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解体危機の名門・東芝が、プライドを捨ててでもやるべき「裏の手」

好調だった「半導体メモリー事業」も分社化することが決定した東芝。昨年は同じく好調だった「東芝メディカル」をキャノンに売り渡しています。そんな東芝の経営判断には「上場」にしがみつく無意味な意地しか見えません。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で、米国でソフトウェア会社を経営する中島聡さんが、「東芝が生き残るためにすべき経営判断」について言及しています。

東芝を救うウルトラC

東芝は30日、臨時株主総会で、半導体メモリー事業の分社化を決議しました。破綻状態にある東芝の財務基盤を完全するため、事業ごと売却する予定だそうです。

東芝は、去年、稼ぎ頭の一つだった東芝メディカルを6655億円でキャノンに売却しました。しかしそれでも足らず、今度は毎年1000億円以上の利益を生み出す半導体メモリーを売却するのです。

東芝の経営陣は、一体何を守ろうとしているのでしょうか? 経営ビジョンはどこにあるのでしょうか?

東芝は、数年前に「原発と半導体で勝負する会社に生まれ変わることを宣言しました。競争が激化してコモディティ化が進んだ家電やパソコン事業からは上手に撤退し、原発と半導体という巨大市場で、世界1、2位を争う企業になることを宣言したのです。

しかし、福島第一原発での事故のために原発事業は破綻してしまいました。それにも関わらず、のれん代の償却を遅らせ、傷をさらに深くしてしまった経営陣の責任は重大だと思いますが、一体全体、彼らは何を守ろうとしたのでしょうか?

東芝は、本来は2015年に粉飾決済が見つかった時点で上場廃止にすべきでした。一旦、上場廃止にした上で、(ウェスティングハウスの問題などの)悪い問題を全て明らかにし、どうやって再建するかを、債権者たちと話し合って決めるべきでした。無理に上場を維持しようとした結果、虎の子の収益ビジネスを売却して破綻状態から無理やり脱却しなければならなくなったのです。

そう考えると、現時点でも、一旦非上場にする、というのは悪くない選択肢だと思います。非上場にしてしまえば、来年度の決算時までに半導体メモリー事業を売却しなければならない、という縛りも消えるので、売却交渉も足元を見られずに行えます

それどころか、売却の代わりに半導体メモリー事業の上場というウルトラCも使えるようになります。半導体メモリー事業には、2兆円以上の価値があるので、上場時に一部売却してキャッシュを得ることも出来るし、債権者に対して借金を返す代わりに(半導体メモリー社の)非上場株を渡すことにより借金を帳消しにするよう交渉することも可能になります。

例えば、上場時に東芝が保有する(半導体メモリー社の)株のうち25%を売り出し25%を債権者に渡すとすれば、東芝本体には5000億円の現金が入る上に、5000億円分の借金を減らすことが出来ます。さらに、20%に相当する株を新規株式として発行すれば、新会社にも4,000億円の(半導体事業を成長されるために必要な)運営資金が入ることになります。

上場後も、東芝は新会社の約42%(0.5 / 1.2)の株持ち続けることが出来るので、時価総額1兆円の資産として計上することが出来るし、新会社が生み出す利益の一部を配当として受け取ることもできます。

それと同時に、ウェスティングハウスの破綻処理を粛々と進め、親会社としてのリスク(債務保証)の上限を明確にし、財務基盤を立て直した上で、再上場を目指せば良いのです。

 

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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