一億層活躍がうたわれ、女性の社会進出が進む現代。選択肢が広がり、女性の生き方はどんどん多様化しています。しかし、専業主婦を選んでも、会社で立派なキャリアを築いていても、どこか不満や迷いのあるひとは多いのではないでしょうか。そんな悩みを抱えた人のために、メルマガ『ちょめの成功脳トレ』の著者である投資家ちょめさんが、本当の成功とは何かについて、オリジナルの寓話で説明されています。
オリジナル寓話 【 2人の女 】
むかーしむかしある所に、デザイアとリタという、2人の女がおったそうな。
2人とも同じ田舎町の生まれで幼馴染、片や女優として、片やデザイナーとして、夢を追い掛け一緒に都会へ。お互い励まし合って日々を懸命に過ごしたそうです。
2人の出会いは高校に入学したての頃、同じ部活に入部したのがきっかけでした。たまたま同じ日に入部届を出しにいき、同じタイミングで部活説明を聞きました。いつも明るく前向きなデザイアと、ひたむきで真面目なリタは、お互い認め合い、いつしか夢を語り合える親友として、無くてはならない存在となっていきました。デザイアは演劇部の花形女優を目指し、リタは裏方として衣装を担当しました。
3年の卒業を前にデザイアは主演女優となり、リタはデザイナーの責任者として、文化祭を大成功させ、その成功体験は2人をさらに大きな夢へと駆り立てました。
高校を卒業するとデザイアは都会の大きな劇団へ見習いとして参加させてもらい、リタは有名なデザイナーを多数輩出しているデザイン専門学校へと入学しました。2人とも厳しいレッスンや制作、生活を支えるアルバイトに疲れ果ててましたが、夢へと向かう毎日にツラさは感じず、充実した日々はアッという間に過ぎました。
その間2人にはチャンスが訪れたり、挫折したり等、様々な出来事が起こります。雑誌に載ったり、小さな賞を取ったりしましたが、なかなか大きな成功は訪れず、それでも腐らず、前向きに頑張ってればいつか必ず報われると信じ頑張りました。恋人も出来ましたが、夢の為に障害となると思い泣く泣く別れた事もありました。
2人の支えとなっていたのは、高校時代大好きだった有名な女優のインタビュー、『諦めない限り、夢は必ず叶う』という言葉で、それを胸に突き進んでました。
しかし田舎を出てから10年、28歳となった2人は、さすがに不安を覚えます。
—————-そんなある日、2人に転機が訪れます。
デザイアが人気小説が原作のドラマに、比較的大きな役として抜擢されたのです。彼女が喜び勇んで走った先は、この話を真っ先に伝えたいリタのアパートでした。
デ「聞いて聞いて!ついに私、端役じゃなく大きな役を掴みとる事が出来たわ!」
・・・・・しかし、喜んでくれると思ったリタの顔は、どこか浮かない表情です。
リ「おめでとう。でも私・・・・随分と前から親から帰ってこいって言われてて。こないだ実家へ帰省した時にバッタリ会った高校時代の彼氏と連絡取ってて、結婚しないかって言われてるの。色々迷ったんだけど、それも良いかなって」
デ「何言ってるのよ!今まで一緒に頑張ってきたんだから、諦めちゃダメだよ!」
リ「デザイアはキレイでいつも明るくて頑張ってて、きっと成功すると思ってた。でも私には才能が無いし、このままここで続けていく自信が無くなったんだ」
デ「努力不足のクセに何言ってるの?諦めなければ夢は叶うんじゃなかったの?」
リ「やっぱりデザイアは私を見下してたんだね。それがずっと気に入らなかった」
2人はそれまでの不満を吐き出しあったことで大喧嘩し、絶交してしまいました。
—————-そして月日は流れ、喧嘩別れから3年の時間が過ぎていました。
デザイアはドラマはヒットしたものの注目はされず、また端役ばかりの舞台女優。しかしリタに対しては、「あの子は夢を諦めた負け犬」と心の中で罵っています。
リタは大きな農家に嫁いで子供を2人授かり、姑らに苛立ちながらの忙しい日々。しかしデザイアに対しては、「あの子は夢にしがみつく負け犬」と憐れんでます。
ですが本当は……デザイアは幸せそうなリタの話を間接的に聞いて羨ましく思い、リタは夢を追い続けてるデザイアをメディアで見かけては羨ましく思ってました。
そんなある日、突如神と思しき初老の男性が降り立ちデザイアにこう告げました。
神「もし人生を後悔してるのなら、対価と引き換えにお前の願いを叶えてやろう」
デ「私は夢を追い続けてきましたが、いつしか諦めに似た気持ちを抱いてました。でもリタの存在が諦めさせてくれず、意地になって続けてたように思います。本音で言えば私はリタが羨ましい。あんな風に家族に囲まれて生きたいです」
神「ではお前は今までの生活を手放し、田舎で主婦生活をしたいと言うのだな?」
そして同じ頃、リタの所へも光をまとった神が現れて、同じセリフを告げました。
神「もし人生を後悔してるのなら、対価と引き換えにお前の願いを叶えてやろう」
リ「私は夢を諦めましたが、本当は結婚などせずずっと追い続けたかったんです。でもデザイアが大役を掴んだと聞き、負けた気持ちで諦めたフリをしました。本音で言えば私はデザイアが羨ましい。あんな風に夢を追い続けたいんです」
神「ではお前は今までの生活を手放し、都会の暮らしに戻りたいと言うのだな?」
—————-こうしてデザイアとリタの2人は、お互いの人生を奇妙な形で交換しました。
優しい神は3年前のあの日、喧嘩別れをしなかった形でリセットしてくれました。
デザイアは地元で結婚し2人の子供をもうけ、慣れない家事に日々奮闘してます。リタは今も都会で夢を追い掛け、チャンスをつかもうと日々貪欲に頑張ってます。当然2人は神との契約・やり取りした記憶はあるものの、新たな周りの人も含め、現在与えられている人生に辻褄の合う記憶を埋められ、生活に支障はありません。
—————-さて。そこからさらに3年。
デザイアは毎日家事に子育てに忙しくしつつも、刺激のない毎日に苛立ってます。こんなハズじゃない。ここは私の居場所じゃない。この子たちさえいなければ…!リタのことを考えると、自分だけが置いてかれた気持ちになって惨めな気分です。電話で話せば、「結局ね、女の幸せはやっぱり家庭を持つことよ」と強がります。
リタは仕事に忙殺されつつも、仕事もプライベートも形にならずに焦っています。こんなハズじゃない。仕事で成功して、女としての幸せも掴むハズだったのに…!デザイアのことを考えると、女として終わってるような気がして不安になります。電話で話せば、「でも夢を追い続けるほど幸せな人生って無いよ」と強がります。
電話を切った2人の下へ3年前の神が訪れ、「 あの日の選択はどうじゃった? 」
デ・リ「 あの選択は間違ってました。もう一度前の私に戻ってやり直させて! 」
いかがでしたでしょうか?
お互いがお互いを羨み、また蔑み、自分がより良い人生を歩んでいると思いたい。
あなたはこの話を読んで、「なんて愚かな女たち」と一笑に付すかも知れません。ですがこれはたった2人の対比話であり、これを“ 自分と他人 ”に拡大すると、ほとんどの人が当てはまる精神作用、『人は比較の生き物』の証明となります。人類の進歩と発展の歴史は、この“誰かよりも良くありたい”が素地ですから。
結局この2人は『比較』をやめられない以上、同じ迷路に迷い込む事でしょう。更に時間を費やしたというサンクコストの効果から、益々諦め切れなくなります。
サンクコスト=既につぎ込んで返ってこないコストのせいで、非合理的な判断をしてしまう事。例えばゲーセンのクレーンゲームで、つぎ込んだ1000円が勿体ないからと、更に3000円つっ込んで損失を拡大させたり、ガチャで引き返せなくなる等。
おまけに「自分は成功するハズ」がうまくいかないことで認知的不協和に陥って、自分と異なる選択肢を選んだ相手を徹底的に否定することで自分の心を守ります。これを拗らせている限りは、彼女たちはきっと心から満足することはありません。
いつも不安と不満が先立ち、どこかにいる“理想的な生き方をしてる人”を思い、勝手に比較して落ち込み、大きな「不幸感」を抱いて生きていくことでしょう。『恵まれている自分』に目を向けることなく、いつも足りないから、ずっと不幸…
これは向上心とは異なり、見えない敵と戦っているようなものなので出口はありません。虚栄心に打ち克ち、妥協ではない“自分の幸せ”を掴む努力をする事が大切で、比較するとしたらどこかの誰かではなく、『過去の自分』だけだと理解すべき。
幸せというのは結局「心のありよう」ということに気付かなくてはなりません。
依存や刺激、罪悪感に麻痺、そこに共通するのは、『認知的不協和』です。この2人は対立しながら依存しあい、切磋琢磨する良い関係でありながらも、相手を出し抜こうという対抗心もあって、劣等感抱いたり見下したり忙しい。
それでも上手くやってこれたのは、「お互いに成功してないから」であって、ある日訪れた変化に、デザイアには『自分だけが夢を追い続ける不安感』が、リタには『自分だけが戦線離脱する喪失感』が、それぞれ押し寄せています。またお互いに酸っぱいブドウの論理・甘いレモンの論理が働いてますね。
酸っぱいブドウの論理=手に入らない物は良くない物だ→手に入らないブドウは酸っぱいに違いない
ex.)ダイエットできない = 食べたい物をガマンする方が体に悪い
ex.)結婚できない = そもそもメリットが無いから結婚したくない
ex.)就職できない = 自分に合った仕事じゃない、働いたら負けだ
甘いレモンの論理=これしか手に入らないなら最高の物だ→手に入れたレモンは甘いに違いない
ex.)彼女がブサイク = 美人は3日で飽きる、ブスは3日で慣れる
ex.)買った掃除機の性能が悪い = 安かったからコスパは悪くない
ex.)息子が非行に走った = 息子じゃなく付き合ってる友達が悪い
費やした時間やエネルギーが大きすぎる程に、認知的不協和が起こりやすいのですね。
サンクコストはコストが大きくなる程に引き返せなくなる確率が上がるので、「引き返した方が良いんじゃね?」と疑った瞬間が常に最適タイミングです。でも判断が遅れると、最初に気付いた時に比べてコスト量が大きくなるので、ズルズルと決断が遅くなって、やがてそれを肯定する心理が働くんです。
若い頃モテモテだった女性が、結婚できないまま売れ残るのはこのパターン。今の彼氏と妥協するくらいなら、昔もっと良い元彼がワンサカいたじゃんと。そこで結婚しなかったんだから、今さら妥協するなんて考えられない!と(笑)。でも当時よりも自分は歳食って劣化しているって事実を受け入れられてない。そして益々歳を取り、やがて妥協も先延ばしも地獄って状況に陥ります。
認知的不協和は生活のあらゆる場面で作用し、非合理的な判断をするもんで。その多くは無意識に不利益を被ってしまう可能性が高いので注意が必要です。食べ放題の店で美味しくないと感じたのに、食べ過ぎて苦しいとか愚の骨頂♪