分岐する未来～『1Q84』は近未来予言小説である

世界情勢が混沌とし、明日の行方すらわからなくなっている現代。
世界はどのように推移し、どのように変貌していくのだろうか。

インターネットの発達により、世の中がボーダーレス化し、世界が１つになっていくようにも見えるし、その逆に世界が右傾化し、民族主義的・セクト主義的になっているようにも思える。
はたして、そのどちらがより真実の状況に近いのであろうか。

たとえば、原発問題。
親原発派と脱原発派とが鋭く対立し、両者の間の溝は容易に埋まらないように見える。
はたして、親原発派と脱原発派の間に妥協点は見いだしうるのであろうか。

しかし、である。
もし、両者がこれから少しずつ分化していくとしたら、どうであろうか。
「パラレルワールド？何をSFみたいなことを言っているのだ？」と思われるだろうか。

パラレルワールド（平行世界）は、初めSF小説の世界で提唱された考え方だが、今では物理科学の世界で真剣に議論されている概念である。
つまり、我々の地球と同じような世界が無限個存在していて、そのなかには我々と全く同じような世界もあれば、我々よりも進化した世界も存在し（ということは、我々よりも「退化」した世界も存在するということ）、そのバリエーションはおよそ考えうる限り無数に存在する、という考えである。
この考えには、それを裏付ける物理的証拠が全くない。
しかし、それを反証する証拠も全くない。
だから、私の自説をもう少し聞いてほしい。

村上春樹の『1Q84』という小説がある。
今や「泣く子も黙る」春樹だが、彼のこの小説にもパラレルワールドという考えがモチーフになっている。
主人公の青豆がある時ふと、警察官の制服が以前と違っていることに気付く。
利発で思慮深い青豆のことだから、警官の制服が変わったのならニュースなどで気付いているはずだが、そのニュースを目にした記憶がない。
青豆はその気付きを分岐点として、パラレルワールドに突入していく、というのが非常にざっくりとしたストーリーだ。

実は、私にも青豆に似たパラレルワールドを経験したことがある。
去年（2013年）の8月に東京で最低気温が初めて30度を越えたというニュースが報道された。
しかし、それよりも3～4年前に東京で30度を越えたという報道を私はテレビで目にしたのだ。
その時は「超熱帯夜」という表現でわりと大々的に報道されたし、日本も本格的に温暖化が進んでいるなぁと思ったのを確かに記憶している。
なのに、去年初めて最低気温が30度を越えたという報道を聞いて、私は首を傾げざるを得なかった。
試しに親やまわりの人に、以前30度を越えなかったかと聞いたが、いや、今回が初めてだとみんな口を揃えて言った。
私はパラレルワールドに入り込んでしまったのだろうか。

このようにパラレルワールドの存在は私には腑に落ちるし、実感のできる現象だ。
もし、私や物理学者が言うように、パラレルワールドが存在するのが事実だとすれば、これから世界は親原発派には親原発派の、脱原発派には脱原発派のコロニー（集団）ができあがって少しずつ分化していくことになる。
つまり、自分が一番信じている信念にしたがって、世界は枝分かれしていくのだ。
そう聞いて、あなたは喜ぶだろうか、それとも恐れるだろうか。
私はそのような世界になっていくと聞くと、とてもワクワクする。
なぜなら、そのような世界になっていくということは、自分の思い通りのシナリオが描けるということと同義だからだ。
もちろん、今言ったことは私の考えであって、1つの仮説である。
パラレルワールドなんてものは存在しないし、そんなものは完全なファンタジーだと切り捨てる人もいるかもしれない。
しかし、私に言わせれば、そういうことを言う人は私と相容れない考えをしているのだから、私とは違う現実にこれから進むことになる。
どのような世界に進もうと、結局はすべて自分自身なのだ。

あなたはどんなシナリオを思い描きますか？

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