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県知事もだまされた「消防ヘリは夜間飛行できない」という俗説

よく消防のヘリは「夜間飛行できない」「市街地火災に空中消火できない」などと言われますが、そんな事実はないってご存知でしたか? 軍事アナリストの小川和久さんはメルマガ『NEWSを疑え!』で、このウソを暴き、一部の怠慢な消防職員を非難しています。

知事はウソをつかれている

今回は、どうしても書いておきたいことがあります。それは全国で78機が整備されている消防防災ヘリの夜間運航についてです。

2週間ほど前、ある県の知事さんと食事をしたおり、こちらが10月13日に静岡県の消防防災ヘリで静岡・伊豆下田間の洋上を夜間飛行したと話したところ、うちの航空隊からは「夜間飛行はできない」「暗視ゴーグルをつけないと無理だ」と説明を受けており、離島からの119番通報時も帰途が夜にかかるような場合はすべて航空自衛隊の救難ヘリと海上保安庁のヘリにお願いしている、と説明がありました。

これは明らかに虚偽ですから、「ウソをつかれているのですよ」と、13日の夜間洋上飛行が有視界飛行であったこと、夜間でも視界が確保できる場合は有視界飛行でよく、昼間でも視界が限られる場合は計器飛行で飛ぶこと、などを説明するハメになりました。

ヘリは夜間飛行できないという俗説は、もともと消防関係者から流布したものと考えられます。それもあって、阪神・淡路大震災発生直後、当時の自治省消防庁の滝実長官がヘリで現地入りしたい意向を示したところ、東京消防庁から夜間飛行しないと断られたりした苦い経験もあります。

いまだに消防関係者が信じている「市街地火災に空中消火はできない」というのも俗説です。

そうした俗説を打破するため、私は徒手空拳で消防当局と対決しました。いやな思いも味わされました。

そういう戦いの中で消防当局側に同志を得て、消防審議会の委員になっていくわけですが、いま残念さを噛みしめているのは消防審議会を挙げて取り組んだ検討会の報告書について、消防関係者が読んだことはおろか、その存在すら知らないという現状です。

報告書は「消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会報告書」。2009年3月まで1年半をかけてまとめました。

むろん、市街地火災に対する空中消火や夜間飛行について具体的に説明し、方法論まで示して24時間運航を奨励さえしているのですが、それすら知らないとあってはなにをか言わんやです。

某県の知事さんには、報告書を届けるとともに、阪神・淡路大震災より前から島根県の消防防災ヘリが隠岐島と松江間を急患搬送で夜間洋上飛行を実施してきたこと、東日本大震災発生直後、熊本県の消防防災ヘリが樺島知事の命で夜間洋上を飛んで被災地に急行したことなどを伝えておきました。

使命感に燃える消防職員もいれば、怠慢を絵に描いたような人々もいる。それが世の常なのかもしれませんが、消防は常に正義の味方であってほしいものです。

image by: Shutterstock

 

NEWSを疑え!』第439号より一部抜粋

著者/小川和久
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
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