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日本も移民を受け入れるのか?揺れるEU、迫るテロの危険性

押し寄せ続ける難民の処遇を巡って頭を悩ませる欧州各国。そもそも事の発端はどこにあるのでしょう。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんが「この事態はEUの自業自得」とした上で、事の経緯やEUの今後、そして日本への影響を説きます。

EUの難民問題

難民問題で揺れるEUであるが、シリア難民やソマリア難民ではなく、経済難民がそのほとんどである。その難民の数は80万人という多数になり、EU諸国が押し付け合いを始めた。さあ、どうなりますか? 検討しよう。

経緯

この難民問題のトリガーは、ドイツの難民・移民政策である。ドイツは、現在日本と同じで国民の平均年齢が46.1歳と少子高齢化が進んでいる。このため、勤労・子供世代の人口を増やしたいので、積極的に移民・難民を受け入れているのである。

年間80万人の移民・難民を受け入れて、その移民・難民に成人単身者1人につき月額364ユーロ(約3万6,000円・家賃と暖房費はこれに加算される)を給付することになっている。

普通の移民は、初めに若者が単身でドイツに行き、仕事ができるようになり、最低賃金時給8.50ユーロ(約1,150円)、月収が16万円をもらえるようになってから家族を呼び寄せる。EU内の労働者は移動が自由であるが、域外からは難民しか労働ができない。

このため、難民としてドイツに家族5人で来ると、月15万円になり、生活ができることになる。

このため、ドイツを目指してアフリカや中東から難民と称して多くの人たちが家族、子供を連れて海を渡ってくるのである。本来はアフリカ中東まともな国家があれば、それを止めることができるが、EUはリビアやシリアの政府を独裁国家として「アラブの春」の民主化運動で力を使って潰してしまった。このため、EUへ難民が押し寄せることになり、自業自得という面もある。

この多数の難民のため、通り道のギリシャ、マケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリアなどは、なるべく早く通過してもらおうとして難民専用の列車を警察の護衛付きで運行していた。

ギリシャは船で着いた難民と称する人たちを、簡単な質問で難民と認定してしまう。そして早くギリシャから出て行ってもらおうとするのである。EU内では難民認定は、最初の国が行うので、ギリシャ受け入れる難民となってしまう。

しかし、ドイツが緊急措置として国境を開放し難民を盛大に歓迎してからわずか1週間。再び国境を閉ざすと発表した。欧州の自由な越境を認めた「シェンゲン協定」の運用が困難になったとして難民の越境を阻止したことは難民にとって衝撃的な政策転換であった。しかし、次から次へと押し寄せる難民の数は予想をはるかに超えており、とても対処しきれなくなったからだという。

このドイツの難民受け入れ停止で、ハンガリーはセルビアとの国境を封鎖したので、クロアチアに向かうことになり、通過各国が難民を押し付け合い始めた。そして、通過各国に難民が多数、立ち往生している状態になっている。

もう1つが、この難民の中にイスラム国をはじめとする過激派のメンバーが多数、潜入しているとみられており、テロの拡散につながる危険性もはらんでいる。

ということで、過激派侵入阻止とドイツも自国の収容人数を超えてしまったことで、EU各国に難民を割り当てしようとし始めた。

このため、EUは、欧州に殺到する難民を各国が分担して受け入れる案を内相・法相理事会で協議したが、合意できなかった。

ロシアの動き

この難民の動きに合わせて、ロシアが「人道」を前面に、シリアのアサド政権への軍事支援を強化している。ロシアは、シリア紛争をISに対する「対テロ戦争」と再定義して、欧米と連合軍を組み、アサド政権の維持を目指している。

イスラム国が難民を大量にEUへ送り出しているから、先にイスラム国を皆で打倒して元の形にして、その後、選挙でシリアの政権を作れば良いというのである。

ロシアの狙いは、シリアにあるタルトース海軍基地の維持である。すでに海軍陸戦隊はタルトースに上陸しているのは確認できているし、ロシアも認めている。しかし、欧米はそれ以上の軍隊を派遣していると疑っている。

しかし、シリアのムアレム外相は、シリアの衛星TVのインタビューに次のように答えた。「シリアは、もし必要が生じれば、ロシア連邦軍に対して我々の側に立って戦ってくれるよう要請するだろう。現在、ロシア軍は、シリア領内での戦闘行動には参加していない。現時点で、我々はロシア軍との共同作戦は行っていない。シリア当局は、政府との合意なく我が国の領内に存在するいかなる軍隊も、国家主権の侵害とみなす」というが、どこまで信用して良いかわからない。

ロシアは難民問題を契機に動き始めている。

ロシアは、プーチン大統領が国連会議の演説で、イスラム国の討伐を世界全体で行うことを提案し、安全保障会議で合意したいようである。

EUの今後

難民のほとんどが、イスラム教徒であり、異文化の人たちを多数、EU諸国は受け入れることになる。英国も大英帝国当時に多数のイスラム教徒の移民を受け入れたが、その子孫は英国のキリスト教社会に馴染めずに、イスラム教過激派に参加している。

英国の衰退は社会的な混乱も影響している。経済的な繁栄が過ぎると、最初に貧困化するのは、移民たちであり、社会的治安問題が起きやすくなる。子孫たちは英語しかできず、故郷には帰れない。このため、英国社会にいるが適応できずにいるので、イスラム教過激派は、その人たちに狙いを定めて勧誘している。

ローマ帝国の崩壊もゲルマン民族の移民が大勢力になり、兵士の多くがゲルマン民族となったことで、反乱が起きて崩壊したように、社会混乱の初めに異文化移民難民の移動がある。

少数の異文化難民の受け入れは、同化せざるを得ないために異文化難民を受け入れても問題が起きないが、多数の難民を受け入れると、これは文化的な摩擦を起こしてしまう。

勿論、米国のように最初から多数の異文化移民たちから成り立つ国家は、新しく違う文化の難民を多数受け入れても問題は起きないが、EU諸国や日本のように単一民族の国家は、注意が必要である。

特に、イスラム教とキリスト教は歴史的に十字軍などの紛争が多く、社会適応ができない時に過激思想に向かう危険性がある。

日本への影響

ドイツは少子高齢化問題を移民で解決しようとしているし、難民も積極的に受け入れようとしている。しかし、日本は難民を2014年に11人しか受け入れていない。

このため、国際的な批判を受けており、法務省は難民の受け入れ審査の迅速化を行うという。政治難民しか日本は受け入れていない。経済難民を認めていない。これは正しいと思うが。

また、移民政策では、法務省は外国人の入国や在留に関する今後5年間の施策の指針となる「出入国管理基本計画」をまとめ、専門的な知識や技術を持った外国人の受け入れを現在の基準にこだわらず「幅広い視点で検討する」と明記。当面は既に在留資格への追加を決めた介護分野で促進し、今後も拡大を検討するという。

日本は、ドイツと同じような少子高齢化が進んでいるので、文化的親和性がある親日仏教国家の移民を積極的に受け入れるべきであるが、それをしないために、失われた20年が過ぎ、一時的に回復したが、長期停滞モデルのままである。

しかし、EUの難民問題、中国経済の減速、米国の利上げなど、世界的な問題が累積してきた。

さあ、どうなりますか?

参考資料:Europe migrant crisis: Hungary PM calls for ?3bn Syria aid package

image by: Shutterstock

 

国際戦略コラム有料版』より一部抜粋

著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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