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日本は怯えている。好景気の米国に漂う「1989年」の既視感に

一時は破綻寸前とも言われていた中国経済が急速に息を吹き返す一方、トランプ大統領率いる米国経済は「アメリカファースト」の政策を重視。景気は沸騰状態になっているものの、極めて短期的なものであるとみられています。そんな米中の狭間にいる日本は、強力な経済政策を打ち出せないまま現在に至っていますが、このまま指をくわえて見ていても良いのでしょうか。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、「ひとたび米国で大恐慌が起これば、日本は他人事では済まなくなる」と警鐘を鳴らしています。

日本の生き残りの道

NY株式市場のダウは、1989年年末の東証株価指数の伸びとよく似ているし、上がり方も一緒である。東証のその後も我々は知っているので、非常に危険な印をNY株価に見ている。その後を検討しよう。

危険な金融経済政策

米国のトランプ政権が誕生して1年が過ぎた。法人税減税で企業利益が増大することが見込まれて、株は大幅に買われて、ダウは史上最高値になっている。その伸びが大き過ぎである。景気が沸騰しているように見える。

トランプ政権の経済政策は短期志向であり、国力がある間に、米国が最も得をする政策を推進している。移民の制限で自由な米国を捨て、多国間貿易協定のTPPからの撤退NAFTAからも撤退する可能性がある。韓国との2国間FTAも見直しを主張している。多国間貿易協定から離脱して2国間FTAを締結するというが、米韓FTAでも米国が赤字であると見直しになる。また、温暖化防止の枠組みであるパリ協定からも離脱した。

そして、法人税減税をしたことで、財政縮小で支出も減らす必要があるが、オバマケアなどの社会保障政策の縮小はできないでいる。この影響で予算が通らずに、政府機関の閉鎖の可能性も出てきた。このため、財政赤字が拡大することが確実で、米国債の発行高を増やすことが必要になる。

米国債を買っているのは、FRBと中国、日本であるが、米国は中国に対して相殺関税を多くの製品に掛けようとしている。中国は米国債を購入から売却にシフトするという脅しを米国に掛けている。この脅しだけで、米国国債金利の上昇を引き起こし、これにより、長期金利が上昇している。

もし、米国債を中国が売却開始したら、トランプ政権はFRBに米国債を買わせることになる。FRBは公定金利を上げながら、米国債を買うというアクロバット的な金融政策をとることになる。こうして、急な金利上昇を抑えることになるとみる。それでも金利上昇は起きる。

金利上昇が起きるとドル高になり、新興国の投資引き上げが起きて、世界的な景気後退局面になることが予想できる。

米国金利上昇でもドル安に

しかし、現時点、不思議なことが起きている。米金利上昇であるのに、ドル安ユーロ高円高が起きているのである。1ドル=110円まで円高が進んでいる。米中貿易戦争になったら、米国経済は大きく傷がつくと市場は見ているようである。

日本と欧州は、中国との良好な関係を促進する方向であり、米国とは違う動きをしている。短期的には中国の経済拡大に歩調を合わせたほうが経済的には得であるということを市場は知っているからである。それだけ中国経済は拡大して、米国経済より世界に影響力を持ち始めているのである。

経済的な面では、中国の方が米国より大きいという現実があることを知ることが必要である。

日本の金融経済政策は

日本の金融経済政策は米国より偏っている。労働人口が減少しているのに、単純な移民を行わないし、高級人材の流入を促進するために世界標準的な雇用・相続制度に見直さないので、海外からの人材流入も少ない。しかし、私は世界標準の雇用・相続制度がよいとは思わないので、高級人材の流入策を推奨しない

このため、人口減少になり消費が減り物価が上昇しないので、量的緩和を景気が良くても行い、金利ゼロ状態で国債を大量発行しても国債費が上昇しないことで、財政支出も減らして財政均衡化をしないというアクロバット的金融財政政策を行うことになる。

景気が良くても金融緩和量的緩和を行うことで、財政政策もタガがゆるみ、景気後退局面での金融政策の自由性は大きく失われていることを考量していない。しかし、日銀が今の局面で量的緩和を止めると急な金利上昇と円高になり、外需で企業は儲けているので、利益が減り景気が後退する危険がある。

また、金利が上昇すると国債費が極端に上昇して、1000兆円の金利ゼロでは、いくら多額でも金利ゼロであるので、国家予算での金利支払いの国債費もゼロであるが、1%になると10兆円、2%で20兆円、3%で30兆円になり、財政赤字が雪だるまのように膨れ上がり国家予算が破綻する可能性があるので、日銀も独断で量的緩和を縮小できなくなっている。

要するに、米国も日本も金融財政政策が「いびつ」であり、景気後退時のことを考慮していないことになっている。

景気後退時の日本は

米国のダウ株価を見ていると、危険な兆候が出ている。1989年の時と同じような上昇曲線になってきたことで、株式市場のクライマックスを予感できるようになっている。大衆が株式市場に来たら終わりであるというジンクスが実現している。

このままでは、グレイト・リセッションになるはずである。米国発の次の大恐慌になり、米国はトランプ大統領で世界の指導者ではなくなったが、経済の中心でもなくなる感じがしている。

そして、米国の大恐慌は日本にも大きな影響を与えることになる。

日本企業は、外需で利益を上げている。その外需の利益が大幅減少することで、日本企業の株価も大幅な見直しを受けると同時に、景気後局面で円高になり、輸出も伸びないことになる。税収も減り、国家予算を維持するためにも国債の発行量を増加させていくことになる。しかし、バーゼル3の影響で銀行は国債を買えない。このため、この国債を直接か間接に日銀が買うことになる。

日銀は、量的緩和の拡大したいが、日本国債のほとんどを買っているので、国が売る国債を買うしかなく、国債ゼロ金利は維持できるが景気対策ではなく、現状維持しかできない。円の通貨量は増加するので円安になるはずが、ドルより円の方が安定通貨であるので、世界的な景気後退局面でも円高になる。しかし、景気後退でも人材不足などでインフレが起き、スタグフレーションになる。

金利はゼロのまま、景気拡大策はないことになる。世界的な景気上昇を待つしかない。景気対策がないので、そのうちに石油などの資源が上昇して貿易赤字になり円安になり、より高いインフレが起きてくることになる。

そして、このままではゆでかえる化しかない。徐々に日本の国力は下がっていくことになる。国民は貧乏になる。

日本国民は危機の備えて貯金をするアリであるが、国家が借金をするキリギリスで、景気後退局面を考慮しなくなったことで、日本国民も景気後退時は苦難に陥ることになる。

日本の政策は

このままの方が安倍政権は良いのかもしれないが、日本国民は苦難に陥ることになる。それでは、どうすればよいのかというと、複合的な政策にするしかない。

本来は好景気時に、次の景気後退時の準備をするべきであったが、このコラムで提案した政策を1つもしていないことで、景気後退時に行うことになる。

が、移民政策を取らないなら衰退は仕方がないと考え、国民がそれでも幸福な生活が送れるようにすると考えるしかない。相当にアクロバット的な政策をとるしかない。

日銀にある国債だけを永久国債か100年国債にしてゼロ金利国債で国債費を下げることである。日銀を準国家機関化して、企業会計を止める。赤字でも倒産しないようにする

産業政策としては、生産性が高い産業を伸ばし、労働人口減少でも国力が維持できることを考える。生産性が高いのは、差別化ができている産業で、観光や物性探求型製造業、医薬品、農業と加工品など。

人口増加策としては、スウェーデンのような女性の出産優遇策を図り、数人の子供を産めば、女性と子供だけの母子家庭でもある程度の生活ができるようにする。反対に労働力確保のために、75歳まで働くことができる社会制度にして、年金などの削減を図る。

円安を防ぐためには、石油などのエネルギー資源の転換が必要である。再生可能エネルギーを可能な限り増やして輸入を減らすことである。また、農業の自由化で企業参入を促して大規模農業にして安い食糧を日本で作り、輸入を可能な限り減らす。国際競争力がない産業でも、生産性を上げて国内消費分の産業は維持する。

日本の衰退は仕方がないが、それでも豊かな生活ができるように、国は国家方針を見直して、こじんまりと生きる国家体系に移行するべきであると思う。

さあ、どうなりますか?

image by: shutterstock.com

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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