最近、テレビでよく目にするのが「日本は世界中から好かれている」という内容の番組。日本スゲー!COOL JAPAN! と、日本人の自尊心をくすぐるような内容で溢れていますが、果たして海外の人々は日本に好意を持っている国ばかりなのでしょうか? 現在もNYで生活を続けている、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者・高橋さんは、自身の暮らすNYを例に挙げ、現地で日本人がどう思われているかを学校のクラスメートに例えて分かりやすくコッソリと教えてくれています。
世界を学校のクラスに例えてみると
日本の報道番組やバラエティ番組などで “ 【JAPAN】は世界に非常に好意的に思われている ” とよく聞きます。 日本が世界の人々に「素晴らしい国」だと思われている、とマスコミは口を揃えます。
果たして本当に、そうなのか。
もちろん 「政治的」な側面、「社会的」な側面、「文化(カルチャー)・エンターテイメント的」な側面、あと「日本人」という「人種的」な側面で、さまざまな評価に変わってきますので、一概には言えない。
それに加え、評価する側の「国」にもよって変わってきます。 ここで書くまでもなく、一般的に「トルコ」や「台湾」は親日国ですが、「中国」「韓国」は反日国として報道されることが多いはずです。
なので「側面」にも 、対象の「国」にもよるので「世界から見たNIPPON」がどう映っているのか、一義的には言えない 。 当たり前ですが。
それを踏まえた上で、ここでは僕個人という小さなデータが、NY という限定された街で、あくまで「政治的」意味合いではなく、日常生活の中で感じた「社会的」な面から、「日本」もしくわ「日本人」がニューヨーカーからどう思われているか。 16年以上暮らして、日々ニューヨーカーと触れ合う仕事をしてきて、感じたことを書きたいと思います。 あくまで個人のデータと個人のです。 世界は例外で出来あがっているし、人間個人の意見がすべてでは、あたりまえのように、ないことを前提において。
ただ、それと同時に、世界の人種・国籍が最もマージしているこのニューヨークという街は、最高のサンプルが取れる場所、とも思っています。 というか、サンプルを取るとしたら、世界の中でも、ここしかない。 マンハッタンは世田谷区と同じくらいの面積で、そこに全世界ほぼすべての国籍・人種・文化・宗教がひしめいています。 比喩的な意味合いではなく、実質的に“世界の縮図” ではあるはずです。
それでは、「日本」という国が世界で評判いい!という日本のメディアの報道が、本当か、どうか。
それは間違ってないと思います。 正しい。 この街のどの人種に聞いても、そのほとんどが「好意的」には思っていると思います。 それは聞いている僕が日本人だから、ということももちろん大きいですが、それを差し引いても、悪いイメージはない。
ただ。なんというか。
リスペクト(尊敬)もされているし、評判もいいんだけど。
「イケてる!」とか「カッコいい!」とは、あまり思われてないかもしれません。
それは、学生時代のクラスの中のキャラクターで考えるとわかりやすいかもしれません。
「日本クン」は確かに頭も良くて、律儀で、誠実で、親切で、無口で、自宅もお金持ちで、特に「日本クン」家(ち)の電化製品なんて最新で、家の中はいつもキレイで、トイレにはお尻を洗ってくれる機械まで備え付けてあって、遊びに行ったら(観光に行ったら)出されるごはんも美味しい。 「SASHIMI」なんて、生魚を出された時は、昔はビックリしたけど、最近は美味しく感じられるし、「RAMEN」なんてクラスメートみんなから大人気です。
そう「日本クン」は、クラスのみーーーーんな、リスペクト(尊敬)してる「学級委員長」みたいな存在。 (実際、学生時代の“学級委員長”は、リーダー的存在がなるわけではなく、人の良い、断れない性格の子がなっていたと思います)
でも、、、男子にとっての「憧れの存在」か、と聞かれれば。 女子にモテるか、と聞かれれば。
たいしてスポーツも出来ないし、身長も高くないし、なにやらいつもフェミニンなファッションだし。
誰もが認める頭の良さだけど、誰もが憧れるカッコよさではない、そんな存在かもしれません。
「それはおまえがモテナイから、そう思うだけだろう」と言われれば、返す言葉も見つかりませんが(笑)ここはあくまで国の存在をクラスメートで例えた話。 よく聞く「黄色人種の男性が白人女性からモテナイ」といった趣旨の話ではありません。「国」全体のイメージの話です。
「それでも“ COOL JAPAN! ”とかよく聞くじゃないか、実際、日本のアニメのコスプレをした世界各国の人をテレビで観たことあるぞ!」と言われるかもしれません。
確かに、ここNYのアニメコンでも(僕は毎年取材に行きますが)2日間で約20万人の「日本クン」ファン、が集まります。 編集部には「OTAKU」を名乗るアメリカ人から、ジャパニーズアニメの記事への問い合わせもよくきます。
でも、しょせん20万人です。 国全体で考えるとわずかな数字です。 日本の報道を見ると、アメリカ人全員がポケモン好きで、イチローをリスペクトしているような印象に見えるかもしれないけど、でも試しにマンハッタンを歩いてるアメリカ人に片っ端から「ICHIROを知ってる?」と聞いたところで、10人中ひとりもいません。 ひょっとしたら、10人の中にメジャーリーグ好きがひとりくらいいるかもしれない。 でもそのひとりがマイアミマーリンズという、メジャーの中ではマイナーなチームの、いちアジア人の野手を知ってるかと言われれば微妙です。
例えば、新大久保あたりに出没する韓流スターのおっかけおばさんを見て、例えば、北欧系のインテリアばっかり集めてる広告代理店のおにいちゃんを見て、
「しょせん、日本クンってさ、オレに憧れてんだよね~」って「韓国くん」や「スウェーデンくん」に言われたらたまったもんじゃない。
日本国民みんなが、イ・ビョンホン ファンで、日本の住宅全部のインテリアが「IKEA」で占められてるわけでは、当然ない。
アメリカの【 COOL JAPAN 】好きのパーセンテージは、つまりは、それくらいです。
日本で、北欧系家具、大人気。 アメリカで、きゃりーぱみゅぱみゅ、大人気。
同じくらいの割合だと思います。 全体数から言うと、圧倒的に少数。
なので、「日本のカルチャーや習慣が欧米で大人気」、という報道は、間違いではないけれど、 その一部でしかない。
わかりやすく乱暴ないい方をすると( もちろん例外を除き)ポケモン以外、欧米で、日本が特別に人気があるというわけではありません。
「日本クン」の自宅の電化製品(技術)、晩ご飯(食 )はスゴいと思うけど、「日本クン」自体の魅力(文化)に魅かれているクラスメイトは一部です。
では、クラスの中で中心人物は誰なのか。 良くも悪くもいちばん目立っているのは誰なのか。 そんな「番長」的な存在は、やっぱり「アメリカくん」です。いい意味でも、悪い意味でも、クラスのリーダーです。
喧嘩(軍事力)もダントツで強いし、野球部(メジャーリーグ)のキャプテンです。 同じ野球部の副キャプテンの「カナダくん」はじめ、「ドミニカくん」、「プエルトリコくん」を引き連れて、今年はなんとあの「キューバくん」とも仲直りしました。 かつて、クラス全体を不安にさせた「キューバくん」の反逆。 あまりに子分として理不尽に使われた「キューバくん」の生涯唯一の反乱でした。 そんな「キューバくん」をも、丸め込んだ「アメリカくん」はクラスで不動の地位です。
でも、この「番長」、実はそんなに頭が良くないこともバレてきています。 クラス中に。 ( やたらジャンクフードばっかり食ってるし、なによりファッションもダサいし)それに、やたらとクラスメイト同士のケンカに首を突っ込んでくるし。
実を言うと、クラスのイケメン軍団である、サッカー部の「イギリスくん」や「フランスくん」や「ドイツくん」や「イタリアくん」たちも、ホントはどこかでバカにしてます。 (ファッションもいっつも学ランだし。 遊びに行っても、ハンバーガーかホットドッグしか出さないし)
でも、番長、喧嘩がやっぱり強いから、バカにはしてるけど、いちおう距離を保ちつつ、いい関係でいようと思っています。
ちなみにモテモテ軍団のサッカー部ですが、特に「フランスくん」と「イタリアくん」は料理も上手。 ( そりゃモテるはずだよ)「スペインくん」だって自宅が海岸近くにあるから、遊びに行くと、美味いシーフードを食べさせてくれます。 ( ※ ちなみに、この「イギリスくん」と「フランスくん」と「イタリアくん」と「ドイツくん」たちらのパパは同じ「EU」という会社で働いてる同僚でもあります。 ちょっと前に「ギリシャくん」ちのパパが自己破産しそうになって、なんと会社ごと、経済危機に陥りそうになりました。 それはまた別の話 )
彼らサッカー部は、とってもオシャレでファッショナブルで、「番長」はどこかで彼らに憧れを持ってる。 でも、こっちは「番長」。 クラスのリーダーなので、そんな憧れをひたすら隠します。 クラスメートほぼ全員にバレてるけど。 そんなちょっとバカで愛想のある「番長」なので「学級委員長」の「日本くん」はひたすら憧れます。
ホントは「日本くん」の方が全然頭もいいのに、ちょっと「番長」のマネをしたがります。 「番長」の言葉遣いをマネしたりもします。 「番長」のファッションのマネもしたがります。 でも「番長」のファッションは、もとはといえば「サッカー部のイケメン軍団」のマネです。 しかもマネしても、どこか完コピできす、ダサい。 にもかかわらず、「日本クン」はマネのフャッションのそのマネをしたがります。 そこまで自分に憧れる「日本くん」を「番長」も可愛いと思っています。
なので「番長」と「学級委員長」は友達です。でも対等ではありません。 対等の関係な友達とは「番長」自身、思っていません。 これは間違いない。
でも「学級委員長」は対等だと思いたい。
もちろん「番長」は「学級委員長」が大好きではあります。 それは忙しいときに「おい、オレの代わりにレポートやってくれよ!」と言うと、代わりにせっせと宿題をやってくれるから。 (しかも、かる~い感じで頼んできます)それに、たまにお小遣いもくれるから。 (しかも、当たり前のように頼んできます)その関係の上に成り立ってる「友情」だということを「日本クン」はまず把握しなきゃいけない。
それでも「番長」の機嫌をとるのは、いざ!という時の為です。
なので、最近になって、いつもクラスの一番後ろの一番端っこの席で、ヤバそうな目をして一日中鉛筆を削ってる「北朝鮮クン」がテポドン社の尖った鉛筆を「刺すぞ~、刺すぞ~」とニヤニヤ脅してくるので、「番長」になんとかしてくれないかな、と頼んでいるところです。 (だいたい「北朝鮮クン」の実家は何をして、ごはんを食べてるの?あそこの家はあまりに不明瞭で、よくわからなさすぎるし!)
でも「番長」は、その昔、隣町の共産高校との「ソ連くん」との、“抗争しそうでしない緊迫状態 ”から解放されて以降も、ずっと他の高校と抗争が続いてます。 いまではどこの高校にも通ってない、中退軍団を集めた「IS」 ってチーム名の街の暴走族との抗争に備えているところです。 クラスの目立たない「北朝鮮クン」なんかに構ってる暇はありません。 なので、日本クンには「大丈夫だって♪ おまえがなんとかできるって」と適当な言葉しか言ってくれません。
それじゃあ困ります。 お金に困ってるって言われたらお小遣いまで渡してきたのに!たいして欲しくもないお菓子のおまけの「野球カード」をいつも交換してあげてきたのに!(輸出輸入問題)。
「鉛筆刺されたら、言ってこいよ」と軽く言われるも、刺されてからでは遅すぎます。
それに最近では、ライバルとすら思ってなかった「韓国クン」の方が「番長」と親しくしてる気もするし。 。 。
「中国クン」や「インドくん」なんて全然、目立たない存在だったにも関わらず、最近、中国クンちも、インドくんちも、お金持ちになってきたというし。 この間遊びに行ったら、インドくんち、なんて結構キレイに建て替えてるし!ちょっと前まで平屋のトタン屋根だったのに!(インフラ整備)
「学級委員長」はこの20年肩身狭いです。 おうちで、パパが「失われた20年」って言葉を言ってるのが聞こえたし。
ママは、いつも「外へ遊びに行ってはダメよ、危険がいっぱいだから!おうちが一番いいのよ(ハート)」と言います。
でも、自宅のテレビではどうでもいい芸能人の不倫騒動とかばっかり流してるし。 。 。 。 。
もちろん、今まで話したことは、おおまかな意見です。 世界は例外で出来ているわけですから、すべてに該当するわけでは、決してない。 ザックリと、わかりやすく、クラスに例えただけなので、深い意味ではなく、わかりやすい、と思って頂けたら嬉しいです。
それを踏まえた上で、最後に。
クラスの中で、 いっつも同じ服着て 、家が貧乏なくせに、いつも明るくて、笑ってばかりで、「おまえ、どうして、そんなに明るいの?」ってつい聞きたくなるコ。 いましたよね? 勉強は全然出来ないくせに、やたら運動神経だけはよくて、喧嘩したらホントは「アメリカくん」より「ロシアくん」より強いかもしれないのに、そっちには興味ないのか、いつもニコニコして、休み時間のチャイムが鳴ったら、真っ先にサッカーボール持って校庭に駆け出すコ。 いましたよね?
そいつが「ブラジルくん」です(笑)。
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『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』 より一部抜粋
著者/高橋克明
全米No.1邦字紙「WEEKLY Biz」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ400人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる
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