高橋ヨシキ
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高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド!

高橋ヨシキ
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「人生を無駄にしないためにも、もっとくだらない映画を観なさい!」というのはジョン・ウォーターズ監督の名言ですが、このメルマガでは映画をはじめ、音楽や書籍、時事ネタから貧乏白人のあきれた生態まで、ジャンルにこだわることなく硬軟とりまぜてお届けします。また、毎号、旧作新作問わず、ヘンテコリンな映画のレビューも掲載いたします。会員の皆さんからのご質問にもできる限りお答えするつもりですので、よろしくお願いします。ヘイルサタン。

著者プロフィール

高橋ヨシキ

デザイナー、ライター。チャーチ・オブ・サタン公認サタニスト。雑誌『映画秘宝』でアートディレクションを手がける傍らライターも務める。また『ヤッターマン』『悪魔のいけにえ』『ロード・オブ・セイラム』など、数多くの映画ポスター、DVDジャケットのデザインを担当。著書に映画評集『暗黒映画入門/悪魔が憐れむ歌』『暗黒映画評論/続・悪魔が憐れむ歌』(洋泉社)、実話怪談『異界ドキュメント/白昼の魔』『同・白昼の囚』『同・白昼の生贄』(竹書房文庫)、映画『アイアン・スカイ』ノベライズ版(竹書房文庫)、編著に『ショック! 残酷! 切株映画の世界』(洋泉社)など。

Satan loves you!

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高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド!

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【今週の目次】
1. メインコラム「高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド」

2. ヘンテコ映画レビュー

3. クレイジー質問コーナー(今回は第一回なのでお休み)

※コラムで扱ってほしいネタや映画、および質問を大募集!
 質問その他は、yoshiki_takahashi666@yahoo.co.jp まで、
 よろしくお願いします。メルマガ内に回答コーナーも設けます。

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1. 高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド

第一回:大人だって『夢の王国』に遊びたい!
~世界観にどっぷり浸かりたい人たち~

 「キッザニア」という子供向けの職業体験型テーマパークがあります。

 これは子供向けの「職業体験型テーマパーク」で、いろんな職業が模擬体験
できる、いわば「なんとか屋さんごっこ」の豪華リアル版といってもいい、夢
のワンダーランドです。

 特に「裁判官になって大上段から人を裁いてやりたい!」「警察官になって
権力を振るいたい!」「検察官になって被告をギューギュー言わせたい!」と
いうようなお子さんにはぴったりです。もちろん、こうした公権力関係以外で
も、普通にお店屋さんとかマスコミ、手品師からファッションモデル、発明工
房で働く発明家……これはいわゆる「町のエジソン」とかそういう奴なのだろ
うか……とにかく、東京のキッザニアでは80種もの職業が疑似体験できるのだ
そうです。

 楽しそうなので、ぜひぼくも体験してみたいところなのですが、残念なこと
にキッザニア東京は3歳から15歳までしか遊べないので、大人は指くわえて見
てるしかないらしいです。

 このキッザニア、たった今ウィキペディアで調べたところ、メキシコシティ
ーやドバイ、バンコクなど世界中に展開しており、今年もすでにモスクワにヨ
ーロッパ最大のキッザニアがオープンしたほか、パリやローマでもオープンが
予定されているとのこと。

 各地のキッザニアはそれぞれ現地の特色を活かすはずなので、というか活か
してもらいたいので、メキシコシティーやドバイやバンコクではそれぞれ、麻
薬カルテルのボス体験だとか、毎日遊んで暮らしてる石油王のドラ息子体験、
腰に番号つけてフラフラ踊るレディボーイ体験などができるに違いありません。

 というのは冗談としても、しかしなぜドバイにキッザニアが必要なのか、ま
ったく理解ができないのは本当です。だってインターネットでみるドバイの金
持ちの子供なんて、スーパーカーでも山盛りのコカインでもシネコン並のホー
ムシアターでも思うがままだし、個人のパーティにスーパースターやパリス・
ヒルトンなどをがんがん呼びつけられるのですから、どう考えてもそういうお
子さんたちがコンビニ店員とかファストフード店員の体験をしているところが
想像できない。

 まあパリス・ヒルトンの出てたリアリティTV『シンプル・ライフ』みたいな
ノリで「(自分の想像力のまったく及ばない)シモジモの暮らしを体験してみ
る」こと自体をギャグとして考えているのかもしれませんが、どうにも腑に落
ちないというかムカついてしまうのは、ひとえにぼくやみなさんがドバイの大
金持ちの子供に生まれつかなかったからです。

 冗談はさておき、こういうキッザニアみたいな施設を子供だけに独占させて
おくのはずるい。大人だって体験型テーマパークで無茶やってみたい。と、
1970年代に既に考えていたのが『ジュラシック・パーク』でも有名なマイケル
・クライトンです。というか、考えてみれば『ジュラシック・パーク』も究極
の体験型テーマパークですから、クライトン先生はこういう「あったらいいな、
がある」世界を描くのに本当に長けていたんだと思います。

 ちなみに晩年にクライトンが書いた『恐怖の存在』は、グラフや論文の引用
なども駆使して「地球温暖化などというものはガセだ!」と強く主張した小説
で、それこそ金持ちやセレブリティがお題目のように「エコ」「エコ」言うの
を、クライトン自身を反映したと思われる主人公がボロカスに論破していくと
いう面白い作品です。

 しかも論破するだけでは飽きたらず、「うわージャングルの奥地に素朴な現
地の人がいる! 交流できるなんて夢のようだなあ」などとほざいていた「エ
コ」な人物が素朴な現地の食人族に生きたまま喰われてしまう、という場面ま
であるのだから最高です。どうりで映画化されないと思った。

 さて、クライトンが1973年に脚本・監督を手がけた『ウェストワールド』と
いう映画があって、これがまさに「大人のキッザニア」を具現化したものでした。

 この作品にはデロスランドという巨大遊園地が登場するのですが、遊園地の
中は三つのゾーンに分かれていて、それぞれアメリカの西部開拓時代(これが
「ウェストワールド」)、中世ヨーロッパ、そしてローマ時代を再現したもの
になっています。参加者はデロスランドに着くと衣装や武器を渡され、それぞ
れのランドの中で好き放題に遊ぶことができます。

 ウェストワールドを歩けば悪役ガンマンが襲ってくるのでこれを決闘で倒し、
バーに行って喧嘩したら二階で売春婦としっぽり、とか、そういう体験ができ
るのです。

 なんでそんなことが可能かというと、デロスランドの「キャスト」はみんな
人間そっくりのロボットなんですね。しかも、機械の体を人工皮膚で覆ってい
て、撃てば血が吹き出し、もがき苦しんで死ぬというリアリティが徹底されて
います。ロボットたちはすべて中央の巨大コンピュータで制御されており、絶
対に人間に危害を加えるようなことはないので安心です。

 というのがうまくいかないのは『ジュラシック・パーク』とまったくおんな
じで、『ウェストワールド』では『荒野の七人』(60年)で自分が演じた役と
まったく同じ格好をしたユル・ブリナー扮する悪役ガンマンロボが暴走、殺し
ても殺しても起き上がって襲いかかってくるのでした(これはロボの顔面がだ
んだん壊れていくところも含め、のちの『ターミネーター』にそっくりです)。

 ぼくが『ウェストワールド』を初めてテレビで観たのはたしか小学校高学年
のときで、そのときは、主人公たちが西部の売春宿にしけこんだところで父親
にスイッチを切られてしまいました。

 「違う、あれはロボットなんだ!」と力説したけど駄目でした。

 今考えるとなにが「違う」んだか全然わかりませんが、子供心に「ロボット
のエロは人間と違うんだからオッケー」という勝手な理屈があったのだと思わ
れます。

 エロいロボットといえば『ターミネーター3』(03年)のT-X(クリスタナ・
ローケン。胸のサイズを自在に変えられる)だとか『A.I.』(01年)のジゴロ
・ジェーン(アシュリー・スコット)などは記憶に新しいところですし(すみ
ません、『エクス・マキナ』はまだ観てないです)、生体ロボットも入れれば
『ブレードランナー』(82年)のプリスやレイチェル、『ときめきサイエンス
(エレクトリック・ビーナス)』(85年)のリサ、『チェリー2000』(86年)
のチェリー、『ビキニマシン』(65年)のビキニ女ロボ……フェムボット……
だんだんうわごとのようになってきたのでこの辺にしておきますが、こういう
「エロいロボット」もの元祖にして頂点が言わずとしれた『メトロポリス』
(27年)のマリアなのは言うまでもありません。

 『メトロポリス』のマリアは科学と魔術の申し子で、そこも面白いのですが、
本題とずれるのでその話はまた別の機会に。

 『メトロポリス』は本当にいつ観ても本当に最高だと思ってます。

 そんな「ウェストワールド」みたいな遊園地が実際にあるかというと、おそ
らくディズニーランドが一番近いのではないかと思いますが、やはり遊園地だ
と物足りないのはお客さんが普通の格好でいることです、というか、そこのハ
ードルを上げると遊園地としては商売あがったりなんでしょうが、しかし『ウ
ェストワールド』みたいな感じで『スター・ウォーズ』とか『スター・トレッ
ク』の遊園地ができないかなあ、と世界中のギークな人たちは思っているわけ
です。

 実際、いまディズニーがアメリカで計画中の『スター・ウォーズ』ランドだ
とか、スペインのムルシア州とかヨルダン王国に作られると噂されてる『スタ
ー・トレック』のテーマパークは、ディズニーランド方式で「どっぷり世界観
に尽かれる」ことを目指しているように見える。といっても完成予想図みたい
なものから判断しただけですが、ところがそれでも「ウェストワールド」はお
そらく実現できない。

 というのも、観客全員にコスプレを強要できないだろう、というのは前述し
た通りですが、仮にそうなった場合には、今度はキャストとお客さんの区別が
できないという事態が生じてしまうからです(映画『ウェストワールド』でそ
こをどうやって区別してたかは忘れました。どうやってたんだろ……)。

 ちなみに大昔、『としまえん』のハロウィンに、『ロッキー・ホラー・ショ
ー』関係の友人とバッチリ仮装して遊びに行ったらやはり「キャストと間違え
られると困るので普通の服に戻してください」と言われたことがありました。

 しかし、世の中にはそう言われて「ハイそうですか」と引き下がることをヨ
シとしなウルトラ頑固者というのがいてですね、たとえば現在、実物大のミレ
ニアム・ファルコンを作ろうとしている人がいますが(フル・スケール・ファ
ルコン・プロジェクト https://www.facebook.com/fullscalefalcon/)、こ
れはもう何がなんでもミレニアム・ファルコンに乗りたい! 一部再現とかミ
ニチュアでは飽き足りない! という「その世界に完全にどっぷり浸かりたい
欲」が限界突破した良い例だと言えるでしょう。

 世界観といえば、「ウェイストランド・ウィークエンド」というイベントは
最強です(http://www.wastelandweekend.com)。

 これはカリフォルニアの砂漠で3、4日かけて行われるキャンプ方式のイベン
トなのですが、何が凄いって、『マッドマックス』的な「ポスト・アポカリプ
ス」な車と格好の人しか入場できないというところです。普通のジーパンとか
フワフワした服装とかは絶対禁止。会場の砂漠をさまざまなウォーリグが爆音
を轟かせて走り回り、ウォーボーイズやヒューマンガス様的な荒くれ太郎が我
が物顔で空砲をぶっ放したりしているさまは圧巻です。

 ホームページでビデオも観られるので興味ある方はどうぞ。ちなみに『バー
ニングマン』にも出張しているサンダードーム(映画に出てきたのと同じつく
りで、実際にゴムで吊られて戦える/一応、武器の棒は先にクッションがつけ
てあり危険のないようになっています)も参加できます。

 おそらく今のところ、世界で最も没入感の高いイベントだと思うので、「ウ
ェイストランド・ウィークエンド」にはぜひ行ってみたいものです。あと『ゾ
ンビ』(78年)が撮影されたモンローヴィル・モールというショッピングモー
ルでも、世界最大規模の「ゾンビ・ウォーク」がたびたび開催されていますが、
ここは2003年から2004年にかけて大改装されてしまったので、『ゾンビ』まん
まの背景ではなくなってしまったのが残念。とはいえまだ撮影当時の面影をと
どめている場所はあるし、ゾンビ映画ファンにとって最大の聖地であることは
間違いないので、これまた楽しそうです。

 あ、今回は自宅を『スター・トレック』のエンタープライズ号のブリッジに
改造したり、毎日『スター・トレック』の制服で暮らしている人たちの話は長
くなるので省きます。

 あと思うに、自分がやったことはありませんが、サバイバルゲームをやって
いる人たちもきっとこの「世界観にどっぷり浸かりたい」ところが強いのでは
ないかと思います。

 サバイバルゲームとはちょっと違う形の「戦争ごっこ」も世界各地で開催さ
れていて、オハイオ州コノートで開催されている「D-DAY:コノート」を始め、
アメリカやヨーロッパ各地で本物の戦車や飛行機や上陸用舟艇、高射砲まで担
ぎだして「歴史的な戦いを再現する」ことに命をかけている人も沢山います。
そういう戦車やなんかも個人のコレクションだったりするからすさまじい。

 あ、あと中世の戦闘やバイキングの戦いを再現する人たちもいます。そっち
系では、町ぐるみでファンタジー系のロール・プレイングにハマってしまい、
現実の人間関係がグシャグシャになってしまうさまを追ったドキュメンタリー
『Darkon』(06年)が超面白いので、これについてはいずれゆっくりご紹介で
きたらと思います。

 と、いろいろ楽しそうな大人を見ていると、やっぱりキッザニアなんて別に
うらやましくないぞ! と思えてきてよかった。

 それにどうせキッザニアには本物の戦車もないし実物大のファルコン号もな
いし、セックスもできないしビールも飲めないに決まっているのです。

 全然うらやましくなんかないぞ! 

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2. ヘンテコ映画レビュー

【第一回】『デモン・シード』
(1977年/米/監督:ドナルド・キャメル/主演ジュリー・クリスティ)

 一言で言ってしまえば、『デモン・シード』は「超高性能のコンピュータが
悪さをする」という映画である。映画の世界において、超高性能のコンピュー
タは伝統的に悪さをすることになっていて、『2001年宇宙の旅』(68年)のH
AL9000を筆頭に、『地球爆破作戦』(70年)のコロッサス、『アルファヴィル』
(65年)のアルファ60、『ウェストワールド』(73年)のデロス・コントロー
ル、『2300年未来への旅』(76年)のメイン・コンピュータ、『トロン』(82
年)のMCPなど枚挙にいとまがない。『ターミネーター』(84年)シリーズのス
カイネットや、『マトリックス』(99年)シリーズの「マトリックス」、『WA
LL-E』(08年)のオート、『エイリアン』(79年)のマザー……それぞれ、事情
は違えどみんな「悪さをする超高性能のコンピュータ」たちだ。

 ホラー作家ディーン・R・クーンツの原作を映画化した『デモン・シード』
は、同時に「ヒロインが得体のしれないものを妊娠してしまうホラー」として
の一面も持っている。「超高性能のコンピュータが悪さをする」映画と同様、
「得体のしれないものを妊娠してしまう」映画、というのも数えきれないほど
あって、『ローズマリーの赤ちゃん』(68年)に始まり『マニトウ』(78年)、
『モンスター・パニック』(80年)、『悪魔の受胎』(85年)、『ザ・フライ』
(86年)、『スピーシーズ2』(98年)、『ロード・オブ・セイラム』(12年)
などなど、こちらも数え上げればきりがないほどである(もちろん『エイリアン』
シリーズも大ざっぱに言えばここに含まれる)。

 加えて『デモン・シード』には「トリップ映像映画」という側面もあるのだ
が、よその映画の題名を羅列してばかりでは申し訳ないので、これについては
割愛する。「トリップ映像映画」については今後このコーナーでも随時とりあ
げることになるのではないか、という予感がしているが……。

『デモン・シード』のあらすじは簡単である。「プロテウス4号」と名付けら
れた、世界初の生体コンピュータ(メインの回路が機械ではなく、核酸を合成
して作られている)がついに稼働を始める。プロテウスはおそるべきスピード
で知識を吸収し、ほどなく自我を持つようになる。そしてプロテウスは「箱の
中に精神だけ閉じ込められているのはイヤだなあ。それに人間ってどいつもこ
いつも本当にバカだなあ」と、至極まっとうな考えを持つに至り、自分を開発
してくれた博士の奥さんにちょっかいを出して「人間とコンピュータのハイブ
リッド」の子供を産ませようとするのだった。

 ところで、なぜプロテウスが奥さんにいたずらできるかというと、それは
博士の自宅が完全にオートメーション化されたコンピュータ制御の未来ハウス
だったからである。博士はプロテウスの成長に夢中になるあまり、奥さんを置
いて家を出て行ってしまうのだが、その際、いわゆる「端末」を一台家に残し
てきたのがまずかった。

 「端末」と書くと今では携帯電話のことだと思われてしまうのだが、そうで
はなく、かつては「パーソナルな」コンピュータ、というものが想定されてい
なかったので、個人個人が使う「端末」があって、それが回線を通じて1台の
巨大コンピュータに繋がっている、という描写が一般的だったためだ。

 さらに不用心なことに、博士は自宅に自走式のロボット・アームや、やはり
ロボット・アームを使って金属加工のできる工房なども完備していたので、プ
ロテウスはやすやすと家全体を乗っ取り、かつ奥さんにちょっかいを出すのに
必要なメカなどを自作することが可能だったというわけ。

 もちろん奥さんも黙ってプロテウスの好きにさせていたわけではありません。

 一生懸命脱出しようとはしたのだが、ドアは勝手にロックされてしまうわ、
コンピュータごときにに協力なんてしてやるもんですか、とふてくされていた
ら部屋の温度をどんどん上げられてしまうわ、あげくの果てに様子を見に来た
夫の同僚がぶち殺されるに至って、「まあ、話だけなら…」とプロテウスの「
子孫残したい計画」に耳を傾けるようになったのである(だから、本作を「コ
ンピュータが女の人をレイプして子供を産ませる映画」というのはやや語弊が
あって、プロテウス的にはどちらかというと和姦と言いたいのではないかと思
う)。プロテウスの秘密兵器は博士の工房をハイジャックして作った一種の万
能メカで、これは「スネークキューブ」というおもちゃを想像してもらうとそ
れに近いのだが、正四面体のピース(スネークキューブは直角二等辺三角柱だ
が)が組み合わさった抽象的な形のメカで、必要に応じて巨大な多面体の形に
まとまったり、また一部を展開して伸ばしたりすることで様々な状況に対応で
きる、というもの。

http://www.dailymotion.com/video/x2pnxwj_donald-cammell-demon-seed-1977-480p-part-2-of-2_shortfilms
(プロテウスが「スネークキューブ」を使って同僚を殺害する場面は、このビデオの10:08あたりから観られます)

 この「スネークキューブ」マシンの特撮、というか作り物はなかなか見応え
がある。いくつかの形態のものを使い分けているはずだが、展開したり自らを
折りたたんだりする幾何学的な立体、というイメージは強い印象を残す。実際
に機能的かどうかは別として、造形としてだけ見た場合、『インターステラー』
(14年)に登場したロボットに負けない面白さがあると思う(理屈的にはまっ
たく同じコンセプトだと言って良い)。幾何学的な立体が次々と姿を変えるも
のとしては、『トロン』に出てきた「ビット」というお助けプログラムが大変
キュートだったことは忘れられない。

https://www.youtube.com/watch?v=_fGujzulsas
(『トロン』のビット君)

 そんな面白メカが登場する『デモン・シード』の美術監督はエドワード・C
・カルファーニョ。この人は『オズの魔法使い』(39年)からのキャリアを誇
る大御所で、ウィリアム・ワイラー版の『ベン・ハー』(59年)や『メテオ』
(79年)といった大作だけでなく、『ソイレント・グリーン』(73年)のよう
なSF、さらに『ハートブレイク・リッジ』(86年)や『バード』(88年)など
イーストウッド映画も手がけている……というか、こういう「誰々は何々の仕
事でも知られる」というような原稿は、はっきり言ってラクして文字数を稼い
でいる感じなので、本来は慎まなくてはいけないのであります。自戒を込めて、
今後はそういう手抜きはなるべくないようにしたいと思います(もちろん、そ
うやって誰それの仕事リストを紹介することで原稿が面白くなるなら、それは
また別の話なのだが)。

  『デモン・シード』でぼくが一番面白いと思うのは、先にも書いたように
コンピュータのプロテウスが、殺人コンピュータのくせに自分の子供を産んで
くれる予定の奥さんにはちょっと遠慮気味な態度もみせる、というととこであ
る。「あなたを完全に洗脳して言うがままにすることもできるが、できればそ
うはしたくはないなあ」というプロテウス号は、言ってみれば名目上だけでも
「和姦」じゃないと気がすまない困ったストーカーのような奴なのだ。

 でもって、いよいよ本懐を遂げようというときになって(といっても、合成
した人口精液を注入するだけ)、プロテウスはさらなる気遣いを見せる。

 「私は人間のようにあなたを愛撫することはできない。しかし、代わりに面
白映像を見せてあげましょう」。そう言って、プロテウスは奥さんにトリップ
映像を見せてくれるのである。

 このトリップ映像は、抽象的な幾何学模様が波打つように変形していくCGI
を中心に、『2001年』的な星々の映像やSF的な風景などをミックスしたもの
で、中子真治の『SFX映画の世界』(講談社)によれば「コンピュータのオー
ガズムを表現したもの」とのこと。

 コンピュータ・グラフィックを担当したのはシンサビジョン社(のちのMAG
I社)。1972年に設立されたシンサビジョン社はコンピュータ・アニメーショ
ンの専門会社で、『トロン』の伝説的なライト・サイクル・チェイスを担当し
たのもここ。コンピュータ映像を35mmのフィルムに出力するにあたっては、ジ
ェニグラフィックス社の当時最先端のシステムが用いられた。

 実は、このトリップ映像シーンこそ、『デモン・シード』の最重要場面では
ないか、と疑うに足る証拠がある。

 『デモン・シード』の監督ドナルド・キャメルは数奇な人生を送った人物だ。

 英国出身のドナルドの父親は『Aleister Crowley, the Black Magician』と
いう、「20世紀最大の魔術師」ことアレイスター・クロウリーの伝記を著した
人物(チャールズ・リチャード・キャメル)で、ドナルドは「魔術師や形而上
学者、スピリチュアリストやデーモンに囲まれて(本人談)」育った。

 早くから画家としての才能を示したドナルドはイタリアに留学したのちニュ
ーヨークに渡り、それからアニタ・パレンバーグと仲良くなったのをきっかけ
にローリンズ・ストーンズと親しくなりロンドンへと舞い戻った(『ローリン
グ・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター』71年には「(スペシャルではな
い)サンクス」でクレジット)。

 その後、マーロン・ブランドとも親交を深めていくつかの映画を作ろうとす
るも実現せず(ブランドがすぐ「やっぱやめた」とか言ったせい)、一方でケ
ネス・アンガーの映画『ルシファー・ライジング』(72年)にオシリス役で出
演(イシス役は当時のキャメルの彼女)に出演したりと、まさに波乱万丈の人
生を歩む。

 『デモン・シード』以降はU2のビデオをいくつか撮り、そして1995年、長編
では遺作となる『ワイルド・サイド』を監督(フランクリン・ブラウナーとい
う偽名でクレジット)。アン・ヘッシュとジョアン・チェンのレズ・シーンも
話題になった面白そうな映画なのだが、何を隠そう未見なのでたった今amazo
nで注文しました。『デモン・シード』のトリップ映像、「コンピュータのオー
ガズム」は魔術的な場面である。そこでは機械と人間の境界が取り払われ、コ
ンピュータ映像と宇宙の映像が交互に終わりなきエクスタシーを繰り返す。魔
術と関わりを持ち続けたキャメルならではの、錬金術的な意味合いがそこには
含まれていたに違いない。

 ドナルド・キャメルは『ワイルド・サイド』公開の翌年1996年、62歳のとき
にショットガンで自殺した。

 ところが、口に咥えて上顎を撃つ代わりに頭頂部を撃ったため、キャメルは
瀕死の状態で45分間生き続けた。

 その間、キャメルは多幸感に包まれて恍惚としていたという。

 しかも、当時の妻に「鏡を持ってきてくれ、自分が死ぬところを見たいから」
と頼んだというのである。そして鏡を覗き込むと「ボルヘスの写真が見えるか
い?」と聞いたという。これはキャメルが69年にニコラス・ローグと共同監督
した『パフォーマンス/青春の罠』(これも観ていないので注文しなければい
けない……。こうやって観なければいけない映画がどんどんたまっていくので
あった)のセリフの引用だった。キャメルは長年に渡って「死と自殺に取り憑
かれていた」というが、『デモン・シード』のプロテウスも自分の死を自覚し
て、最後には自らシステムをシャットダウンするコンピュータだったのである。

 おっと、「奥さん」「奥さん」と雑に書いてきてしまったが、『デモン・シ
ード』のヒロイン、スーザンを演じたのは『ドクトル・ジバゴ』のララ役や
『赤い影』のローラ役、『華氏451』などで映画史に燦然と輝くジュリー・ク
リスティーでした。

キャメル監督は前述のとおり『パフォーマンス』でニコラス・ローグと一緒に
仕事してるので、そのつてで紹介してもらったのかもしれません。本当のとこ
ろはわかりませんが。

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3. クレイジー質問コーナー

ここは会員の皆さんからの質問にお答えするコーナーです。
もちろん、すべてのご質問に答えるわけではありませんが、できる範囲でやっ
ていきたいと思っています。なお、会員様の良識をぼくは信じております、と
いうことは言っておきます。よろしくお願いします。ヘイルサタン。


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 編集・発行元:高橋ヨシキ
 

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