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北朝鮮危機で軍拡するな。韓国が、日本の対策を故意に曲解している

巷間囁かれていた米朝の軍事衝突という最悪の事態は避けられているものの、未だ緊張の続く北朝鮮情勢。我が国も米海軍との連携などを含め情勢の見極めに当たっていますが、台湾出身の評論家・黄文雄さんのメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』によると、韓国メディアは日本の「北朝鮮対策」を批判しているようです。さらに、今回新たに決まった韓国新大統領の文在寅氏が朝鮮半島有事の際の在韓邦人の保護を盾に、日韓合意の再交渉を迫ってくる可能性もあるとの危惧を示しています。

【日韓】日本の対北朝鮮対策を「悪意的に」曲解する韓国

日本が初の米艦防護、朝鮮半島危機に乗じて軍事活動活発化

海上自衛隊で最大級の護衛艦「いずも」が、アメリカ海軍の艦船防護の任務につきました。これは安全保障関連法で可能になった初の任務で、5月1日午前10時に横須賀基地を出航し、午後には千葉県房総半島の沖合で、米海軍の補給艦と合流したそうです。

NHKニュースは、「いずも」は2日にかけて補給艦の周辺で警戒監視活動を行い、四国沖の太平洋で分かれたあとに、東南アジアなどを訪れる長期航行に向かうことになっていると報じています。

海上自衛隊の元海将で金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、もともと「いずも」はヘリコプターの発着ができる準空母であり、本来であればイージス艦などに護衛してもらう側の艦船だと指摘しています。

また、北朝鮮有事を想定している場合、太平洋側には脅威はないと考えられるため、米艦防護というよりも、日米同盟の結束感をアピールする狙いがあるのではないかと論じています。

一方で、搭載ヘリコプターによる哨戒活動、あるいは潜水艦対策には有効だという専門家の意見もありますが、いずれにせよ、日本が集団的自衛権を含めた安全保障体制を一歩進めたことは評価できます。

しかし、これに対して警戒心をあらわにしているのが韓国です。朝鮮日報は「朝鮮半島危機に乗じて軍事活動活発化」と、いかにも批判するような見出しを掲げて論じています。

もともと韓国のメディアは、ここ数週間、日本が朝鮮有事に対して警戒することを「騒ぎすぎと批判してきました。

ハンギョレ新聞は、韓日本大使館が4月1日に在韓日本人への「安全マニュアル」に待避施設情報を追加、11日には「海外安全ホームページ」に「朝鮮半島情勢に関する情報に注意すること」と書き加え、韓国内の日本人学校にも注意要請Eメールを送るなどの対策を講じていることを伝えています。

また、稲田朋美防衛大臣の「自衛隊が韓国内の日本人を救出することもありうる」、石破茂元幹事長の「ソウルは火の海になるかもしれない」という発言を批判的に紹介しています。

[社説]度を超した日本の「朝鮮半島危機説」煽り立て

ハンギョレ新聞は、20万人の自国民が韓国に居住するアメリカでも特別な動きは見られないのに、日本が大げさに騒ぐのは、朝鮮半島危機説を煽って、自衛隊の武装強化と敵基地攻撃能力保有を狙っているためだと論じています。また冒頭の朝鮮日報も同様のニュアンスを匂わせています。

しかし、在韓米軍は6月にも民間人の海外避難訓練を実施することを決定しています。在韓米軍も朝鮮有事に備えていることは明らかでしょう。

4月29日には、北朝鮮がミサイルを発射したことで、東京の地下鉄が一時的に停止となりました。たしかに少し大げさな部分はあります。

しかし今年の3月17日には、3・11東日本大震災の原発賠償訴訟において、「巨大津波は予見できたはず」ということで、国と東電に対して賠償命令が出され、リベラルメディアも「画期的な判決」と礼賛したように、0.1%でも可能性がある場合にそれに対応しなければ、行政の不作為として責任が追求されるのが現在の日本です。

今回の朝鮮有事への日本の対応について、韓国のみならず日本のリベラル派も同様に「騒ぎすぎ」と言っていますが、そういう人たちの多くが、上記の「巨大津波は予見できた」論に賛同しているのは、矛盾以外の何ものでもないでしょう。実際に北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返しています。

それこそ危機は予見どころか目前に迫っているわけですが、リベラル派は国の責任を追求し、その弱体化につながることには賛成ですが、逆に国の守りの強化につながることには反対、といった反国家主義的な意図が透けて見えます。

米軍との一体化で自衛隊が狙われるという懸念を表明するリベラル派も多いのですが、朝鮮有事が起これば、そもそも日本も当事国化するのは必然です。後述しますが、韓国内の邦人保護の問題もあります。

また、日本がこれほどナーバスになっているのは、韓国の政情が不安定になっていることも一因でしょう。元陸上自衛官の佐藤正久参議院議員は、朝鮮有事の際の邦人保護について、「韓国の同意がないと自衛隊は入っていけず、憲法9条との関係で武力行使できない。あくまで警察機能しか持てない」と述べています。

また、元防衛大臣の森本敏氏も、韓国が日本の求めに同意しない場合、重要影響事態ということでアメリカから韓国に要請してもらうしかないと述べています。

北朝鮮有事勃発時、在韓邦人の救出は「韓国の同意がないと自衛隊は入れない」 受け入れない理由は歴史的背景

日本の動きに常に「悪意的に捉える」韓国ですから、朝鮮有事の際に日本の邦人保護のための自衛隊出動を拒否することは大いに考えられます。加えて、有事の際にトップが先に逃げてしまう「先逃」が文化となっている国ですから、そもそも政府機能が完全に停止してしまう可能性もあります。

実際、朝鮮戦争の際には李承晩大統領や韓国軍が国民を置いて真っ先に敵前逃亡し、しかも敵から追われることを危惧して漢江の橋を爆破したため、多くのソウル市民が逃げられずに北朝鮮軍に虐殺されたことは有名な話です。セウォル号の沈没でも、船長が真っ先に逃げたことが話題になりました。

一方の日本は敵地先制攻撃については憲法での解釈上可能かどうかを検討している段階ですし、できたとしても現在の自衛隊の装備的には不可能で、仮に爆撃機を飛ばしても、燃料問題で帰ってこられず、片道切符だけだともいわれています。

韓国はつねに北朝鮮より日本の動きを警戒するため、専守防衛能力しか持たない日本は、ナーバスにならざるをえないわけです。

しかも今週は韓国で大統領選挙が行われました。そして、その最有力候補で勝利宣言を出した文在寅氏は、勝利を確信して暴言を連発していたと報じられています。文在寅は、自らに対する共産主義者だとか従北であるといった批判に対して、放送禁止用語を連発させて罵っているそうです。そして「極右保守勢力を完全に壊滅させる」とも発言しています。

文在寅氏は選挙期間中、慰安婦問題の日韓合意も、在韓米軍へのTHAAD配備もひっくり返すと発言してきました。彼が大統領になれば、日韓関係はさらに厳しさを増すことは間違いないでしょうし、朝鮮有事を利用して、在韓邦人の保護を盾に日韓合意の再交渉を迫ってくる可能性もあります。

歴史から見る朝鮮半島は、三国時代以前から現在に至るまで、ずっと内紛に明け暮れてきました。統一新羅の時代以降に統一王朝が成立するようになりましたが、それでも高麗朝に至るまで国王の平均2人に1人が殺されるか悲惨な末路を辿りました。

朋党の争いが全国規模に広がり、そして周辺国を巻き込んでいくというのも、歴史法則なのです。約100余年ほど前には日・清・露、現在も日米中が朝鮮問題に巻き込まれています。

日韓合邦にしても、「東洋永久の平和」というお題目のために、当時の新興国家であった日本が老獪な列強から「お前が責任を取れ」と言われたために、日韓双方に賛否両論がありながらも、日本は「火中の栗」を拾ったのです。日本の対外戦争は、たいてい朝鮮半島が絡んでいます。白村江の役も、元寇も、秀吉の朝鮮出兵も、日清戦争もそうでした。

北朝鮮の挑発や暴発の危機を前にして、まず韓国に対応しなければならないというのが、日本の悩みなのです。もちろん、次期韓国大統領の姿勢如何では、有事への予防措置として、韓国から邦人を一斉に引き上げる渡航禁止命令を出すということも、予防措置として必要となってくるかもしれません。

 

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台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

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