MAG2 NEWS MENU

アベノミクス幻想、崩壊。来たるべき混乱期に備え日本がすべき事

7月2日に投開票が行われ、自民党が歴史的な大敗を喫した東京都議会議員選挙。この結果は、数々の疑惑が噴出しても答えようとしない自民党への不満や、世界情勢の急激な変化を受けて雲行きが怪しくなってきたアベノミクスへの懸念などが原因だと、メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者、津田慶治さんは指摘しています。津田さんは、トランプ大統領が進める管理貿易が世界経済の大幅縮小を招くとした上で、日銀は今後の経済大混乱を予測できていないと警鐘を鳴らしていますが、さあどうなりますか?

世界経済混乱で日本の金融政策は崩壊

トランプ大統領は第2のフーバー大統領になることが確実である。管理貿易にして、世界経済を大幅に縮小する。また、米中、米EU貿易戦争が起きることになる。さあ、どうなるか?

世界経済の大混乱

トランプ大統領は、米国国内の鉄鋼・自動車工場など昔の基幹産業の雇用を守るために、該当製品に対する関税を大幅に引き上げている。このため、中国やドイツとの貿易戦争が起きることは確実である。中国は対抗処置を取り、米企業を中国市場から締め出すことになり、米・自動車や産業機械などの企業の業績が縮小する。米企業の中国依存度は大きく、その市場を失い、利益は半分以下になる。もちろん、アップルなど先端企業も締め出される。そして同じことがEUでも起きることになる。

米ダウ、ナスダックなどの株価は大幅な調整になることが予想できるし、世界経済の大幅な縮小になる。現在、世界の株価が上昇しているが、世界的に株価は大幅な調整になる。大恐慌に匹敵する経済縮小になる可能性があるのだ。

米国は世界の指導者から降りたが、それでは次の世界の指導者は誰なのか?

中国は、米国とは違うが、一部の国の企業を締め出すことになるので、世界の指導者にはなれない。また、政治的な理由から韓国企業などを締め出すので、中国との経済関係は非常に難しいし、それは自由貿易ではない。

ということで、候補はドイツと日本である。このため、日EU経済連携協定(EPA)を締結して、世界の自由貿易を守ろうとしているが、GDPの1位、2位の国が管理貿易になるので、世界の経済混乱を避けることはできない。

しかし、日本は安全保障上、米国との関係を切れないために、米国に妥協することになる。自動車などの輸出をしないで米国国内で生産するなどの対応策を取り、かつ米国産のシェール・ガスなどを輸入して、貿易のバランスを取ることになる。一方でドイツは、米国に対して原理原則を主張できる。そのためには、安全保障を米国に頼らないことが必要であるが、それを十分実行できる余裕を持っている。ということで、世界の指導者はドイツになる

日本はドイツをサポートする位置づけが最適だろう。


日本の政治環境も混乱に

今までは、安倍政権が安定していたので、日本の株価も上昇していた。しかし、自民党は自滅した。森友学園、加計学園、豊田議員のパワハラ、稲田防衛大臣の発言、下村氏の闇政治献金などの問題が急に浮上してきた。女性の働きやすさが政治課題であるので、金子政務官の公用車での子供の送迎は新潮社の方がおかしいが、菅官房長官の前川前事務次官への誹謗や二階幹事長の新聞誹謗なども自民党の横暴さと国民は思っているので、都議選は自民党、民進党ともに負けた

この自民党への都民の審判は、アベノミクスに対する懸念でもあると見える。アベノミクスで、今後の景気後退局面を乗り越えることができるのかとの疑問が起きている。

目の前に世界経済の大混乱があり、大幅な株価の調整と景気後退があることは自明で、FRBもECBもそれに備えるために、至急に出口戦略をして、景気後退局面に向けてのりしろを作ろうとしている。

FRBの戦略

FRBは、利上げと資産縮小の2つを至急に行うようである。トランプ政権が中国やEUと貿易戦争になる前に、のりしろを作る方向である。このため、今年中に始めるとしているし、議会には次期QE(量的緩和政策)に間に合うように株の買い取りもできるような法の整備をしている。

このように、世界的な経済縮小に備えて、米国は準備をしている。

ドラギECB総裁もEUと米国の貿易戦争が起きると思い、出口戦略を行うとした。しかし、目の前の恐慌に対して、日銀はのんびりした対応をしている。このまま、金融緩和を行うとしたのである。日銀は、今後の経済大混乱をわかっていない


金融緩和がいけない理由

景気後退局面になると、出口戦略を行う米国やEUとは金利差がある。このことで円安になり、輸入物価が上がりインフレが起きる。しかし、景気後退であり、給与は下がり失業者は増えていく。この現象はスタグフレーションである。国民の生活はますます困窮していくことになる

この時、日銀はより大きな量的緩和ができるのかというと、すでに国債を買いすぎて、国債市場は機能低下しているし、市中に国債がない。

もう1つがETF買いであるが、現状はPER14倍であり株価はまだ低い位置にあり、買っても問題がないが、景気後退で企業業績が低迷したとき、PER20倍以上となる。この時、ETFを買い続けると株価が下がらず高すぎで、個人投資家も外人投資家も買えない。このことで東京市場の機能低下を起こすことになる。

このため、高いときには売り、低いときには買うというようなルールを作らないと、東京市場の機能低下や機能不全になってしまう。

日銀の量的緩和期間は、長すぎである。金融政策に頼りすぎているのがアベノミクスであり、3本の柱があったが金融緩和のみに頼ったことで、大きな問題が起きることになる。金融緩和だけで景気を維持させて、社会構造の改革もできず、新産業も生み出せなかったことで、アベノミクスは失敗である

日銀の金融緩和、量的緩和は、経済崩壊までの時間を延ばすことはできるが、経済再生、経済復活には社会構造の改革やイノベーションが必要なのに、それを十分に行わなかったことによる咎めを受けることになる。

どうすればよいか

何を目指すかである。経済成長を目指すことは無理である。日本は世界でも成功している貧富の差の少ない国であるし、それを目指すことである。しかし、個人のやる気は維持して全員が将来への希望を失わない社会にすることだ。このため社会主義国ではない

この目標を実現するために、日本は将来の社会構造を選択する必要がある。人口減少の対応策を打たないと、社会保障制度も崩壊する危険がある。

このため、高所得な移民として米国のIT企業の本社を日本に移すにしても、高収入の外国人を増やすにしてもメイドなどの単純労働者が必要であり、国際化はすべての分野で必要になる。

また、国の税制を福祉国家的にする必要があると思う。日本の治安の良さも貧富の差が少ないことによるので、それを維持する必要があるとみるかどうであろうか?

image by: Shutterstock.com

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け