
る。すると何ということか、船が戻って来るではないか。若君を逃がして、綱七は喉
を掻き切る。波音高く幕となる。
 見物が、
「今のは何の芝居ですか」「分かりませんか、綱七の腹切りですがな」
「綱が腹切って海へ飛び込んだら、何になりますやろ」
「おおかたスサになりましょう」

【成立】
 上方の芝居噺。「綱七」という狂言は存在しない。『小栗判官』の浪七を引用した
ものか。昔からあったようだが、桂文我が演出に工夫したという。『小栗判官』の浪
七の腹切りが取り上げられることがなく、惜しいというので引用したのかも知れない。
「スサ」というのは関東では「ツタ」という、壁塗りの土にまぜる材料。繊維質が
入ることによって強く湿気を残さぬようになる。昔は綱を切って混ぜることからこ
の落ちになる。以前からあったが、桂文我が演出に工夫して完成させた。
 622年、推古天皇のもとで政治を行っていた厩戸皇子(聖徳太子)が死ぬと、蘇
我氏が権力をほしいままにするようになった。天皇も自分が扱いやすい者を任命し、
聖徳太子の血筋を滅ぼした。645年、中大兄皇子は藤原鎌足と共に蘇我入鹿を暗殺、
これが「乙巳の変(いっしのへん)」とも呼ばれるクーデターであるが、この後の政
治改革をまとめて「大化の改新」と呼んでいる。
 落語の中の芝居では藤原鎌足の子供が蘇我入鹿に追われるということで、歴史と逆
なのだが、なぜだろうか。

【蘊蓄】
 「小栗判官」、説教節などの原作は次の通り。
 京都、二条大納言の子の小栗は、怪力で生まれながらの乱暴者、鞍馬山の大蛇に見
初められ、その化身を妻としたため都で噂になる。(なぜかこの逸話はそれだけでお
しまい)。これを知った父が怒って小栗を常陸(千葉、茨城)へ流す。
 旅商人の後藤左衛門から相模にいる横山大典の娘、照天姫という女性の美しさを聞
き、小栗は後藤左衛門に手紙を託す。教養に溢れ機智に富む手紙のやり取りに二人は
愛し合うようになり、直接会いに行くことにする。後藤左衛門が親を通すようアドバ
イスするが、忍び込んで関係を結んでしまったから、さあ、親の大典が怒ったね。誰
にも乗りこなせなせない巨大な人喰い馬に乗れという無理難題を吹っ掛けるが、小栗
は見事に乗りこなす。
 そのまま嫁を連れて帰ればよかったのに、大典親が引き留めるままに滞在し、呼ば
れて赴いた酒宴で、十人の家来と共に毒を盛られて残らず死んでしまう。照天姫も木
の輿に入れられて淵に沈めれるが、同情した家来が重石の綱を切ったので、照天は下
流に流れて救われる。
 救った村長は彼女を養女にしようとするが、嫉妬した妻が人買いに売ってしまう。
照天は美濃の万屋という遊女屋に売られる。亡き夫に操を立てて、客を取ることを拒
否したため、下働きに回され、常陸の小荻(ひたちのこおぎ)と呼ばれて一人で百人
の遊女の世話をさせられること三年、千手観音のご利益を信じて働く。
 この間、死んだ小栗は閻魔大王の前に出るが、力自慢で乱暴者だったということで
地獄行きが命じられる。ところが一緒に殺された十人の家臣が自分の身に変えて小栗
を救ってくれるよう願い出、これに心を動かした閻魔が小栗の命を救う。小栗の体は
毒のために骨まで溶けてしまっており、三年の間にボロボロになった肉体で復活する
ものの、目も見えず耳も聞こえず口もきけない。閻魔が熊野の薬湯に連れて行けとい
う札をつけてやり、通り掛かった高僧が車を作って、「これを引いたものには千人、
万人の僧に供養してもらったのと同じご利益がある」と書き添えた。これによって生
き帰った藤沢から熊野を目指して、東海道を西へ向かう。
 照天が働く遊女屋までくると、情け深い照天は、自分の夫だとは夢にも思わず、こ
の人の車を引くのに三日の休みをくれと主人に申し出る。主人は断るが、万一の時に
は自分があなた方夫婦の身代わりとなりますという言葉に心を打たれて、結局五日の
休みを与える。
 照天は美しい顔を隠し、狂女のふりをして京都近くの関寺まで四日を掛けて到着す
ると、この病人が夫とは知らぬのに離れがたく思い、札に自分のことを書き添えて、
一日で遊女屋まで走って戻る。
 小栗は人々の助けで無事に熊野の霊湯で回復すると、親を一目見ようと実家に戻り、
世間話をしているうちに息子だと名乗ることになってしまう。信じられない父親は、
襖越しに三本の矢を射るという荒業で試す。小栗は両手で矢を止め、三本目は見事に
口で加えて受け止める。父親は帝に息子の奇跡を伝え、帝は近畿五ヶ国と、小栗が望
んだ美濃を与える。
 四日も車を押してくれた遊女屋の女に礼を述べに行き、それが照天姫であることが
分かった。三年間こき使った主人は重い罰を受けるところであるが、姫が五日の休み
をくれた心優しい主人だと訴え、美濃の国司に任命される、
 まあ、後は照天の父親などに報いが来るなど、それぞれの因果応報があって、小栗
と照手は神と祀られる、めでたしめでたしとなる。これが物語の概要。

では、歌舞伎の方をご紹介。

発端(鶴岡八幡宮の場)
 常陸の領主、横山郡司満重の娘、照手姫は、父の名代として叔父である横山大膳の
還暦の祝いを述べに鶴岡八幡宮へやって来る。照手には小栗判官という許嫁があって、
父親は彼に常陸国を譲ろうとしていた。大膳と息子達は、国の譲状と将軍家から預か
った「勝鬨の轡(かちどきのくつわ)」を盗み、郡司を殺して照手をさらってしまう。
通り掛かった官領の上杉安房守と近習の三浦采女之助は、落ちていた小柄から、大膳
が郡司を殺したのだと見破る。
 序幕(横山大膳館の場)
 小栗判官が将軍の使いで大膳の館を訪れるが、正体を隠し、女装していたため、使
者が許嫁だとは夢にも知らぬ照手姫は隙を見て脱出する。正体を明かして問い詰める
と、大膳は、照手姫は自分が救って小栗と結婚させるよう準備していたと誤魔化し、
鬼鹿毛という荒馬に小栗を食い殺させようとするが、小栗は見事にこれを乗りこなし、
大膳からの「馬を碁盤の上に立たせてみよ」という無理難題にも見事に応える。腹を
立てた大膳が小柄をなげるが、そこへ現れた三浦采女之助は、郡司殺しの証拠の小柄
を出して、二つの小柄が同じだと悪事をあばく。姿をくらました照手を追って、小栗
は鬼鹿毛にまたがって出発する。
 第二幕(近江国堅田浦浪七住家の場)
 漁師浪七の家、女房の藤は、兄のやくざ者、鬼瓦の胴八に困っている。
 この胴八、行方不明になった照手姫を見付ける依頼を受けると、義弟の浪七がかつ
ては小栗判官の家臣、美戸小次郎武継という侍だったことを思い出し、金で口説きに
掛かる。胴八は受け取った金に足利家の刻印があることから、将軍家から盗まれた金
だと気付く。
 胴八が帰ると浪七が畳を上げて、床下に隠れていた照手が姿を現す。浪七は不義に
よって小栗家を追われたが、忠義の心を忘れずにいたのである。姫を探す悪に加担し
ている男の妹であるから、女房にも本当のことが言えない。この夫婦の様子から照手
姫がかくまわれていることを察知した胴八は、仲間を偽代官に仕立てるが、この偽物
が馬鹿でかえって追い詰められる。まあ、それでも照手姫を探し出して葛籠に押し込
め、止めようとする藤を刺して逃げる。浪七は瀕死の女房に言われて後を追う。
 「浜辺の場」
 胴八は小舟に葛籠を乗せて漕ぎ出し、追い風に乗って遠ざかる。追って来た浪七は
自分の命と引き換えに舟を戻すよう竜神に願って腹を切り、はらわたを投げ込むと、
突然の風に舟は岸へと押し戻される。浪七は胴八を切って照手姫だけを舟に乗せて瀬
田へと押し出す。なおも襲い掛かる胴八にとどめを刺して、浪七も力尽きる。
第三幕「美濃国青墓宿宝光院門前の場」
 青墓(あおはか)の宿は宝光院の紅葉が絶景、萬屋の後家、槙が娘の駒を連れて参
詣する。浪人に身をやつした小栗が現れて、奴の三千助と会い、盗まれた勝鬨の轡が
万屋にあることを知らされる。ならず者に襲われた母娘を救い、そのお礼に勝鬨の轡
を見せてくれるよう頼むと、駒は小栗に一目ぼれし、母を説得する。
 「萬福長者内風呂の場」
 小栗は轡を手に入れるために駒と婚約するが、この家の下女として働いている小萩
が人買いに売られた照手姫であった。婚礼の日、風呂の用意をしていた照手は、婿入
りする男が小栗だと知るが、小栗は彼女の行動を目で止める。
 「奥座敷の場」
 祝言が始まり、槙が婿への引き出物として勝鬨の轡を出すと、小栗はこれを本物と
確認し、結婚は嘘だと告白する。槙は娘の気持ちをかなえてほしいと、自らの正体を
明かす。実は照手姫の乳母で、姫を探して横山家を再建するために、腕の立つ婿を求
めていたのだ。小栗は自分こそ将軍家が決めた照手姫の許嫁であると名乗り、下女の
小萩こそ照手姫であることを明かす。槙は旧主の役に立つと喜ぶが、嫉妬に狂った駒
は照手を殺そうとする。槙が止めるがそのはずみに駒の首を切ってしまう。首が飛ん
で庭の灯篭に乗ったので、母は泣いて詫び、小栗が念仏を唱えようとするが、駒の首
が恨み言を並べ、とたんに小栗は顔の痛みに苦しみ、足腰が立たなくなる。

 大詰め「熊野湯の峯の場」
 照手姫は足腰の立たない小栗を車に乗せて、雪の中を熊野へ入って来る。遊行上人
(ゆぎょうしょうにん)の導きで霊湯に入ると、たちまち小栗は元の体に戻る。
 「道行情靡魂緒綱(みちゆきこころもしぬにたまのおづな)」
 三千助が現れて、将軍家から大膳一味を捕らえる総大将に任命されたことを伝える。
小栗は上馬の絵を見て、熊野権現に、この馬を貸してくれと祈る。すると絵から白馬
が抜け出し、小栗と照手はこの馬にまたがって天高く上って行く。
 「常陸国華厳の大滝の場」
 大膳親子は修験者に化けて、鎌倉に攻め込む計略をはかっていた。大膳が勝利を祈
って鷹を放すと、矢が飛んで来てこの鷹を落とす。これが小栗の放った矢であった。
 官領の上杉安房守も現れ、激しい戦いの末、小栗は大膳親子を倒すが、最後は照手
姫が親の仇である大膳を討ったのである。

 悪役は照手姫の父ではなく叔父にすることでお家騒動としたのはまだいいが、小栗
の足腰が立たなくなる部分はひどいね。車で霊湯へ向かう場面を作るために仕方なく
そういうストーリーを作ったのだろう。四つの幕が春夏秋冬というのもお定まりのパ
ターン。近松門左衛門『当流小栗判官』(1698)、竹田出雲『小栗判官車街道』
(1738)があるが、「荒馬乗り」と「車引き」以外は演じられることがなかった。
小栗判官・照手姫というのはみんな知っていた。
 1983年、先代の猿之助が復活させた。馬の後足を演じたのが後に女形として活
躍する笑也で、何と前足と小栗の猿之助を合わせて90キロを一人で持ち上げていた
という。

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十五代将軍・慶喜(よしのぶ・けいき:1837~1913:在位1866~1867)

 1868年、鳥羽・伏見の戦いを抜け出して江戸へ戻った慶喜は、2月12日、上
野寛永寺に蟄居する。新政府への恭順を示したのだが、幕臣には不満を持つ者があり、
本多敏三郎や渋沢成一郎らを中心に有志を集めた。23日に浅草で決起集会が行われ
て「彰義隊」と名乗る。将軍を護って戦うのが目的だったが、4月11日、江戸城は
無血開城、慶喜は水戸へ退去することになり、千住から松戸までの護衛が命じられる
が、彰義隊はそのまま寛永寺に戻された。勝海舟が解散を命じるが、応じず、新政府
軍が江戸に来るというので、脱藩者や武家の次男、三男が参戦、三千人以上に膨れ上
がる(一説四千とも)。渋沢は日光への移動を提案するが、反対されたばかりでなく
暗殺しようという動きまで出たので離脱する。新政府は解散するよう命じるが、彰義
隊が応じず、ついに5月1日、上野近辺で衝突する。新政府軍は武力討伐を決意し、
15日、総攻撃を行う。刀しかない彰義隊と、鉄砲や大砲で攻撃する新政府軍では差
がありすぎた。
 数百の死体が放置されるが、朝敵であるため供養をすることは憚られた。南千住に
ある円通寺は、それを一手に行い、政府からにらまれても屈しなかった。彰義隊士の
墓を作り、寛永寺からは黒門を贈られた。上野の戦争の弾丸の穴が幾つも開いている。
尚、1963年義展ちゃん事件で、死体が捨てられたのがここ。後に義展ちゃん地蔵
が南千住駅前の回向院にある。ここ数回、メルマガにこの回向院が登場してきたが、
杉田玄白が『ターヘルアナトミア』を翻訳して『解体新書』を書くために、腑分けを
したのがここ。

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最終発行日
2017年05月26日
 
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