
渡辺真由子の週刊メディリテ! - まぐスぺインタビュー
テレビ局に入ろうと思ったきっかけを教えてください。
大学3年生の時にオーストラリアに1年間留学したのですが、日本との価値観の違いに驚いたんです。
あちらの女子大生は、キャンパスを歩くにしてもTシャツに短パンでノーメイク、一人でどこにでも行っちゃうし意見もはっきり言う。すごく自分を持っている感じでした。
ところが日本に帰ってくると、通っていた大学の女子大生はみんなが同じような厚化粧をして、ミニスカートとハイヒールでキャンパスに来るんです。私も留学前は、マニキュアを塗らないまま人に会うことには不安を感じましたし、ダイエットにも明け暮れたので、気持ちは良くわかるのですが。日本では、周りの人と群れて行動を合わせたり、自己主張を控えたりすることを良しとする風潮がある。「何だか窮屈だな」と感じました。
その時、日本も「自分らしくのびのび生きられる社会」にした方がいいと思いました。そのような価値観を広げていくにはどうすればいいかを考え、初めに浮かんだのが、心理カウンセラーになることだったんです。ちょうど心理学を専攻していましたので。
けれどもそれでは悩んでいる人と1対1になるので、発信相手が少なく、日本中に新たな価値観を広げるには非常に時間がかかってしまう。だったら、1対マスで一気にメッセージを伝えられる方法を取ればいい、それならばテレビ局かなと。マスメディアは人々の意識に与える影響が非常に大きいので、「その影響力をいい方向に使おうよ」というのは、今も常に心掛けていることです。
そのようなわけでテレビ局に入り、希望して報道の部署に配属されました。
そんなテレビ局を退社して、独立に踏み切れた理由は?
実際に自分が報道記者やディレクターとして、ニュースやドキュメンタリーを作り始めたら、メディアの情報というのは作り手側の意図でかなりコントロールできてしまうということが分かったんです。これはすごく怖いことだと思いました。
私自身が若かったということもあって、若者や子どもの取材をする機会が多かったのですが、彼らの多くが「いじめ」や「性交渉」に関する問題で悩んでいました。いじめに関して言えば、メディアが作っているお笑い番組からヒントを得て友達をからかってしまったり、性の問題で言えば、やはりメディアが流すいい加減な避妊情報を真に受けてしまって、「避妊しなくてもいいや」と突っ走り、結果後悔してしまったり。そういう事例を目の当たりにして、これは作り手側としてどうにかしなければいけないなと思ったんです。
ただ、テレビ局にいると、そういうテーマってあんまり扱えないんですよ。ですから、追求するには独立するしかなかったんです。
その後、大手出版社から著作を出されたりと活躍されてきたわけですが、メルマガはどのような経緯で始められたのですか?
私のメルマガは、女性と男性の「性コミュニケーション」に生じるズレを、メディア・リテラシー(メディアの情報を批判的に読み解くこと)の観点から分析しています。性交渉で彼氏に言いたいことを言えない、彼女の望むことが良くわからない、といった若者の赤裸々な生の声を伝え、「性意識や性行動にメディアが与える影響」についてアンケート結果も公開しています。
きっかけは、大手出版社からの「メディアの性情報を分析してくれ」という依頼でした。グラビア系週刊誌やアダルトビデオなどがどのような性情報を発信してきたかについて、歴史をまとめたり、内容を批評したりしてほしいと。
その時私は、こうしたメディアからの性情報が、現実の性行動にどう反映されているのかに興味を持ちまして、大学で教えていたこともあり学生たちに取材してみました。そこで分かったのは、彼ら彼女らはメディアの性情報を丸呑みしていて、モロに影響を受けているということだったんです。ポルノが「性の教科書」と化している。これはぜひ本に盛り込みたいと思い出版社の担当に話したら、「メディアの影響がそこまで大きいっていうのを出してもらうのは困る」と。
大手出版社っていうのは、週刊誌も出していれば写真集も作っているわけですから、そういったものが若者に直接的に影響を与えてしまっているという現実を公にしてしまうのは、あまり望ましくないということなんですね。
そうなるとこの内容で本は出せないなぁと思って、ほかにどういった形があるのかと考えている時に、ちょうどまぐまぐさんのメルマガというスタイルをみつけ、これがピッタリだ、と思いました。
メルマガを始めてよかった点について教えてください。
メルマガのいいところっていうのは、編集者が入らないっていうことですよね。マスメディアでは扱いづらい内容も出せる。今、私がメルマガでやっていることは、メディアのタブーに切り込んでいる部分ですから、これは今後も続けていきたいと思っています。
私が扱っている「性とメディアの関係」は、社会的に物議をかもすような、かなり際どいテーマです。それでも読者の方から、しかも男性から「自分がこれまでしてきた性行為が、女性の気持ちとズレていたことが分かって、身につまされた」「自分の体験を読んでいるようで面白い」なんていう反応をいただいた時はうれしかったですね。
メルマガを書く上で、気を付けていることがあったら教えてください。
伝え方として、「今どきの若者は」みたいな論調にはしないということです。
人間、生まれた時は白紙の状態であって、20年くらい生きる間にいろいろな価値観を身につけてくるわけですけれど、彼ら、彼女らが触れる価値観っていうのは、これまでの大人たちが作ったものだと思うんです。ですから、若者の性意識や性行動を批判するのではなくて、むしろ若者の悩みに寄り添いながら、その背景にあるメディアの問題をえぐる、というスタンスでやってきています。
どんな人に読んでもらいたいですか?
メディアの情報を鵜呑みにしたくないと思っている人。そういう問題意識を持っている人ですね。今現在のメルマガのテーマで言えば、「性」に関するコミュニケーションに悩んでいる方には、皆さん読んでほしいと思っています。「悩んでいるのは私だけじゃない」「オレの性行動はカン違いだったかも」などと共感してもらえれば幸いです。お互いのズレの背景にメディアが存在していることを認識すれば、今後の性コミュニケーションがメディアの情報に左右されることも少なくなるでしょう。それこそが「メディアの性情報に対するリテラシーを身に着けてもらう」という本メルマガの最終目標です。
性教育に携わる教員の方や、我が子の性意識・性行動を知りたい保護者の方にも、大いに役立つでしょう。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
これを読めば、いまの若者がどんなポルノメディアを見て、どんな性行為をして、どんな悩みを持っているかがわかります。IT革命と共に、子どもが性情報を仕入れる過程は大きく変わりました。メディアの性情報のあり方、ひいては「性教育」のあり方にも議論を呼び起こす内容です。
また最近、独立した経緯に関してお問い合わせを頂くことが多いので、今後は「挑戦する生き方」について思うところを述べていく予定です。自分の人生を模索する方は、ご期待下さい。
渡辺真由子さんプロフィール
メディア学者&ジャーナリスト。政策・メディア博士。慶応大学SFC研究所上席所員。子どもの「性」や「いじめ」、男女共同参画を、メディア・リテラシーの観点から執筆・講演。新聞やテレビでコメンテーターを務める。著書に『性情報リテラシー』、『大人が知らない ネットいじめの真実』ほか多数。ネットには載せていない特別な情報を、あなたのためにお届けします。珈琲でも飲みながら、ゆったりと上質な「知の時間」をお過ごしください。





