199カ国の中で、どの国のパスポートが最強かを比較する「パスポート・インデックス」というサイトをご存知ですか? ここで日本のパスポートは「ランク4」に入っています。このリストにはありませんが、ひょっとしたら1番下のランクかもしれない「世界のパスポート」なるものも存在します。あまり馴染みのない名前ですが、どんなパスポートなのでしょうか?
日本は韓国よりも下のパワーランク4
最新の「パスポート・インデックス」で最もパワフルなパスポートを意味する”パスポート・パワー・ランク1”に輝いたのはイギリスとアメリカです。
この2カ国は147カ国の国をビザなしでいくことができます。
【図:パワーランク1〜5(編集部作成)】
一方、日本はというと「ランク4」に属します。
日本の他にはシンガポール、フィンランド、デンマーク、ルクセンブルク、オランダが並び、ビザ不要の国は143カ国です。
アジアのトップは、なんと韓国。
「ランク2」に属し、ビザが不要な国は145カ国です。
日本よりランクが上なんて、ちょっと意外です。
ちなみに最も低い「ランク80」に入ったのは、ミャンマー、ソロモン諸島、パレスチナ、サントメ・プリンシペ、南スーダンの5カ国。
この5カ国がビザ不要でいける国は28カ国です。
こう考えるとトップとは雲泥の差ですね。
人気ラッパー逮捕で問題の「ワールド・パスポート」とは?
ところで、みなさんは「ワールド・パスポート」を知っていますか?
米国ワシントンD.Cにある、1954年に設立された“World Service Authority(WSA)”という非営利団体が発行しているパスポートです。
WSAは“世界国民”、“世界法”、“世界政府”も宣伝している団体。
このワールド・パスポートはその名の通り、「世界のパスポート」で、“誰もが地球を自由に旅行できる、譲渡できない人間の権利”を表明したパスポートです。
10年パスポートで$100、アジアに住んでいる人は郵送代を含めた事務手数料$100が別途かかるようです。
image by: Wikipedia
WSAによると、これまで60年以上の実績があり、あのオバマ大統領や、名物司会のオプラ・ウィンフリー、元CIAのエドワード・スノーデンなど、米国でも影響のある人たちが、このワールド・パスポートを所有していると言われています。
しかし、最近になってこのワールド・パスポートをめぐってある事件が発生しました。
「モス・デフ(Mos Def)」の名で知られる米国人人気ラッパーで、2011年に改名したことが話題になったヤシーン・ベイ(Yasiin Bey)氏は、どうやらこのワールド・パスポートが原因で逮捕されてしまったというのです。
モス・デフことヤシーン・ベイ
情報サイトAll Africaによると、ベイ氏は2013年頃から米国のパスポートで頻繁に南アフリカを訪れていたようですが、2016年1月に出国しようとした際、ワールド・パスポートを使ったことが原因で、不正の身分証明書と非公式のパスポートを使用した疑いで逮捕されました。
南アフリカはワールド・パスポートを許可していない国のようですが、WSAのサイトにはこのパスポートで南アフリカに入国することができたことが明記されています。
image by: WSA
この事件で話題になったワールド・パスポートですが、すでに75万人以上に発行されており、パスポート内には英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語、中国語、エスペラント語の7ヶ国語が印刷されています。
ウェブサイト上では、160カ国以上がこのパスポートを認知していると宣言していますが、“場合により”と明記されており、実際のところどの国がこのパスポートを受け入れているかは不明瞭なのです。
CITYLABによると、「これまで何人もの人が、このパスポートを使って逮捕されている。それは今回のベイ氏や、何十回も逮捕されているWSAの創設者ゲイリー・デイビス氏などだ」とし、「このパスポートを使うリスクは増えており、最近世界中でおこっているテロ攻撃で、各国が安全面の強化という課題に直面している」と報じています。
アメリカでは最近、二重国籍のヨーロッパ人や、過去5年間にイラン、イラク、シリア、スーダンなどへ旅行した人に対して、新たにビザ取得することが必要であることを発表しており、外部からの入国に対してますます敏感になっているようです。
実際にこのパスポートを申請した人のほとんどが、立場の弱い人たちや難民の人たちのようです。
“すべての人が自由に移動できる”というコンセプトは良いのですが、セキュリティ面を考えると「世界のパスポート」は、まだまだ実用的ではないようです。
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Source by: パスポート・インデックス , WSA ,CITYLAB
文/MAG2 NEWS編集部