部下や子どもが自分の言うとおりに行動しないとき、あなたはどのように対応していますか? 大きな声で怒鳴ったり、激しく叱責したり、恐怖心によって言うことを聞かせようと考える方も少なくないのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『起業教育のススメ~子供たちに起業スピリッツを!』では、著者で長く人材育成に携わってきた石丸智信さんが「恐怖心によって押さえつけても、部下や子どもは本当の意味では成長しない」として、自発的な成長を促す言い替えの例を紹介しています。
恐怖心によって、人は、主体的、自発的に行動できるのか
企業の経営者をはじめ、組織のリーダーの立場にある方々のお話しを聴くと、部下であるメンバーに対して、自らが考えて、判断、決断し行動できるような、主体的、自発的、自立・自律型人財を求めているように思いますし、育成しようともしているように感じます。その反面として、リーダーがメンバーに対して、様々なことについて指示や命令を出すことで、正確にそして迅速に行動して欲しい、という思いもあるのではないでしょうか。
一見すると、二律背反のように見えるテーマを踏まえて、「恐怖心によって、主体的、自発的、自立・自律型人財を育成できるのか」という切り口で考察していきたいと思います。
では、リーダーがメンバーに対して指示、命令などを出す場面において、メンバーが指示や命令などとは違った行動をしたとしたら、その時、リーダーはどのような対応を取りがちでしょうか。例えば、「何やっているんだ!」「指示と違うじゃないか!!」などといったように、怒りつけたり、怒鳴りつけたりして、メンバーに対して何らかの罰を与えてしまいがちではないでしょうか。
こういったリーダーからの圧力は、部下であるメンバーから見ると、怖さ、恐怖心を持ちます。そこで、リーダーは、メンバーに怖さ、恐怖を感じさせることによって、部下を行動させようとしてしまいます。その結果として、そのメンバーは、どのような人財になってしまうでしょうか。リーダーからの指示や命令だけを忠実に守り、行動するようなメンバー、いわゆる、指示待ち的な人財になってしまうのではないかと思います。
では、こういった受け身な姿勢であるメンバーが、リーダーから言われた仕事をしっかりできたとして、はたして、そのメンバー自身は成長したことになるのでしょうか。そして、今後、主体的、自発的、自立・自律型人財へと成長していくことは可能でしょうか。
たしかに、上司であるリーダーの目の行き届くところ、圧力を掛けることができるところでは、しっかりとした仕事をするので、一見すると、成長しているように見えます。見方によっては、そのメンバーが、主体的、自発的に動いているように見えるかもしれません。ですが、リーダーの見えないところであったり、リーダーからの恐怖心を感じないところでは、メンバーは、主体的、自発的に行動することができないことも考えられます。
リーダーからのプレッシャーなどにより、メンバーに恐怖を感じさせ、行動へと駆り立てていくという手法は、短期的に見れば、メンバーを成長させているように見えますが、長期的には、メンバーの成長は止まっていくことになるのではないでしょうか。
ここまで、企業などの組織におけるリーダーとメンバーとの関係を例にして、考察してきました。引き続き、同テーマについて、こどもたちと親御さん、習い事の先生、スポーツの監督・コーチなどとの関係を例として、考察していきたいと思います。
「恐怖心によって、人は、主体的、自発的に行動できるのか」というテーマは、企業などの組織におけるリーダーとメンバーの関係だけではなく、子どもたちと親御さん、習い事の先生、スポーツの監督・コーチなどとの関係にも、当てはまるところがあるように思います。
例えば、子どもたちに対して、「自分から勉強をして欲しい」「自分から進んで練習して欲しい」などといったように、子どもたち自らが、主体的、自発的に考えて行動を起こして欲しいと思われる方が多いのではないでしょうか。ですが、そのように思う反面、ついつい子どもたちに対して、あれこれと指示してしまうこともありますね。
そして、子どもたちが、指示した通り、言われた通りにしないと、リーダーがメンバーに対して言ったように、「ちゃんとやりなさい」「言われた通りにしなさい」などいったように、子どもたちに対して、自分の感情などをぶつけるかたちで、怒ってしまったりすることもあると思います。こういったプレッシャーによって、メンバーが感じた時と同じように、子どもたちも、恐れを感じると思います。その恐れから逃れるために、その場では、言われたように行動してくれるようになるかもしれません。
しかし、その行動がその後も続くかというとなかなか続かないように思います。私自身も、子どもの頃を振り返ってみると、圧力によってその場ではちゃんとするのですが、それが続かなかったことを思い出します。
メンバーや子どもたちに対して、プレッシャーをかけてしまう場面もあるとは思います。その上で、自分から率先して考え、行動できる主体的、自発的な人財へと成長していくことを考えると、プレッシャーをかけ続けて恐怖によって、メンバーなり、子どもたちの行動を促すことは、マイナスに作用することもあるのではないでしょうか。
主体的、自発的な人財へと成長していくのを促していくには、一方的なプレッシャー、圧力などによって、その通りに行動させるだけではなく、「この指示の目的は何だと思う?」「あなたは、○○についてどう思う?」「あなたの意見を聞かせて?」などといったように、相手に考えさせたり、行動させたりする機会を設けることが重要になるのでしょうね。
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