誰かにしたこと、言ったことに対して、思うような反応が返ってこなくて、ガッカリした経験はありませんか?今回の無料メルマガ『人間をとことん考える(人間論)』では、著者で薬剤師の小原一将さんが、自身の「苦い経験」を通して学んだ「人間関係のバランス」について言及しています。
人間論「自分の行動の影響を考えてみる」
自分の行動というものは基本的に自己満足であると思うようにしている。相手のためと思って行動していてもそれが本当に相手のためになっているかは、私が分からないばかりかその相手にすら分からない時があるからである。
もちろん自己満足だから何をしても良いという意味ではなく、恩着せがましくしないようにしたり、こちらの真意が伝わらない相手に対して私の心が惑わされないようにしているのだ。こう思うようになったのは二つの思い出がある。
大学の頃に後輩に言われて印象に残っている言葉が一つ目である。「先輩は相手を変えようとするばかりで自分は変えないですよね」と言われたのだ。
この頃私は、こういった文章を書いて大学のフリーペーパーを作成したり、ブログにも今考えるとかなり偉そうに持論を展開していた。今でもその際に書いていた考え自体は間違っていないと思うのだが、たしかに周りから見ると相手に対してばかり非難していると思われかねないと思わされた。
ただ、その後輩に対してもそうだし、サークルの後輩たちなどに関してもそうだが、こうあるべきであるといった形で、私なりにその人がより良くなるように考えて行動して発言していたと思っている。しかしその後輩からはそう思われてしまっていたのだ。
これを言われた時、そういう意味ではないのにという苛立ちと少しの反省をしたように覚えている。私としては後輩たちがその組織を今後背負っていかなければいけないため、ああしろこうしろと口うるさく言っていたつもりだった。彼らのためにと思っていたつもりだった。
そういった私の感情は届かず非難の意見をもらってしまったので腹がたってしまったのだ。しかしそれと同時に、相手ばかりを変化させようとして自分が変わっていかなければたしかにダメだとも思った。
大学の頃は夜が全く眠れなかったのでブログを書きながら自分を振り返り、毎日自省したり人間関係について悩んだりしていた。そのため自分が変化していないなんてことは全くなかったのだが、それでも自分が変わらなければ相手に対して求めるばかりではいけないと改めて思うことができた。
二つ目は社会人になって2社目の薬局に就職した時である。最初の薬局では、パートのおばさんしかおらず私が色々な提案をしても、一人でやってと言われてやる気をなくしていた。次の薬局では今度こそという思いもあったが、それと同時に少し大人になったのか、あまり周りの人を気にしなくなった。
その薬局で思ったことは、人それぞれ生活があり生き方があり、自分とは思っていることも考えることも違う。自分ががむしゃらに仕事をしたいからといっても、それを相手に押し付けても意味がないと思うようになった。
私の中でこれは周りの人達への諦めではなく、周りの人達をそのまま受け入れるようになったことだと思っている。仕事や人生を全て私の目線で捉えて、それを相手に分かってもらうように努力していたのが、まず相手のことを分かろうと思うようになったのだ。
一つ目で自分というものを常に省みる必要があると学び、二つ目で相手を受け入れることを学んだ。そういった中で最初に述べたようなスタンスが、今は自分にとってしっくりきているように思う。
現在私の中では最初に述べたように、自分の目線で相手のことを考えるのではなく相手の目線を想像して相手のことを考えて行動しながら、その行動は全て自己満足で行ったことであり見返りを求めるものではないと思っている。
こういった考えが本当に正しいかは分からないが、相手のことを考えすぎてもいけないし、独りよがりの意見になってしまってもいけないという思いからこのようなバランス感覚になっている。
バランスという言葉を使ったがそれも正しいかは分からない。相手目線と自分目線の綱引きのようなイメージを持って日々人間関係にアプローチしているが、全く違う価値観が存在している可能性もある。
自分と相手という一人称と二人称の関係性を考えるが、自分という一人称の気持ちを全て把握しているわけではないし、相手も同じように言える。自分の意見を主張していると思ってもそれは本当に自分の意見か分からなくなる時だってあるのだ。だからこそ人間と、人間が作る関係は面白いと思っている。
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小原一将この著者の記事一覧
■医師を目指して二浪したが実力不足のために薬学部へ。しかし、薬学には全く魅力を感じられなかった。哲学や心理学などの本を読み漁り、サークル活動やフリーペーパー作成など大学生活を薬学以外に費やした。 ■薬剤師資格を持たないまま卒業し、臨床心理士を養成する大学院へ進学。しかし、臨床心理学の現状に落胆。 ■薬学の勉強をし直して薬剤師資格を取得。薬局に勤務し今に至る。 人間とは何を考え、どのように行動するべきなのかを大学生活の4年間で考え抜いた。友情や恋愛、道徳や倫理などジャンルにとらわれないものを提供する。
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