有名人を使ったステマ商法が日本で嫌悪されるようになって久しいと思いますが、最近では「Instagram」で人気の投稿者が身につけているものなどが話題になることが多く、彼らを総称して巷では「インフルエンサー」と呼んでいます。今回の『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住の著者・りばてぃさんは、米国で絶大な影響力を誇るインフルエンサー、「カイリー・ジェンナー」の持つ恐るべき影響力を紹介しています。
たった1人のインフルエンサーのツイートの影響力はいくら??
インフルエンサーの影響力?
マーケティング大国と言われるアメリカでは、日々、様々なマーケティングに関するニュースやトレンド情報が飛び交っており、追いきれないほどだが、無視できないほどインパクトの強いニュースが先週、飛び込んできた。
それは、カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)が、2月21日にソーシャル・メディアのスナップチャットを使ってないとツイッターでつぶやいたところ、スナップチャットの親会社のSnap Inc.の株価が7.2%減。市場価値が13億ドル(約1,300億円)下がったというニュースである。
カイリーは、現在、アメリカでもっとも影響力のあるインフルエンサーの1人で、モデルでありリアリティ番組のスターであり実業家でもある。
ツイッターのフォロワー数は2,500万。
ピコ太郎さんのPPAPが世界的に大流行するきっかけのツイートをしたジャスティン・ビーバーの1億500万フォロワーよりはずっと少ないけども、日本人のツイッターのフォロワー総合ランキング1位の有吉弘行さんの約700万よりはずっと多い。かなり影響力のある数字だ。
ご参考:
●Twitter日本 フォロワー数 総合ランキング 1-50位
そのカイリーが、
「スナップチャット見なくなったよね?それともそれって私だけ?あ~とっても寂しいことだわ」
”sooo does anyone else not open Snapchat anymore? Or is it just me…ugh this is so sad.”
と、つぶやいたところ、7万件以上リツイートされ、30万以上のいいね数が入り大きく話題になった。
ご参考:
●Kylie Jenner Tweets, Snapchat Loses a Billion Dollars
ピコ太郎さんのPPAPについてのジャスティンのツイートは、世界的に大流行したということで嬉しい影響となったが、今回のカイリーのツイートは大きくマイナスの影響となり、各種メディアは、
「スナップチャットがたった1日で13億ドルも損が出る原因を作ったのはカイリーなの!?」とか、「いや、カイリーはスナップチャットを殺してはいない」などなど、驚きとともに、このニュースを伝えている。
ご参考:
●Did Kylie Jenner cause Snapchat to lose more than $1 billion in a day? Probably not.
●No, Kylie Jenner didn’t kill Snapchat
いろいろ報じられ考察されているが、どうやら、カイリーのツイートだけが原因ではなかったとの見方が多い印象だ。
以前からスナップチャットの仕様変更に対するユーザーの不満や飽きによる使用率やダウンロード数は減っていたところに、ソーシャル・メディアで影響力のあるカイリーも「使ってないのよね・・・」とつぶやいたことが決定打になったという感じのようなのだ。
まぁ、それでも、たった1つのつぶやきで13億ドルも市場価値が下がった事実はものすごいことである。
カイリー・ジェンナーとは?
彼女を知っておくことは、今後、アメリカのインフルエンサーマーケティングについて考えるためにも外せない人物なので、せっかくなので、もう少し、カイリー・ジェンナーについてご紹介しよう。
カイリーは現在20歳。
アメリカのリアリティ番組のパーソナリティでありモデル。
父違いの姉に、有名ラッパーのカニエ・ウェストの妻のキム・カーダシアンがいる。
いわゆる日本のタレントさんのような存在だが、カイリーがすごいのは、堅実にビジネスを成長させている実業家でもあるという点。
カイリーは2015年にオリジナルコスメブランドとしてカイリー・コスメティックス(Kylie Cosmetics)を創業。
ツイッターやインスタグラムなどのソーシャル・メディアを中心に地道に宣伝を続けてきた結果、2017年8月に誕生日を記念して発売したバースデイ・コレクション13種類は、たった1日ですべて完売。
1,000万ドル近い売上(約10億円)を記録し大きく話題となった。
たった1日で1,000万ドルもの売上と聞くと、ソーシャル・メディアの人気だけで1発当てただけなのではないかと思う人もいるかもしれないが、どうやらそうではなく、様々な努力の結果堅実に売上を伸ばしているのである。
ちなみに、創業して2年で年商4億2,000万ドル(約470億円)に達し、このまま行けば年商10億ドルのユニコーン企業になる日もそう遠くはないだろうと言われるなど注目されている。
ソーシャル・メディア以前は一般的にコスメ企業が5億ドル規模に成長するには数十年かかっていたことを考えると異例の速さだが、実は、カイリーのほかにも、カイリーほどの規模ではないが、ソーシャル・メディアを使って急成長しているコスメブランドは数多い。
日本では著名人が何かしらの商品やサービスについてソーシャル・メディア上で好意的に取り上げ、情報発信すると、『ステマ』(お金を払って宣伝してもらうステルス・マーケティングのこと)ではないか・・・と指摘されることが少なくないが、やり方次第では日本でもまだまだ有効なマーケティング手法として取り入れる余地はあるのではないかと思う。(つづく)
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