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全米が禁止した「トランス脂肪酸」、なぜ日本は規制すらしないのか

マーガリンやショートニングなど、健康に悪影響をおよぼす「トランス脂肪酸」を含む油脂の使用が、3年後までに全米で禁止されることになりました。しかし、なぜ日本では規制すらされないのでしょうか? その疑問に『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者で医学博士のしんコロさんが答えてくださっています。

なぜ日本では「トランス脂肪酸」が規制されないの?

Question

先日、米国で「トランス脂肪酸」を全廃すると発表があったそうですね。私が少し栄養学を学んでいた10年位前には、NYでトランス型脂肪酸の販売禁止というニュースを確か聞いたと思いましたが…なんとこのたび、「全米で」となったのですね…。

トランス脂肪酸は、マーガリン、ショートニングなど日本のパンやお菓子などには必ずと言ってよいほど含まれていまして…(酪農家の減少によるものなのか? 日本ではバターの値段が高く、コストの問題などもあるのかもしれませんが)。これを多く含む食品を摂取すると、悪玉コレステロールが増え、体重増加や心疾患などにつながるとされているとのことなのですが…。

米国に比べて、日本では摂取量が少ないとの理由からなのか?規制どころか表示の義務化もされてないのが現状です。我が家の冷蔵庫からマーガリンが消えて久しいのですが…どうして、全米とは異なり日本国内においてはトランス型脂肪酸に関する規制などのアナウンスがされないのでしょうか? 真相はいかに? Dr.しんコロさん、もし支障がなければ…教えてください。

しんコロさんの回答

質問者さんの仰るとおり、米食品医薬品局(FDA)はトランス脂肪酸の原因となる油脂の使用を3年後までに全廃することを決めました。

トランス脂肪酸は、トランス型不飽和脂肪酸とも呼ばれ、人工的に水素を付加して硬化させた製品を製造する過程で発生します。身近なところでは、マーガリンやショートニングに多く含まれます。アメリカではこれらの油脂をパン、ケーキ、ドーナツ、スナック菓子などに広く使っていた経緯があります。

トランス脂肪酸を一定量摂取するとLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増加し、心疾患のリスクを高めるという認識が広がりました。それを受けて2003年以降はトランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えています。

一方、日本では現段階ではトランス脂肪酸の規制は行われていませんし、使用している場合でも表示義務はありません。これはなぜなのでしょうか? アメリカではトランス脂肪酸を使用した食品が多く、またそういったものを食べる食文化があるため、2000~02年におけるアメリカ人1人の一日あたりの摂取量は5.6グラムで、総エネルギーの2.2%でした。

WHOは03年、一日あたりの摂取量を1%未満に抑えるよう勧告しました。ところが日本ではアメリカと食文化が違うため、06年の調査では日本人の摂取量は一日平均0.7グラムで、総エネルギーの0.3%とWHOのガイドラインを大きく下回っていました。これを受けて「日本の通常の食生活では健康への影響は小さい」と判断された経緯があります。

とはいうものの、トランス脂肪酸が健康に良くないことは明らかなので、消費者庁は食品メーカーに対してトランス脂肪酸に関する情報を自主的に開示するよう要請しており、一部メーカーがトランス脂肪酸の使用を削減している動きもあります。加工食品や外食など、日本ではトランス脂肪酸を100%避けることは無理かもしれませんが、せめて自宅ではマーガリンの使用を避けるなどしたいものですね。ちなみに、アメリカではトランス脂肪酸を含まないタイプのマーガリンも売られています。

image by:Shutterstock

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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