この判断を、正解にするために。あなたと紡ぐ、女子フットサルクラブ経営の話

Vol.0｜旧蘭留小学校を“借りる”と決めた日

ヴォルフェ北海道には、選手より先に、拠点がありました。

まだ誰がチームになるかも決まっていない時期に、私たちは場所を選びました。
それは、戦略的な判断でした。人を集めるより先に、居場所を用意する。そうすることで、何かが始まると信じていました。

最初に相談したのは、新しい施設を建てられないか、ということでした。簡単に叶う話ではないとわかっていましたが、それでも真剣に話しました。

そのやりとりのなかで、町長からこんな提案をしてくださいました。 「廃校になっている旧蘭留小学校を使ってみるのはどうですか？」

その提案を聞いたとき、正直なところ迷いもありました。
体育館はフルコートが取れませんし、冬は寒く、設備も決して新しくはありません。
でも、私たちはその場を選ぶことにしました。

理由のひとつは、そこにしかない「時間」があったからです。 自分たちのペースで試せる場所。 それが、当時の私たちには何よりも必要でした。

のちに、親しくしているプロスポーツチームの監督にこう言われました。 「フルコートじゃない？ それならブラジルみたいな、テクニカルな選手が育つかもしれないね」

制約を、可能性に変える。 あの言葉に救われた気がしました。

鍵を受け取った日、静まり返った校舎を歩きながら思いました。
ここからは、引き返せないな、と。

でも同時に、ここからなら始められる、とも思いました。

この場所を選んだことは、いまも「正解だった」と言い切れるわけではありません。
でも、ここから生まれた日常がたしかにあります。

今も、選手たちがこの体育館で練習をしています。
笑い声が響く日もあれば、寒い中での静かな練習の日もあります。

あの日の判断が、いま少しずつ、意味を持ちはじめています。

この記録は、そのプロセスの一部です。