先日公開した記事「国民1人あたり3100万円。国が隠し持つ内部留保の衝撃的な金額」で、日本政府は「国民が苦労して稼いできたお金」を隠し持っており、これらをきちんと国民に返せば一人あたり3000万円以上にもなるという衝撃的な真実を暴いた中部大学教授の武田邦彦先生。今回のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』では、過去に池田勇人内閣が高度成長期の波に乗って日本人の給料を瞬く間に2倍にした例をあげ、「今の日本をもっと豊かにする方法」を提言しています。
池田首相の政策当時、なぜ「給料2倍」が実現できたのか
さて、ここまでの4回のシリーズで「私たちはかなりのお金を稼いだのに、それが政府、企業、そして外国に貯まったままになっている」ということを説明しました。もしそれを「誠実な政府」が返してくれたら、最大で勤労者一人あたり3000万円にもなるのです。
ところで、経済は「貯まったお金を使う」ということ以外に「今後も自分で働いて、豊かに暮らす」ことも大切です。でも、多くの人は簡単に給料を2倍にしようと思っても、すぐできるわけではないと思っています。たしかに、個人だけを考えれば実力もないのにすぐ給料が2倍になることは無いのですが、国単位に考えるとそうでもないのです。
かつての池田勇人首相は、「所得倍増計画」というのを打ち出しました。その頃、著者はまだ若く、経済という物がよく分かっていなかったので、「そんなことができるはずも無い。皆が懸命に働いて今の状態なのだから、首相が言ったってそれで給料が2倍になるはずも無い」と馬鹿にしていました。
ところが、池田首相の政策のもと、当時高度成長時期にあたっていた日本はみるみるうちに豊かになり、毎年のように10%近くのベースアップがあって、瞬く間に多くのサラリーマンの給料が2倍になったのです。著者もその当時は若いサラリーマンだったので、ドンドン上がっていく給料にビックリするやら、生活が楽になっていく体験をしたものです。
なぜ、政府が言えばそれだけで給料が2倍にもなったのか?その後、少しずつ経済を勉強しながら、理解を深めていきました。
ものすごく単純に言えば、日本人の多くが「給料を2倍にしたい」と思えば2倍になると言えます。ただ、そのためには多くの人が給料を高くしたいと思うことが必要で、当たり前のように思えますが、それほど当たり前でも無いのです。
まずは、
- ドンドン使ってドンドン捨てる
- 節約しない
- 人生をエンジョイする
などのことで、多くの人が合意しなければなりません。たとえば、分別やリサイクルなどをしてはダメで、最も効率的なゴミの処理…つまり全てを一緒にまとめて焼く…ことが必要ですし、使うときにできるだけ節約してお金を余し、それを貯金するなどもってのほかです。節約しても良いのですが、余ったお金は他のことに使ってしまう必要があります。
そして、かつての高度成長の時のように、家族でドライブに行く、恋人とデートをする、社長さんは新しい車を毎年買い換える、家電製品も新製品が出たら買う…などが必要です。ちょうど、池田首相が所得倍増計画を進めたとき、日本人はみんな「テレビが欲しい、ドライブもしたい」と言うときだったので、給料が1万円上がると、すぐ1万円使うことで楽しんだのです。
つまり、給料が上がって、その分だけ国民がすぐ使えば、それが企業などに流れ、さらに製品が売れるので、手にした売り上げ金で設備投資ができる…設備投資して増えた製品をまた給料が増えた国民が買ってくれるという好循環ができたのです。
日本人が求める「豊かな生活」はどうすれば手に入るのか?
それでは、いつでも「国民が豊かな生活をしたい」と思ったらできるかというとそうでもありません。第一の条件が「その国にお金がある」ということ、第二に「生産力がある」ということが大切です。この場合の生産力というのは工場でものを作る以外に、サービス、つまり電車を走らせるとか、ディズニーランドがあるなどのサービスも含んでいます。
たとえば、アメリカですが、アメリカは給料を上げるために、
- 国民がジャンジャン消費する
- 世界の基軸通貨であるドルをもっているのでお金が必要となったら印刷すれば良い
という2つの条件を満たしていました。だから、カードを使って借金をしながら豊かな生活をしたのです。
池田首相の時の日本はどうだったかと言うと、日本人が貧乏だったので、お金が入れば使ったというのが第一、第二に日本は生産力があったので、テレビが売れればまたすぐ作り、高速道路もドンドン整備していくことができたのです。つまり、アメリカは「消費意欲とドル」、日本は「消費意欲と生産力」という条件が整っていたからです。
現在の日本はどうでしょうか?
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