サンクス先生のファッションビジネスの授業

今回は、中国のアパレル業界の現状について、お話させて頂きます。



・「中国アパレル業界の課題と可能性」モノマネからブランドへ、次の一手は？

こんにちは。今日は「中国のアパレル業界って今どうなってるの？」というテーマで話します。よく「中国ってモノマネばかりでしょ？」って聞きますが、実はそれだけじゃない。今、中国のアパレルは“次のステージ”を目指して悩み、変わろうとしています。そのリアルな課題と可能性を一緒に考えてみましょう。


みなさん、こんにちは。
今日のテーマは「中国アパレル業界の課題と可能性」です。

さて、突然ですが、みなさんに質問です。
「中国のアパレルって、どんなイメージありますか？」

…「安い」「大量生産」「モノマネが多い」って思った人、多いんじゃないでしょうか？
正直、それ、昔のイメージではあるけど、今も完全には消えてません。

でも一方で、「じゃあ日本や欧米のブランドと何が違うの？」って考えてみると、見えてくるものがあります。

まず、1つ目の大きな課題。
それは**「オリジナリティとブランド力の不足」**です。

中国のアパレル企業って、もともとOEM（他社ブランドの製造代行）で大きくなってきた会社が多いんですね。
だから、「いいものを安く、早く作る」は得意。でも、「自分たちの世界観を伝えるブランドづくり」はまだ発展途上なんです。

みなさん、たとえば日本のBEAMSや無印良品って、ただ服を売ってるわけじゃないですよね。
ライフスタイル、価値観、ストーリーを売っている。そこにファンが共感して、買ってるんです。
中国の多くのブランドは、そこがまだ弱い。

2つ目の課題は、**「ブランディングを担う人材が不足している」**ということ。
中国には優秀な縫製や物流の人材はたくさんいます。でも、ブランドプロデューサー、マーケター、コンセプト設計者のような“感性と戦略の両方”を持った人はまだまだ少ない。

ここで質問です。
「ブランドを育てるのに一番大事なのって、誰だと思います？」
…デザイナー？社長？SNS運営？全部正解だけど、「ブランドを編集できる人」がいないと、方向性がブレるんです。

3つ目は、価格競争の限界です。
「安くて、そこそこいいもの」っていうゾーンはもう飽和しています。
ファッション好きなZ世代は「安い」よりも「私らしい」を求めてる。
でも、価格以外の魅力で勝負できるブランドはまだまだ少ないんです。

4つ目は、サステナビリティの遅れ。
欧米ではもう当たり前のように、ESGとか脱炭素とか、ブランドの社会的責任が重視されていますよね。
でも中国では、一部の先進企業を除いて、まだまだそこまでの動きが少ない。

みなさん、サステナビリティって言葉、よく聞くけど、「どこまで本気で取り組んでいるか」がブランド選びの判断基準になる時代なんです。

最後の課題は、海外市場での信頼性の壁です。
たとえば中国ブランドがパリコレに出ても、「中国ブランドはちょっと…」って偏見が根強く残っていたりします。
文化的な伝え方や、現地市場に合わせたブランド設計がまだ追いついていないケースも多いんです。

でも！ここからが面白いところ。
実は最近、中国アパレルには**“光が差し始めている”**んです。

たとえば、「国潮（グオチャオ）」って聞いたことありますか？
これは、中国の伝統文化やアイデンティティを、若者に向けてポップに再解釈したファッションムーブメント。
リーニン（Li-Ning）やアンタ（ANTA）みたいなスポーツブランドも、国際的に評価されてきています。

そして、ライブコマース。
中国ではファッションの売り方も進化しています。淘宝ライブや小紅書を使ったリアルタイム販売は、世界的に見ても圧倒的なスピードと影響力があります。

つまり、今の中国アパレル業界は、
「モノマネ」から、「カルチャー」と「共感」の時代に向かって、必死に進化している最中なんです。

じゃあ、ここで最後の質問です。
「中国のアパレルが、世界で愛されるブランドになるには、何が必要だと思いますか？」

…そう、自分たちの価値に自信を持つこと。
そして、モノじゃなく、「思い」や「世界観」をどう届けるかを考えること。
それがこれからのブランドづくりの鍵なんです。

まとめ

中国アパレルの課題は「オリジナリティの欠如」「ブランド戦略の未熟さ」

人材育成・サステナビリティ対応も遅れている

価格競争では限界、ファンとの関係性が重要に

ただし「国潮」やライブコマースなど新たな強みも生まれている

世界で戦うには「共感される文化・世界観」の構築がカギ



・「縫製工場の未来」アパレル業界の転換期

今、工場が直面している現実


以前は「たくさん・安く・早く」が最優先でした。しかし今、状況は大きく変化しています。

発注数の減少（小ロット・多品種化）

単価の下落

技術者の高齢化と若手不足

社員の賃金上昇プレッシャー

設備投資コストの高騰

このように、今まで通りの受注体制や経営スタイルでは限界がきています。だからこそ、今必要なのは単なる「改善」ではなく、**「経営モデルの再設計」**です。



ではどうすればいいのか？5つの具体的改善策


最近多くの工場で課題となっているのが、ミシン・検針機・CADなどの設備更新コストの急上昇です。背景には次のような要因があります。

原材料や電子部品の価格上昇

為替変動や関税による輸入価格の高騰

省人化やAI対応設備のハイエンド化

中国国内の安全基準強化や省エネ規制による価格上乗せ

しかし、「高いから導入できない」で止まってしまえば、生産性の改善も省人化も進みません。

そこで、以下のような現実的な対策が必要です。



1.必要性と優先順位を明確にする


→ すべてを一度に更新するのではなく、「利益に直結する工程」から順に。たとえば、アイロン、裁断、検針など人手がかかる部分から。



2.リース・レンタル活用で初期費用を分散


→ 特にIT機器や新型検針機は、リースで運用し、更新サイクルを柔軟に。



3.地方政府の補助金・支援制度を活用


→ 一部の省や市では、省エネ設備や自動化投資に対する補助制度が出ている場合があります。要チェック。



4.他社と連携して共同購入・シェアリング


→ 近隣工場と協力し、共同で高額設備を購入・交代で使用するモデルも一部で実績が出ています。

**設備は「持つもの」ではなく「使いこなすもの」へ。**初期コストだけでなく、投資対効果（ROI）を計算しながら進めましょう。

5.そしてもう一つの課題：「社員の賃金上昇」とどう向き合うか？


賃金上昇は避けられない流れです。若手採用や人材の定着、物価上昇への対応もあり、多くの企業が人件費の増加に直面しています。

しかし、単純な「昇給」だけでは経営が持ちません。だからこそ、賃金上昇に対する戦略的対策が必要です。

● 生産性向上による原資確保
→ 工程の見直しや効率化、自動化ツールの導入で余力をつくる

● 成果に応じた給与制度
→ 貢献度や技術レベルに応じた柔軟な評価システムへ

● 福利厚生・働きやすさの強化
→ 給与以外の「満足度」を高め、定着率を上げる

● 教育投資で人材価値を上げる
→ 社員のスキルを上げ、単価と利益を同時に向上

これらはすべて、「コスト」ではなく、「未来への投資」として捉えるべきです。

まとめ：

「脱・下請け」から、「企画・提案型パートナー」へ

これからの時代、工場はただ縫うだけでは生き残れません。

工場もブランドの一部である

強みを言語化し、発信し、提案する力が必要

価格ではなく、「価値」で勝負する

そして何より、経営者自身が現場を見るだけでなく、「外を見る力」「見せる力」「仕組み化する力」を備えた、新しい時代のリーダーになることが求められています。

今こそ、「経営モデルの再設計」が必要です。



・中国製造業の変化とファッションビジネス

こんにちは。今日は「中国製造業の変化とファッションビジネス」について考えます。
中国は“世界の工場”から、東南アジアとの価格競争や人件費高騰で転換期に。
政府はスマート工場化を推進していますが、大手だけが対応可能。
今後は企画力や小ロット対応など、提案型の縫製工場が生き残る鍵に。
あなたのブランドは、どんな工場を選びますか？

中国製造業の変化とファッションビジネス

こんにちは、みなさん。
今日は「中国製造業の変化と、これからのファッションビジネス」について一緒に考えてみましょう。

昔は、「中国って安くて早い、世界の工場だよね」っていうイメージ、強かったですよね？でも、その常識、今はもう崩れ始めています。

ポイント1：「世界の工場」神話の終わり
中国はいまでも世界の製造業の約3割を担っています。でも、特に安く大量生産する分野では、東南アジアにシフトする動きが加速してるんです。

ベトナム、インド、バングラデシュ…。
若い労働力が豊富で人件費も低い。そっちに欧米ブランドの発注が流れている。

【質問1】

「あなたがファッションブランドを立ち上げるとしたら、どこの国に縫製をお願いしたいですか？」

→たぶん「ベトナムがコスト安そう」とか、「日本だと安心だけど高そう」とか、「中国はまだ実績があるから悩むな…」って考える人が多いと思います。

ポイント2：若者の製造業離れと人件費高騰
もうひとつの変化は「人」です。
中国では今、若者が製造業に行きたがらないんです。

「ライブ配信やデリバリーの方が楽しい」「工場よりオシャレな仕事がいい」と思っている人が増えた結果、人手が足りず、人件費はこの10年で2倍以上になってます。

【質問2】

「あなたのブランドで、人件費が2倍になったらどうしますか？」

→おそらく、「価格を上げるか」「生産拠点を変えるか」「AIや自動化に投資するか…」って迷う方、多いですよね。つまり、経営判断が問われる時代です。

ポイント3：中国の対策＝スマートファクトリー化
中国政府は自動化を進めています。
AI、ロボット、IoTで、人がいなくても回る“スマート工場”を目指しています。

でも、現実は簡単じゃない。
ハイテク投資にはお金がかかる。結局対応できるのは大手企業や先進工場だけ。

【質問3】

「スマート工場に委託していたら、どんなメリットやデメリットがあると思いますか？」

→「品質やスピードは上がりそう」「でも、コストが高くて小ロットには不向きでは？」という声も出るはずです。相手によって良し悪しが変わるんですね。

ポイント4：縫製工場側が進化すべき方向とは？
ここからは縫製工場側の立場で話します。

いま中国の工場が生き残るには、単なる“作業代行”から、企画提案ができるパートナーへの進化が必要です。

とくにD2Cブランドと組むには、以下の力が求められます：

企画・提案型の営業力（デザインや素材提案ができるか）

小ロット・短納期対応（100枚でも回せる体制があるか）

データ共有・共同開発の意識（ただ作るだけじゃダメ）

まとめ

「安くて早いだけの工場」は今後淘汰される

ファッションブランド側も、「どこで作るか」に戦略性が求められる

中国の縫製工場は、提案型・共創型・スピード対応型のパートナーへ進化することが重要

【ラストの質問】

「あなたのブランドにとって、“信頼できる工場”って、どんな工場ですか？」

→きっと「ただ安いだけじゃダメ」「トレンドに詳しくて、会話が通じる」「相談できる、提案してくれるパートナーがいい」って答える人、多いと思います。