毎年ピン芸人の頂点を決定する『R-1ぐらんぷり』で、過去最多のエントリー3795人の頂点に輝いたのが、盲目の芸人・濱田祐太郎さんでした。今回の『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』では著者でNY在住の著者・りばてぃさんが、その濱田さんが「笑い」を通して教えてくれた「健常者の知らない世界」の尊さを紹介しています。
盲目の芸人、濱田祐太郎さんR-1ぐらんぷり優勝で思うこと
(1) 盲目の芸人の濱田祐太郎さん
3月6日に開催された「ひとり芸人日本一」を決める「R-1 ぐらんぷり 2018」(過去最多の3795人がエントリー)の決勝戦で、盲目の芸人の濱田祐太郎さんが優勝し、ニュースに。
日本では大きな話題になっているようで、ご存知の方も多いだろう。
濱田さんは神戸市出身。
白杖(はくじょう)で舞台に登場し、盲目の生活を笑いに変えて観客を沸かせたとのこと。
ご参考:
R-1の優勝を契機に、濱田さんは、様々なテレビ番組にご出演され、生まれつきの盲目(幼少期は光の明るさや色は若干認識できたと語っている)であることや、盲学校時代のエピソードなどを明るく披露され、その姿もまた話題になっているようだ。
バラエティ番組や情報番組などで濱田さんと共演された方々からは「ひと昔前だったら、こうはならなかったかもしれない」、「新しい時代がやってきた気がする」、「彼がきっかけとなって(障がい者も含めて)またいろんな人が出てきたらいいよね」・・・といった声が出ている。
本当に素晴らしいことだと思う。
まず、最初に素晴らしいなと思ったのは、実際に盲目という障がいを持つ濱田さんが自らの体験をもとにした当事者ならではのお話を、明るく笑いに変えているということである。
そこには、健常者には想像もつかない世界が広がっていて、濱田さんのお話で笑いながら、改めて気づかされることも多い。
例えば、濱田さんの場合は、誰かの顔をイメージできない。なぜなら、子どもの頃からはっきりと誰かの顔を見たことがないからだ。
言われてみれば当たり前だが一度も見たことがないものをイメージすることはできない。
例えそれが人間の顔という多くの人々にとって極めて重要で、世の中には人間の顔があるからこそ成立しているビジネスや文化なども無数に存在しているのにも関わらずだ。
皆さんは自分の周りにいる人々の顔がまったくイメージできない世界というものがどのようなものか想像できるだろうか。
「髪型を変えたの?」や、「顔色悪いわね」のような、ごくごく普通の当たり前の日常会話も濱田さんにとっては具体的に想像できないものなのだ。
そのような盲目の方々にしかわからない世界について、濱田さんは明るい漫談を通して私たちに教えてくれるので気づかされることは多い。
盲目以外の障がい者の方々も、それぞれの障がいに応じて健常者にはわからない世界があるのだろう。
濱田さんのお話を聞いていると視野が広がっていくような気がする。
さらにもっと素晴らしいなと思うのが、障がいに負けず前向きに生きる濱田さんのような方々の姿は、私たちに改めて自分の人生を見つめるきっかけを与えてくれることである。
平凡な日常、慌ただしい生活に追われて過ごしていると、ついつい大したことない出来事に思い悩むこともある。結局、自分が直面する現実は自分の見方次第。狭い視野に留まっていれば自分の中に秘められた可能性に気づくことも難しいだろう。
自分の力だけで視野を広げ、新たな可能性に気づくのは簡単なことじゃない。いろいろな人との出会いが私たちの視野を広げていくことになる。
その中でも精一杯生きている人々との出会いが持つ意味は大きいと思う。
実は、過去のブログやこのメルマガでも書いたので、覚えてる方もいらっしゃると思うが、昨年11月に開催されたニューヨーク・シティ・マラソンで、ボランティアの伴走ランナーとして、初めて盲目のランナーさんをサポートする貴重な機会に恵まれた。
この時の経験もいろいろなことに気づけて視野を広げてくれた。
せっかくの機会なので、以下、ブログの関連記事をご参考まで。
ご参考:
(2) 盲目の芸人のクリス・マックコーランド
海外に濱田さんのような盲目の芸人さんがいないかと調べてみるとクリス・マックコーランド(Chris McCausland)さんという方を見つけた。
クリスさんは、イギリスのリバープール出身。2003年からスタンダップ・コメディアンの活動を始められ、活動1年目から「the Jongleurs J2O Last Laugh」、「the Laughing Horse New Act of The Year」、「So You Think You’re Funny」などで優勝を含め高い評価を得た。
その後も2011年には、チャンネル4のコメディ部門の「the Creative DiversityAward」を受賞するなど活躍を続け今年2018年1月にはイギリスの劇場でライブを開催し国営放送のBBCで放送された。
ご参考:
● Chris McCausland Live at the Apollo
どうやら世界的にも、濱田さんのような盲目の芸人さんはご活躍の幅を広げているようだ。
ちなみにクリスさんのスタンダップ・コメディの動画を見てみたら、奥さんについての話題で、
“I’m a very very lucky man she’s a good-looking girs so she tells me”
(僕はとてもとてもラッキーなんだ。彼女は綺麗な女性なんだ、彼女が言うにはね)
といった感じで、奥さんや幼いお子さんなどとの盲目の生活を笑いに変えたジョークが印象的だ。
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