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「退職します」「じゃあ研修費払え」会社を訴えたら勝てる?

人事担当者の頭を悩ます、研修が終わった途端に退職をしてしまう新入社員。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、その新入社員の退職を食い止める手立てとして「研修費を徴収する」という案は法律的にセーフなのか、裁判事例を交えつつ解説しています。

研修後すぐに退職した社員から研修費を取ることはできるか

私が以前に人事担当者をしていたとき今頃の時期に悩んでいたことがあります。それは、新入社員の退職です。ちょうど研修も終わり「いざ本番!」というときに退職されてしまうのは、人事担当者としては、非常に頭の痛い問題でした。

もしかしたらみなさんの中にも同じような悩みを抱えている人がいるのではないでしょうか。経営者の中には「研修にいくらかかってると思っているんだ!」と、憤慨される人もいるかも知れません。これは、研修にかかる新入社員の交通費や宿泊費などの経費管理までしていた私にとってはリアルにその金額もわかるだけに気持ちは痛いほどわかります。そして、この問題は現在も社労士としてご相談をいただくことの多い内容でもあります。

では、どうしたら良いのか?

私が人事担当のとき営業部から提案された中に「すぐに退職した社員から研修費を徴収したらどうか」という案がありました。入社のときに「研修後、1年以内に退職したら研修費を支払います」という書類を本人に書かせてはどうかというのです(今も、顧問先から同じようなお話をいただくことがあります)。

では、果たしてこれは法律的に可能なのか? それについて裁判があります。ある美容院で、美容師見習いとして働いていた人が、半年で退職をしました。この人は入社のときに「(早期退職など)会社に迷惑をかけた場合1ヶ月につき講習手数料として4万円を支払います」という契約をその美容院としていました。そこで、その美容院は研修に対する講習手数料として30万円を請求したのです。

では、この裁判はどうなったか?

美容院が負けました。その理由は、以下の2点です。

これは、別の美容院の裁判や医療法人の裁判でも同じような判断がされています。

いかがでしょうか?

「すぐに退職した社員から研修費を徴収したらどうか」という考えは、気持ちとしてはわかります。ただそれが、「そうすれば退職が減るのでは」「かかった経費を少しでも回収したい」という目的であれば、別の方法で行うしかありません。

特に「退職防止」であればもし仮に早期退職した場合に研修費を取ることが法律で認められていたとしても改善することは難しいでしょう。なぜなら、退職の本当の理由の解決にはなっていないからです。

縛りを作って、仕事を続けさせることを考える前に、その本当の理由を解決するために何ができるかを考えることが大切なのではないでしょうか。

※今回の裁判例とは逆に、海外留学費の返還が認められたケースもあります。それは、その留学が業務と関係が無く社員個人のメリットが大きいため本来はその費用は会社が負担すべきものではない、などの理由からです。詳細はまた別の機会に。

image by: Shutterstock.com

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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