本気で役立つ深読み時事ニュース 「地理の目」

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┃本気で役立つ深読み時事ニュース 「地理の目」┃【サンプルVol.000】
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瀧波一誠です！
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■目次
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...1. 時事ニュース
...2. 地理コラム
　　▽ＳＵＶ、駐車料金３倍に 住民投票で賛成多数―パリ
　　▽英国への紅茶供給、紅海危機で停滞リスク 食品で初＝業界団体
　　▽中国で春節の帰省ラッシュ本格化、列車増発が過去最多
　　▽バレンタイン前に大忙し、生花輸出大国コロンビア
　　▽伝統の「揚げ浜式」製塩が窮地 地盤隆起、海水くみ上げ困難―再開見通せず・能登地震
...5. SNSでは言えない話
...6. Q&Aコーナー
...7. 編集後記
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■時事ニュース

1.ＳＵＶ、駐車料金３倍に 住民投票で賛成多数―パリ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024020500187&g=int

概要：
- パリ市で大型 SUV などの駐車料金 3 倍引き上げの提案が住民投票で賛成多数で承認された。
- 提案は環境と安全性を考慮し、イダルゴ市長が提案した。
- 投票結果は賛成約 54%、反対 45%で、投票率は 5%台と低かった。
- 重量 1.6 トン以上の内燃機関車やハイブリッド車、2 トン以上の電気自動車が特別料金の対象。
- 市中心部での最初の 1 時間の駐車料金は 18 ユーロ、周辺部は 12 ユーロに値上げされる。
- 市民やタクシー運転手、医療関係者、障害者は料金の引き上げから免除される。

パリ市で行われたちょっと奇妙な住民投票。
自家用車の中でも大型で車重が重い SUV（スポーツ用多目的車）の駐車料金を 3 倍にすることの是非が問われました。

しかし、何故 SUV が目の敵にされたのでしょうか？これには、単なる環境意識の高まりだけではなく、パリの交通事情も関係しています。
パリは、ローマ時代に起源を持つ長い歴史を持つ街です。長年拡大を続け、郊外を中心に建て替えを伴う再開発なども行われていますが、歴史地区の市街地はかつての街並みが保存されているため道路は比較的狭く、入り組んでいるという特徴があります。
一方で、モータリゼーション（自動車社会化）の進行による車両通行量が増加、加えて 2019 年からのコロナ禍で通信販売の利用が大きく伸びたことから、配送車両の通行量も爆発的に増加しました。

その中で、車体の大きいＳＵＶは通行の妨げになりやすく、市民からのヘイトを買っていたという側面があり
ます。
勿論環境意識の高まりも影響しています。
この投票が行われる背景には、ＳＵＶは大型で排気量も多く、ＣＯ２排出量が大きい（そのため、環境負荷が高い車として認識されている）こともあります。
このように、環境負荷の大きい対象に対してより多くの負担を求めるケースとして「環境税」があります。典型例が炭素税です。

また、今回の規制対象になるＳＵＶは、パリ市以外で登録されているものに限られます。
つまり、パリ市の外からのＳＵＶの乗り入れを規制しようという一面もあります。このように、都心部で意図的に道路料金などを値上げし、車を乗り入れさせないようにすることを「環境ロードプライシング」といいます。

今回は駐車料金ですが、これも考え方はロードプライシングに近いものと言えるでしょう。
ちなみに日本でも、首都高速道路などの料金が大きく値上げされており、同じ意図の動きが見られます。
このような環境規制の流れは利便性とのバランスが難しく、今後、先進国でどこまで広まっていくのか注目していく必要があります。


2.英国への紅茶供給、紅海危機で停滞リスク 食品で初＝業界団体
https://jp.reuters.com/world/EWS3FJAF5ZL7JJBM2LIW2URRKY-2024-02-14/

概要：
- 英国のスーパーマーケット業界が、紅海でのフーシ派による船舶攻撃により紅茶供給にリスクがあると警告。
- 英小売協会（BRC）は一部紅茶銘柄の「一時的な供給途絶」を指摘。
- フレーバーティーの供給にも遅れが出ているとの業界筋の発言。
- フーシ派の攻撃による食品供給の遅延が初めて示され、以前には衣料品の遅延警告も。
- 英国は世界第 5 位の紅茶輸入国で、主にケニアとインドから輸入し紅海航路に依存。
- 紅海・スエズ運河ルートの代わりに喜望峰回りを使用すると輸送期間が 10-14 日長くなる。

イギリスと言えば紅茶。かつてはヨーロッパに持ち込まれる茶葉の大半を独占し、それが故にフランスなどはコーヒーを飲むようになったという説もあるほどです。
そんなイギリスを襲った紅茶危機ですが、これには悪化を続けるイエメン情勢が関係しています。
茶は、現在の中国雲南省からチベットが原産と考えられています。高温多雨な気候と水はけの良い土地を好む「照葉樹」と呼ばれる樹種の一つです。類例ではツバキなどが挙げられますが、葉の表面がツヤツヤとしていることが特徴です。

このように、地形や気候にかなり制約を受ける作物であることから、中国南部やインド（ヒマラヤ山麓）、セイロン島（スリランカ）などで古くから栽培が盛んで、イギリスはその茶葉をヨーロッパに持ち込むことで莫大な利益を得ていました。

ちなみに、運んでいる最中に発酵して紅茶になったというのは都市伝説のようなもので、実際には発酵させるお茶は元々アジアで飲まれていました。
ヨーロッパではミネラル分が多い硬水が主なため、無発酵の緑茶では渋みが強く出てしまうことから、完全発酵茶の紅茶が飲まれるようになったというのが正しいようです。
また、その後アフリカなどでも生産が増え、特にケニア（世界 3 位）、アルゼンチン（4 位）の生産量の伸びは目覚ましいものがあります。
さて、そして今回の危機ですが、アジアからヨーロッパに向かう主要海運ルートであるアデン湾→紅海→スエズ運河というルートを通るリスクが急上昇していることが原因です。

アラビア半島南西部のイエメンでは、2015 年から始まったイエメン政府と反政府勢力（フーシ派）、そして「アラビア半島のアルカイダ」の一派による内戦が続いています。イエメン政府（スンナ派）とフーシ派（シーア派）の宗教対立の様相も帯びており、周辺諸国も巻き込んで長期化、人口の 7 割近くが故郷を追われるという
異常事態に陥っています。

また、特にフーシ派はイランと関係が近く、欧米（やそれらと関係が深いイスラエル）を敵視する傾向が強く、イスラエルによるパレスチナ自治区（ガザ地区）に対する攻撃に反発を強め、紅海を通過する船舶に対する攻撃を加えたことなどからアメリカがフーシ派拠点を空爆。
紛争や船舶への攻撃激化の懸念から、スエズ運河を通るルートを避ける船舶が増え、スエズ運河の通行量が減少しています。
しかし、そうなるとアフリカ大陸最南端を経由する他なく、時間が 10 日以上長くかかるなど、海運の流通網に多大な影響が出ることは間違いありません。茶の問題だけではなく機械や自動車、エネルギー資源などの輸送にも影響が出かねず、コロナ禍から立ち直ったばかりの国際流通網の新たなリスクとして警戒が強まっています。

3.中国で春節の帰省ラッシュ本格化、列車増発が過去最多
https://jp.reuters.com/world/china/YQBNSOCXJBO7FNFM3NS2MMWWOY-2024-02-09/

概要：
- 寒波の影響で移動への懸念がある中、当局は交通機関の運行本数を増やして対応。
- 鉄道網で 1 日あたり約 1873 本の運行が追加され、過去最多を記録。
- 7 日の鉄道利用者数は 1310 万人に達し、春節の移動期間で初めて 1 日の利用者が 1300 万人を超える。
- 上海では 9 日の鉄道利用者数が 47 万 5000 人となり、2019 年同期比で 61.7%増。
- 雪や凍結による交通混乱と停電で、一部の乗客が列車内に何時間も閉じ込められる事態が発生。

中国の旧正月にあたる「春節」。
アジア地域では太陽暦（太陽の運行に基づく）による新年より、太陰暦（月の運行に基づく）に基づく新年の方が重視されてきました。
現在でも中国や、中国系の住民が 75％を占め、「セカンドチャイナ」の異名を持つシンガポールをはじめ 12 カ国では、春節に合わせて数日間の祝日が設定されています。
ちなみに、アジアで初めて太陽暦を採用したのは日本（明治 5 年（1872）11 月 9 日）でしたが、農業従事者などは古くからの暦を用いて農作業のスケジュールを管理していたため、旧暦（太陰暦）を実際には長らく使い続けていたと言われています。
中国では現在でも春節の時期には盛大な祝賀行事や帰省ラッシュが定番となっています。また、まとまった休暇であることからそれを利用して旅行に行くケースも多く、それらがすべて重なる春節の時期には桁違いの人数の大移動が発生します。

現在では中国の総人口が 14 億人ほどに対して、春節の前後合わせて 40 日間の旅行者数は延べ 20 億人を超えていると言われています。
このように旅行者数が急増した理由の一つは、1980 年代からドン・シャオピン （とうしょうへい）政権下で始まった「改革開放政策」です。
それにより、これまで固定化されていた農村人口と都市人口が流動化し、特に都市部の工業化により農村人口が都市に流入、春節には規制するという流れが生まれました。
また、経済の発展により可処分所得が増えたこと、国内の鉄道・航空・道路交通網（特に鉄道）の整備が進んだことで、旅行が容易になったという背景もあります。
2021 年現在の統計では、旅客輸送は 2 位の日本の 5 倍近い輸送量で圧倒的首位、貨物は 2 位ロシア、3 位アメリカ合衆国を抑えてやはり首位となっています。

2007 年以降導入が進められている高速鉄道（リニアも含む）も整備が進められていますが、これらも含め、日本などのように都市の近郊を網の目のように結ぶ鉄道ではなく、長距離の都市間鉄道が主体になっています。
ちなみに、鉄道輸送は高速性には劣るものの、大量かつ安価に輸送可能（船舶と似ている）という特性があり
ます。

アメリカやロシア、カナダ、中国など、国土面積が広く内陸に資源地帯を抱える国は、その輸送のために貨物輸送の割合が多く、日本や韓国、台湾、ヨーロッパ諸国のように国土面性が大きくない国は旅客輸送が多くなる傾向があります。
ただ、敷設や維持コストが高く、テロの危険性もあることから治安が悪い国では維持が難しいため、大規模な鉄道網を持つ国は実は限られています。
中国の春節における（主に鉄道による）人口大移動は、中国の発展を表す一つの象徴と言えます。

4.バレンタイン前に大忙し、生花輸出大国コロンビア
https://www.afpbb.com/articles/-/3504493

概要：
- 南米コロンビアは世界有数の生花輸出国である。
- 2 月 14 日のバレンタインデーに向けて、世界各国への花の出荷作業が行われている。
- 首都ボゴタ郊外のボハカでは、色とりどりのバラの出荷作業が進行中。
- ボゴタのエルドラド国際空港では、検疫作業と麻薬探知犬による違法薬物の取り締まりが行われてい

バレンタインデーにチョコをあげる習慣は、日本では 1960 年頃に始まったと言われています。
意外に最近のお話ですが、大元は3世紀のローマ帝国の司祭ウァレンティヌス（ヴァレンタイン）の処刑日に行われていたイベントでした。
ウァレンティヌスは当時、兵士の士気を下げると考えられたことから、兵士の結婚を禁じていたローマ皇帝クラウディウス 2 世に反逆し、兵士となる若者の結婚を秘密裏に執り行っていたことから処刑された人物とされます（これについては脚色されたもので、彼が奇跡を起こして視力を回復させた看守の娘に、殉教直前にカードを贈ったことが始まりとする説もあります）。

いずれにせよ、このような背景から 14 世紀頃にはバレンタインデーが愛のイベントとして定着したという経緯があります。
ちなみに、日本では「チョコをあげる」のが定番になっていますが、これは日本独特のルールです。1960 年頃、チョコレート業界の広告戦略でそのようなイベントとして定着。さらに「ホワイトデー」は、お菓子メーカーが日本人の「お返し」の習慣に目を付けて「お返しにお菓子を贈ろう」と宣伝したことが始まりで、こちらは完全に日本独特の習慣です（現在は主にアジア圏で認知されるイベントになっています）。

海外では、日本のようにチョコレート一辺倒ではなく、生花やお菓子、小物など様々なものをプレゼントする習慣があります。
また、日本とは逆に男性から女性に贈るケースが多く、日本で「逆チョコ」と呼ばれる習慣が実はスタンダードだったりします。
今回のニュースは、そういった生花を贈る一大イベントであるコロンビアで、生花輸出が最盛期を迎えているというものです。
そもそも生花の栽培は、単価の高い生花や果実類などを栽培する「園芸農業」と呼ばれる農業形態の一種です。この園芸農業が成り立つ条件は、

1・近くに（主に可処分所得の多い先進国の）大消費地を抱える
2・気候が温暖である（生花や果実類は温暖な気候を好むものが多い）

等が挙げられます。

そのため、代表的な例としてはアメリカ合衆国のフロリダ州、ヨーロッパならオランダなどが挙げられます。
オランダ、アムステルダムには世界最大の花市場、アールスメール花市場があります。
また、輸送技術の発達により遠隔地で気候的に栽培に適する地域でも園芸農業がおこなわれるようになりました。
例えば記事にあるコロンビア（主にアメリカ向け）、他にはケニア（ヨーロッパ向け）などが挙げられます。
ちなみに日本は国内での自動車輸送網が発達しているため、大都市の遠隔地でも園芸農業を行うことが可能で、ビニールハウスで温度等をコントロールした施設園芸農業が盛んに行われています。

コロンビアは麻薬カルテルが幅を利かせており、世界最大のコカイン生産国という不名誉な座に君臨し続けていますが、2022 年には元左翼ゲリラ出身のグスタボ・ペトロ氏が大統領に就任、左派政権が誕生しました。
貧困対策などに取り組む姿勢を見せており、コロンビアは注目の国の一つと言えるでしょう。

5.伝統の「揚げ浜式」製塩が窮地 地盤隆起、海水くみ上げ困難―再開見通せず・能登地震
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024021000138&g=soc

概要
- 石川県珠洲市で能登半島地震により伝統の「揚げ浜式」塩作りが窮地に。
- 地震による地盤の隆起で海水のくみ上げが困難になり、断水で工場の掃除もできない状態。
- 事業者と市の商工会議所は、再開の見通しが立たず、産業としての未来に危機感。
- 揚げ浜式製塩は国の重要無形民俗文化財に指定されており、珠洲市で少数の事業者が継承。
- 従業員は避難所生活を余儀なくされ、交通状況の悪化で仕事への通勤も困難。
-今後の支援も不確定な状況で、廃業する事業者が出る恐れもあり。

2024 年 1 月 1 日に発生した能登地震、まだ記憶が生々しい方も多いのではないでしょうか。未だ被災地は困難な状況にあり、余震も続いている状況です。そして、能登地方の各産業の被害状況も明らかになる中、輪島漆器や酒造などと共に危機に瀕しているのが、この地方で300年以上続く「揚げ浜式塩田」による製塩業です。

人間にとって必要不可欠な塩。その歴史は長く、ローマ時代には兵士の給料が塩で（正確には塩を買うための名目の銀貨、或いは併用されたとも）支払われていたことも知られています。

英語の「salary（給料）」の語源が、ラテン語の「salarium（塩代）」であることからも、塩が当時、貨幣と同じくらい重要視されていたことが伺えます。
その確保は国としても最重要事項の一つで、日本でも古くから製塩は各地で行われてきました。当初は海藻を煮込んで塩水を作るなどの方法が取られていましたが、平安時代頃から行われるようになった、より効率的な製塩法が「揚げ浜式製塩」です。
「塩田」と呼ばれる砂が敷き詰められた場所に海水を汲み揚げることから「揚げ浜式」と呼ばれています。塩田となっている砂浜に海水を播き、塩の結晶がついた砂（かん砂）を作り、集めたかん砂に海水を注いで濃い海水（かん水）を作り、かん水から不純物を濾過、煮詰める、灰汁を取る工程を経て塩が作られます。

海に囲まれた日本ではこの方法で海塩を得る方法が一般的で、その後、中世から近世にかけて土木工事で潮の満ち引きを使って塩田に海水を引き込む「入浜式塩田」、さらに傾斜をつけた粘土盤の上に海水を流し、かん水を作る「流下式塩田」、そして、イオンの性質を利用して海水中の塩化ナトリウムのみを集める「イオン交換膜
電気透析法」が用いられるようになりました。

ただ、イオン交換膜電気透析法を用いた塩はミネラル分が除去されたものだった（旧専売公社の「食塩（並塩）」など）ことから、マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラル分を含んだものを塩とすべきとする消費者運動グループが署名運動を展開、ミネラルを含む自然塩の製造流通が 1973 年に認められました。

今回被災した石川県珠洲市で行われていた伝統的な揚げ浜式の製塩ですが、今回の地震で大きく地盤が隆起、結果として海岸線が大きく後退してしまいました。幅 90 kmに渡り、隆起は最大 3m、海岸は最大で 240m も後退した場所があります。

珠洲市も大きな影響を受け、塩田に海水を入れることができないなど、塩田としての機能を喪失、再建の目途が立たない状況になっています。
この地震は 1000 年に一度の規模と言われていますが、東日本大震災も 1000 年に一度の大地震でした。今の日本列島では、1000 年に一度クラスの地震が連発する活動期に入っていると言えるでしょう。

■今週のコラム

私達の生活に不可欠な塩ですが、実は日本で一般的に「塩」と聞いてイメージする海塩は世界の塩生産で見ると実は少数派です。
割合で見ると、岩塩が 7 割、海塩が 3 割ほどで、圧倒的に岩塩の方が優勢です。これは、世界で私達が食べている「うるち米（ジャポニカ）」は米全体では 2 割ほどの生産量しかなく、最も生産量が多いのは細長くてパラパラした「インディカ米」だったりします。
意外に、日本では普通に出回っているものでも海外では珍しいという
ケースは存在します。

ところで、岩塩は太古の海水が何らかの理由で陸に閉じ込められたり、塩湖が長い年月をかけて結晶化したものです。
このような岩塩は、「岩塩鉱床」として掘り出すものなので、生産品目として「鉱産物」になります。

一方で海塩は、海水から作り出しているので「海産物」の扱いになっています。
また、「日本産」の「伯方の塩」は、実は大半は日本の塩ではないことはご存知でしょうか？
正確には、オーストラリアやメキシコ産の塩を、沖縄の海水に溶かしてかん水を作り、塩を作っています。
これは産地偽装というわけではなく、「その商品の内容について実質的な変更が行われた国を原産国とする」という農林水産省のガイドラインに従ったもので、パッケージにもきちんとメキシコやオーストラリアの塩を使っている旨は記載されています。

そして、先述の「伝統の「揚げ浜式」製塩が窮地」の記事でも書いた、1973 年の「自然塩の製造流通の許可」の際に、「国がメキシコやオーストラリアから輸入していた「原塩（天日塩田塩）」を利用すること。
海水から直接塩をつくってはいけない」という取り決めがあったことから生まれたのが「伯方の塩」だったのです。

また、オーストラリアやメキシコで作られるのは「天日塩（燃料を使わず、天日で作られた塩）」です。
製塩には、かん水を煮詰めるために莫大な燃料を必要とします。しかし、天日塩を使えばその燃料は使われず、製造に伴う CO2 排出量が減ることになります。

つまり、伯方の塩は、現在で言う「SDGs に対する取り組み」を先取りした製品であるとも言えます。また、天日塩は天日であるがゆえに、稀に不純物が混入しているケースもあり、日本でかん水に加工して製塩することでそれらを除去し、高品質で環境負荷が低く、安価な塩を提供できるというメリットもありました。
このように、身近な塩ひとつをとっても、色々な話が出てきます。身近な商品からその背景を探ってみるのも面白いかもしれません。
是非、買い物に行った際に色々な商品の説明書きを読んでみてください。

■SNSでは言えない話

SNSでは言えない地理に関するネタを取り上げていきます。

■Q&Aコーナー

Q&Aコーナーです。
読者からの質問に真摯に毎週答えます。

■編集後記

近況やお知らせ、小話を取り上げていきます。


現状はこのようなラインナップですが、型にとらわれずに柔軟に毎週変えていこうと思います。
毎週、みなさんにメルマガをお届けできることを大変楽しみにしております。