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原発より30キロ圏内から問う。10年後、川内村に住みたいですか

東日本大震災による福島第一原発事故から7年。原発から30キロ圏内に位置する福島県川内村は、いち早く帰村を促す声明を出して話題を呼びましたが、その当時の記憶は風化の一途をたどっています。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、自身が4年前より川内村の未来を考えるプロジェクトを発足。まだ心のエアとしての震災が終わっていないことを訴えています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年3月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

“風化”した原発被災地

霞が関で前代未聞の事件が起きていようとも、米朝韓の動きに置いてけぼりを食らおうとも、日常は繰り返されます。

自分が唯一楽しいのは、未来のために働いているときかな? 原発被災地って、方向性が定まらないので不安定ですよね。原発被害は、もう風化していると思う。以前は、原発被災地の大変さを知らなければ! 知りたい! といった思いを持ってくれていると実感することが、度々ありました。でも、今はそうでもない。なんだか取り残されているように思います

あの日から7年が経ち、こう話してくれたのは福島県川内村でず~っと、本当にず~っと頑張り続けている渡辺さん(男性)です。

福島県の川内村は原発から30キロ圏内に位置し、2012年に「帰れる人から帰ろう!」という遠藤村長の英断で、いち早く帰村しました。

私は震災以降、津波被害を受けた地域には、何度も通っていたのですが、福島には「何かお手伝いをしたい」と思いながらも、「ナニをしていいのかわからない」状態で。ただただ時間だけが過ぎていました。

そんなある日、「ウェークアップぷらす(日テレ系)」遠藤村長と共演。番組終了後、村長と色々とお話をさせていただいたところ、次のような苦悩を話してくださいました。

帰村から一年が経った。なぜ、こんなにも普通の生活に戻るのが難しいのか。インフラは役場が整えることができるが、心の復興はできない。せっかく故郷に戻ってきた村民たちが、『川内村の誇り』を失いかけている

村長の胸の内を聞き、「心の部分なら私にもお手伝いできるかもしれない」と、早速アクションを起こしました。

高校の同級生で、フットワークが良く、それでいて温かい男子2名に声をかけ、2013年4月「10年後の川内村を作ろう!ーチームどんどんプロジェクトを発足したのです。

私はあくまでもアドバイザー兼サポーターで、主役は川内村の未来を支える若手16名のメンバーで、先の渡辺さんは「チームどんどんのリーダーです。

”どんどん”というネーミングには、「どんどんやろう!どんどんいろんな人を巻き込もう!」という想いが込められてます。

どんどんでは「村民の声」を集めることから始めました。そこで「川内村の幸せってなんだろう?」をテーマに、村民(帰村者&仮設に住む人たち)にアンケートを実施。

川内村の誇りとは何か?
川内村の好きなところは?
川内村の嫌いなところは?
今、幸せですか?
10年後、川内村に住みたいですか?

などを聞くことで、「川内村の誇りの正体を捉えようとしたのです。

アンケートでは、村民の9割以上が森林、田んぼ、星空、水などの自然が「川内村の誇り」だとし、川内村の「美味しいお米、美味しい野菜、美味しいキノコ、そして川内に住む人が好き」と答えました。

当時私たち“同級生トリオ”は、毎月東京から5時間かかる川内村に通っていたのですが、通えば通うほど、そこで暮す人たちと向き合えば向き合うほど、原発が奪ったもの、村を復興させるということの”難しさ”を痛感し、「ホントに自分は役に立っているのか? 役に立つだなんて驕りではないのか?」と自問し続けました。

でも、あの時の“思い”が決して無駄でなかったと、7年経った今、どんどんのメンバーが教えてくれたのです。

7年が過ぎて、”どんどん”の意義深さを、つくづく感じています。色々な人が川内村にやってきました。色々な人が川内村から離れていきました。

でも、この地(川内村)からは逃げれられないし、変わらない川内村という土地が受け入れない限り、そこで生活はできない。

土地って、”どんどん”のアンケート結果そのもので、住む人が好きなところ嫌いなところ、全てを受け入れないと村は存続しません。

国や行政はこの土地を、どれだけ知って、どれだけ理解しているだろうか? 僕は川内村で生活をしたい。なので、5年前のどんどんのアンケート結果を羅針盤にやるしかないと思っています(どんどんリーダー 渡辺さん)

国や行政は「仕事がないから帰村できない」と、工場を作ってきました。でも、帰村する人は増えません。工場で働くのは外国人です。

国や行政は「生活インラフラがない」と大型スーパーを作ってきました。でも、そこは場所が遠過ぎて、おじいちゃんおばあちゃんは行くことができません。

先日、福島大学が行った調査で、福島で暮す半数以上がうつ状態にあることがわかっています。

● <原発事故>住民実態調査「うつ病に近い傾向」半数超 負担色濃く

まだ何か私にも、私達にもできることがあるんじゃないか。震災直後とは違うカタチで力になれることがあるんじゃないか。

皆さんにはそのことを伝えたくて、ナマの声を取り上げました。どうか考えください。そして、現地に行ってください。私ももうちょっと暖かくなったら、久しぶりに川内村に行こうと思っています。

image by: Wikimedia Commons(アラツク)

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年3月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年3月14日号)より一部抜粋

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