ハリウッドの大物プロデューサーのセクハラが大きく取り上げられて以来、各国で上がる「#MeToo」の声。お隣韓国でも同様の騒動が起こっているようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住の日本人著者が、現職の女性検事が訴えた「法務部幹部からのセクハラ被害」について詳しく伝えています。
女性検事のセクハラ暴露
女性検事(ソ・ジヒョン)のセクハラ暴露で、韓国は彼女にエールを送る動きに揺れている。主人公は、ソ・ジヒョン検事(女)。1月29日(月)に、JTBCという有名な夜8時台のニュース時間に、直接スタジオに来てソン・ソッキというこれもまた有名なMCのインタビューを受けた。ソ・ジヒョン検事は、2001年に司法試験43期合格なので、大体40歳前後かと思われる。
内容は、2010年(8年前)のセクハラ事件を暴露するものであった。検事たちをはじめ法務大臣までが参席するようなけっこう大掛かりなお葬式の場で(どういった葬式かは不明)、法務大臣がいるから、そのそばに座るようにと肘突きされて法務大臣のそばに座った。別の側に上司である安某検事が座った。その安なんとか検事が、酒に酔いながらかなりの時間に渡ってソ・ジヒョン検事の腰に手を廻してなで、体のあちこちをさわるような行為を続けた。検察体質の陰の部分も承知していたためか、その場ですぐに大声を張り上げてやめされるような行動は取らなかった(取れなかった)。
その後すぐ検察の中のその方面の係りに報告し対策を立てようとしたがもみ消されてなにもできずに過ごしていた。
7年の歳月が過ぎた去年2017年の5月に、くだんの安某検事が、賄賂問題で検察をやめることになった。ソ・ジヒョン検事は、テレビでもその事件は見ていた。それだけだったら、「ああ、やっぱり」くらいで終わっていたかもしれない。しかし安某検事の、キリスト教の教会での「懺悔(ざんげ)」する場面がテレビに映し出されたとき、ソ・ジヒョン検事は決心したという。
「本当の意味で悔い改めるのなら、まずはあのときのことを悔い改めることからはじめるべきではないのか。自分の前に来て直接申し訳なかったと言うべきではないのか」
テレビに映し出された安某の懺悔の内容の中に、ソ・ジヒョン検事に対するセクハラ問題は、当然ながら入ってはいなかった。欺瞞にかためられた安某の懺悔の様子。
いろんな思いが刹那のうちに身の内に湧き上がり、居てもたっても居られなくなったという。それで、これは自分の名前も顔も出して、世間様に訴えるしかないと思い、JTBCという韓国では一番信頼されているテレビ局のメイン番組(ニュースルーム)に出ることを決意したということだ。
筆者は、そのときのライブ放送を直接見ていた。いくら検事とはいえ、女性だ。始終涙声で話していた。身も心もぼろぼろといった感じを受けた。検察官の中でも何度も賞をもらうほど辣腕の検事のようだ。検察官の制服を脱ぐことも決意してのライブ登場だった。
検事なら、ばしっと手をひっぱたいて、「何するのよ。すけべ野郎!」ぐらい言えないのかとも考えるが、男社会に蔓延するそうした闇の部分があまりにも強いのであろう。検事でさえ、ばしっ! とはできないのだ。普通の女の子だったら、もっと難しいだろうことは容易に想像できる。
これを書いている筆者も男なのだが、女性らの性的迫害のダメージをあまりにも簡単に考えてしまう傾向があるのではないだろうか。酒の場で、腰をなでるぐらいどうってことないんじゃないの、という思い。でも、これは女性にしてみれば、命を左右するくらい深刻な出来事なのである。病気になってしまうくらい許せない行為なのである。ここの部分を男(社会)ははっきりと実感するところから始まるんだろうな、って思う。
ソ・ジヒョン検事のライブインタビューが流れて3日目。SNSなどを通してソ・ジヒョン検事を応援するコメントが数万に達しているであろう。検察庁長官も再捜査するといっている。また男社会の隠蔽体質にかき消されることのないことを願う。
お天道様のもとに安某を引っ張り出し、本当にすみませんでしたと涙の謝罪をさせる絵がテレビに出るだろうか。かすかな期待を込めながら本稿を終えたい。
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