金融制度改革を先読みする『市場政策レポート』（メルマガ版）※主要審議会を詳報

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金融政策レポート（メルマガ版）／vol.1※サンプル号
今号のトピック：第14回金融審議会市場制度ワーキング・グループ(2022/1/21開催)
PTS売買高上限見直し、賛同相次ぐ／証券トークン取引「完結性」求める／東証の代替市場接続案が浮上
コンテンツ1.注目論点解説（「ここに注目！」）2.発言ハイライト
（制作：任意団体ブルーベル）
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　金融庁設置の会議体における主な議論の模様を、当局による議事録公表に先駆けて速報、解説する金融政策レポート。
　今回は、私設取引システム（PTS）運営の規制緩和や東京証券取引所の非常時対応などをめぐり意見が交わされた、第14回金融審議会市場制度ワーキング・グループについて詳報する。

【ここに注目！】
1「売買高上限見直し、賛同相次ぐ」
2「証券トークン取引『完結性』を」
3「東証、取引停止時の代替市場接続案が浮上」

【概要】
　金融庁は21日、金融審議会市場制度ワーキング・グループの第14回会合を開き、市場インフラ機能向上に向けた政策的課題について意見を交わした。事務局の金融庁側は、私設取引システム（PTS）における売買高上限の見直しや、証券トークン取引における投資家保護の担保、非常時における東京証券取引所の代替市場接続について提案し、議論を促した。委員側からは投資家保護の観点から慎重な制度構築を求める声が上がるも、規制緩和の方向性については概ね賛同が相次いだ。

注目論点1「PTS売買上限見直しに賛同相次ぐ」
現行制度上、PTSで取引する上場株式などについては売買高に上限が設けられている（例えば競売買方式では過去６月間の取引高の１日平均が取引所金融商品市場の取引高に対し、取り扱い銘柄全体で１%以下、かつ銘柄ごとに10％以下であることが求められている）。拡大基調にあるPTSの活性化で市場間競争を後押しする観点から、事務局側は売買高上限を見直す方向で議論を促し、委員からはおおむね賛成する意見が相次いだ。
また、HFT（高速取引）の導入について、注文の狙い撃ち（ピックオフ）などを防止するため、高速取引の優位性を低減する枠組みを設けている海外規制事例を紹介。当局の立場として投資家保護に議論の主眼を置きつつ、HFTの導入促進を前提化した格好だ。

注目論点2「証券トークン取引『完結性』求める」
　19年に開示規制などが整備された証券トークンについては、商品の選択肢を広げる観点から、PTSにおける取引を後押しする方向で議論が行われた。事務局は、証券トークンを取り扱う取引所について、管理、売買マッチング、振替、資金決済（DVP決済）を含め、各プロセスをシームレスに処理できる完結的な機能を担うことが求められると指摘した。
足元では、SBIホールディングスなどが共同設立した大阪デジタルエクスチェンジが、トークン取引のPTS開設に向けて準備している。こうした民間の動向を睨みつつ、投資家保護に関する文言が市場制度WGの次回報告書に盛り込まれると予想される。

注目論点3「東証の代替市場接続案が浮上」
　上場有価証券取引のほぼすべてが終日停止した20年10月の東証システム障害を踏まえ、事務局側は、特定システムで大部分の取引が処理される「単一障害点（SPOF）」の解消が求められると問題提起。その上で、取引停止時に代替市場に接続するよう国が体制整備を働きかけているオーストラリア証券取引所の事例を紹介した。これに対し委員側からは、既存の地方取引所の有効活用を求める意見も上がった（「発言ハイライト」参照）。


【発言ハイライト】
※会合における主要な発言の趣意を速報として紹介。金融庁が後日公表する議事録の表現と異なる場合がある。

A委員「HFT業者や、機関投資家などのプロ投資家が具体的にどういうニーズを持っているのか実態を把握した上で、売買高の上限規制がサービスの妨げになっているのであれば、規制緩和を検討いただきたい」

M委員「新規参入者にとっては取り扱う金融商品や売買方式で差別化を図れなければ、シェア拡大が難しい。本日の（事務局の）説明については、売買方式の選択肢を広げ、金融商品の選択肢を広げる方向性と理解しており、多用な選択肢を設けるのはよいことと思う」
「諸外国にみられる売買方式については、日本の投資家にもニーズがあって不思議ではないと思う。競売買方式の取引上限の見直しについては、（緩和を求める）声があったようなので、手始めに取り掛かるべきか思う」

H委員「名古屋、福岡、札幌にも取引所があり、日本市場のレジリエンス向上という観点で、こうした地方取引所の役割を見出すことはできないか。売上高が減少しているが、東証のシステムを利用しながら地方に立地するこれらの地方取引所を、地震などの災害時にうまく活用する方法があるのではないか」

M委員「証券トークン市場はPTSにとって、補完的役割ではなく、場合によっては主たるマーケットとなる。そこで取り扱われていることによって信用付与の効果が出てくるのだとすれば、上場に準ずる審査のルールを加えた上で、そうした役割を担ってもらうことが十分に考えられる。技術の進化がある中で細かなルールを定めるのは難しかろうが、プリンシプル（規範）ベースで認めるという方向もあるのではないか」

座長「トークンを有価証券として捉えるのか、あるいはデリバティブとして捉えるか、この二つではあまりに違いがあり、ひとつの課題と思う」


※文中の内容はいずれも特定の投資手法、戦略、銘柄を推奨するものではありません。
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主宰者略歴　元全国紙記者。長野支局を振り出しに政治部官邸番等を担当し、金融専門誌記者を経て独立。「金融政策レポート」主宰。
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