週刊腸内細菌

今回のテーマは「腸内環境ってどんなとこ？」です。

腸活や腸内フローラが一般的に使われるようになった昨今ですが、腸内環境を具体的に説明するのは意外と難しいことです。なぜなら、腸内環境を理解するには解剖学や免疫学、微生物学など広範な分野の知識を必要とするから。そんな腸内環境の難解さ、“得体のしれなさ”が、科学的な根拠の乏しい製品やサービスの流通の遠因となっていると感じます。
週刊腸内細菌では、メールマガジンの形式で定期的に腸内細菌や腸内環境の情報をお届けすることで、腸への理解とリテラシーを高めることを目指します。まずは、そんなお話の舞台となる、腸内環境を説明していきます。

まずは、環境の定義です。Cambridge Dictionaryから引用すると、“ the air, water, and land in or on which people, animals, and plants live1)”とあります。つまり、我々人間をはじめとする生物を取り囲む空気や水、大地の全体こそが環境です。

腸内環境を考える上で主体となる生物は、腸内細菌をはじめとする微生物です。そして、微生物を取り囲む物質やヒトの組織を包括して、腸内環境と呼びます。スケールこそ異なりますが、日本の島国やガラパゴス諸島と同じように、腸内環境もれっきとした環境で、そこには独自の生態系が根付いています。
腸内環境の特徴は、①豊富な栄養、②豊富な水分、③少ない酸素、そして④高密度の微生物です。①、②、③の特徴は、微生物が繁殖する上で好条件であり、結果として④の特徴になるとも言えます。
ではなぜ、腸内環境には①、②、③の特徴が備わっているのでしょうか。①、②は、ヒトが栄養や水分を吸収するための場所だからです。私たちが日々摂る食事は、様々な酵素や胃酸による分解を受けることで吸収されやすい低分子になります。これらが水分と共に流れ込む、乾燥と飢餓から無縁のオアシスこそが腸内環境なのです。また、腸内環境は気道から遠くに位置しています。結果として、腸内環境の酸素濃度は極めて低い状態が保たれます。小腸より大腸の方が酸素濃度は低いと考えられており、その結果として、大腸には酸素を嫌う腸内細菌が多く存在しています。

これらの特徴は絶妙なバランスの上に成り立っており、どのように実現されているのかについては、解剖学、免疫学、微生物学等の領域からの説明が必要になります。
週刊腸内細菌では、今回取り扱ったような基礎的なお話から、最新の論文解説までを取り扱います。ご興味のある方は、ぜひ購読をよろしくお願いします！

参考文献
Environment, Cambridge Dictionary, Access: 20250828, URL: https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/environment