【 AI News Update（ワールド） 】

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　AI News Update（ワールド） vol. xxx

　（2024年4月21日発行）

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このメールマガジンは、アメリカ在住で2008年頃から自然言語処理のプロジェクトに携わってきた筆者が、
日々発表されるAI関連のニュースをどういう視点から見ると理解が進むのか、また、裏ではどういうことが起こっているのか、
など、ニュースを見ているだけではわからない業界の状況を主観たっぷりに解説していきます。

毎月第2、第4金曜日にお届けします。

別途運営しているブログでは、海外のAIに関するニュースで気になったものをピックアップしていますので
そちらも併せてみてみてください。「AI News Update」


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■目次
….1. 近況 ＜Recent Trends＞
….2. 用語解説 ＜AI Simplified＞
….3. AI企業ピックアップ ＜The Rising Stars＞
….4. AI業界に強いVC ＜Top VCs Betting Big on AI＞

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■＜1）近況：Recent Trends＞
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サンフランシスコのダウンタウンが復活の兆しを見せ始めています。

近年、特にサンフランシスコのダウンタウンは、異常な家賃高騰によるホームレスの激増や、危険ドラッグの蔓延、警察官の不足などにより、治安が非常に悪化してきました。今でも特定のエリア・ストリートは非常に危険です。

そうしたダウンタウンの状況を見た人や、撮影するYoutuberなどは「サンフランシスコは終わった」と口々に言っていましたし、今でもそういう論調で報じられることが多いです。

ただし、状況は確実に変わってきています。

メインの理由はAIブームです。
2022年11月にChatGPTがリリースされ、AIの持つポテンシャルに一般の人も初めて触れることができ、その能力の高さに一様に驚きました。
2023年はその驚きから、AI関連サービスを提供する企業に投資が殺到。数々のスタートアップが立ち上がり、2024年に入って、その傾向に拍車がかかっています。

そうしたブームの中心になっている主要な企業は狭いサンフランシスコ市内にひしめき合っています。OpenAIやAnthropic、PerplexityといったAI企業の本社はサンフランシスコ市内にあり、その周辺では数多くのスタートアップが起業しています。
わずか数マイル圏内に主要なAI企業が密集し、週末前には様々なところでピザとビールを囲む”meetup event”が開かれています。そうしたイベントには有名AI企業のエンジニアや起業家、投資家などが集まってアイディア交換を行い、非常な活況を呈しています。
そうした人々のリアルな場での交流から生まれる「熱」が新たなブームを牽引しているのです。

サンフランシスコは確実に復活してきています。
2024年の今に至って「終わった」と言い合うのはもう古い、と言えるかもしれません。



■＜2）用語解説：AI Simplified ＞
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ここでは、日々のニュースで出てくる概念やテクノロジーなどを取り上げて解説していきます。

今回取り上げるトピックは「フェアユース」です。

AI技術の発展に伴い、AIの学習に必要なトレーニングデータをどのように確保するかという問題が注目を集めています。現状、大方の意見は、データを購入するなどの合法的な方法で取得すべきだと主張していますが、一部のAI企業は「フェアユース」の概念を根拠に、この主張に反対しています。

そもそも「フェアユース」とは何でしょうか。

これは米国法の原則で、一定の条件下において、著作権者の許可なく著作物を限定的に使用することを認めるものです。著作権者の利益と公共の利益のバランスを取ることが目的とされています。

AIのトレーニングデータとして著作物を使用する場合、それがフェアユースに該当するかどうかは、ケースバイケースで判断されます。

非営利目的や教育目的であれば、フェアユースと見なされる可能性が高まります。また、元の作品に新しい意味やメッセージを加えた「変換的使用」や、元の作品の本質的な部分を使用していない場合も、フェアユースの適用が検討されます。
一方で、AIが生成するコンテンツが元の著作物に酷似している場合は、フェアユースの範囲を超えていると判断される可能性があります。

具体例を考えてみましょう。
例えば、ChatGPTのようなAIチャットの場合、多くの書籍や雑誌から学習した一般的かつ公知の知識を回答に用いる場合、個々の著作物の割合は小さくなるでしょう。このような場合、フェアユースの主張には一定の説得力がありそうです。
しかし、ある新聞社だけが報じた独占記事の内容をAIが回答に使用した場合は、フェアユースの範囲を超えてくる可能性があります。

同様に、Midjourneyのような画像生成AIが、ある画家の画風を模倣しつつも新しいテーマの画像を生成する場合は、フェアユースと見なされる可能性はありますが、極めて類似した画像を生成した場合は、フェアユースの範囲外だと判断されるかもしれません。

このように、ケースバイケースで考えていくと、どの範囲までがフェアユースと言えるのか、主張が対立する余地がありそうに思えます。

次回は、より具体的に理解するために、これまでフェアユースが争点となった裁判事例を見ていきたいと思います。



■＜3）AI企業ピックアップ：The Rising Stars＞
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AI企業はまだファンディングステージで言えば、シードやシリーズA段階の企業が多く、多くの注目企業はこれからIPOに向かっていきます。そうした企業はプライベートのため、あまり正確な情報は公開されていないことが多いですが、今後IPOに向けて注目の企業を毎回取り上げて、できるかぎり解説を加えていきたいと思います。

今回取り上げる企業は、「Cohere」です。

1）企業概要
Cohereは、2019年にカナダのトロントで創業されたAI企業です。創業者は、Aidan Gomez（現CEO）、Nick Frosst、Ivan Zhangの3名です。彼らは以前Google Brainで働いており、初期の取り組みに深く関わっていました。特にAidan GomezはGoogle在籍時に、言語モデルの重要な技術基盤である「Transformer」を発明した研究論文の共著者でもあります。現在、Cohereはトロントの本社に加え、サンフランシスコ、ロンドン、ニューヨークにもオフィスを構えており、社員数は約550人に上ります。

2）事業内容
Cohereの主な事業は、まずは独自の高性能なLLM（Large Language Model）である「Command-R±」の開発です。このLLMはオープンソースでAIコミュニティに公開されており、それ単体では収益を産んでいなそうですが、このLLMと企業内の情報を接続したBtoBサービスを提供しています。このサービスがCohereの主要な収益源となっています。Cohereは、顧客企業のニーズに合わせてLLMをカスタマイズし、企業内のデータと統合することで、各企業に特化したAIソリューションを提供しているのです。

3）ファンディング
Cohereは設立以来、複数のファンディングラウンドを経て急成長を遂げています。2024年3月31日時点での調達額は、4億3500万ドル（約673億円）

＞シリーズA
2021年9月のシリーズAラウンドでは、Index Venturesがリードインベスターとなり、Radical Ventures、Geoffrey Hinton、Fei-Fei Li、Pieter Abbeel、Raquel Urtasunなどの著名なAI専門家も参加し、4000万ドル（約62億円）を調達しました。

＞シリーズB
2022年2月のシリーズBラウンドでは、Tiger Globalがリードインベスターとなり、1億2500万ドル（約193億円）を調達しました。

＞シリーズC
2023年6月のシリーズCラウンドでは、Inovia Capitalがリードし、Nvidia、Oracle、Salesforce Ventures、DTCP、Mirae Asset、Schroders Capital、SentinelOne、Thomvest Ventures、Index Venturesが参加し、2億7000万ドル（約417億円）を調達しました。このラウンドでのCohereの企業評価額は22億ドル（約3400億円）に達しています。

＞進行中の資金調達
2024年3月時点で、Cohereは新たなファンディングラウンドを計画しており、目標調達額は5億ドルから10億ドル、目標企業評価額は50億ドル（約773億円）とされています。既存の投資家が最新のファンディングラウンドに参加する可能性があるとのことです。

4）売り上げ規模と収益の源泉
Cohereの売上は急速に伸びており、2023年には8500万ドル（約131億円）に達しました。これは2022年12月時点の1300万ドル（約20億円）から大幅な増加を示しています。Cohereの主な収益源は、独自のLLMを顧客企業に合わせてカスタマイズし、企業内のデータと統合するBtoBサービスです。Cohereは、Oracle、Accenture、Salesforceなどの大手企業と提携し、これらの企業の顧客にAIソリューションを提供することで、収益を拡大しています。Cohereの技術力と、大手企業とのパートナーシップにより、今後もさらなる成長が期待されています。



■＜AIに強いVCピックアップ： Top VCs Betting Big on AI＞
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同様に、AI企業の投資に強いVC（ベンチャーキャピタル）についても取り上げていきます。

今回取り上げるVCは、「IVP（Institutional Venture Partners）」です。

1）VCの基本情報
IVPは、1980年に設立されたシリコンバレーの老舗ベンチャーキャピタルです。本社は、スタンフォード大学に近いカリフォルニア州メンローパークにあります。IVPの主なジェネラルパートナー（GP）は、Somesh Dash、Steve Harrick、Eric Liaw、Tom Loverro、Ajay Vasheeなどで、これらのパートナーは経験豊富な投資家で、それぞれ特定のセクターに特化した投資を行っています。

2）VCの投資戦略概要
IVPは、主に成長段階にあるスタートアップに焦点を当てた投資を行っており、その投資対象はアプリケーションSaaS、エンタープライズインフラ、AI、フィンテック、デジタルヘルス、ゲーミング、コンシューマーインターネットなど多岐にわたります。地理的なフォーカスは、主に北米、ヨーロッパ、イスラエルを中心に投資を行っています。

また、投資先企業に対しては、各種の戦略的な支援を提供しており、財務、採用、ボードマネジメント、コミュニケーション、資金調達、製品管理、成長戦略などの面でサポートを行っています。

3）ファンド詳細
IVPが現在運用しているのは、第18号ファンド（IVP XVIII）です。このファンドの運用資金の規模は、13億ドルから15億ドル（約2000〜2300億円）のリミテッドパートナー（LP）のコミットメントがあります。
18号ファンドの主なLPとしては、カリフォルニア州教員退職年金基金などが知られていますが、詳細な情報は公開されていません。

IVPは、これまでに400社以上のスタートアップに投資を行い、そのうち130社以上がIPOを達成するなどの成功を収めています。過去の投資先企業には、Twitter、Netflix、Slack、Snap、Uber、Github、Dropboxなどの著名なスタートアップが含まれています。

過去のファンド（IVP XIV）では70%以上の純内部収益率（IRR：Internal Rate of Return）を記録しており、現在運用中の18号ファンド（IVP XVIII）では25%のネットIRRと2.5倍のネットMOIC（Multiple on Invested Capital）を目標としています。

4）AIへの投資
IVPは、AI分野への投資に積極的で、ディープラーニング、自然言語処理、計算能力、生成AIの進歩により、AIが次世代の生産性向上の原動力になると考えています。

一例として、Perplexity AIやShield AI、Freenomeなどのスタートアップに投資を行っています。
特にPerplexity AIへの投資では、IVPがシリーズBラウンドをリードし、同社の評価額を約5億2000万ドル（約800億円）に引き上げるなど、AI分野での大型投資を実行しています。
また、サンフランシスコを拠点とするAIインフラの会社、Basetenへの投資では、IVPとスパークキャピタルが主導したシリーズBラウンドで4000万ドル（約60億円）を調達するなど、AI分野に特化した資金調達活動を積極的に行っています。

5）その他
IVPの組織文化としては、分散された信頼の文化を持ち、ジュニア投資家も自由に意見を表明できる環境が整っています。このような文化のもと、IVPは今後もAIを含む有望なスタートアップへの投資を続け、技術革新を支援していくことが期待されます。



■＜Q&A＞
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皆様からのQ&Aをお受けしています。
ご質問のある方は下記からお問い合わせください。

お問い合わせ：
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　編集/発行元：　AI News Update編集部　

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