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そもそも、子どもを育てるのに「父親は絶対必要」なのか?

先日、経済評論家の勝間和代さんが同性との交際を公表し、大きな話題となりました。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』は、著者で健康社会学者の河合薫さんが、「同性愛は不道徳」という概念こそ産業革命以降に作られたものだとする哲学者フーコーの論を紹介。女性同士で子育てをするカップルに対して、「子どもには男親が必要」という偏見に満ちた言葉をぶつける心無い人間が存在する「現実」も明かしています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年5月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

子どもに父親は必要か?

かつて“カツマー”という熱狂的ファンを生み出した、経済評論家の勝間和代さんが、自身のブログで「女性と交際同居している」ことを公表しました。いわゆる“カミングアウト”です。

お相手は、LGBTコンサルタントの増原裕子さん。増原さんは、2013年に元タカラジェンヌの東小雪さんと東京ディズニーリゾートで初となる同性挙式を行い、話題になりました。15年には同性パートナーシップ制度が導入された渋谷区で、第1号カップルになるなど、日本のLGBTシーンのシンボル的存在でした。

しかしながら、男女の婚姻関係がそうであるように、増原さんと東小雪さんは昨年12月に関係を解消。そして、今回、勝間さんのパートナーであることが明かされたのです。

一方、勝間さんはこれまでに2度男性と結婚離婚し3人の子どもがいます。勝間さんは自らを「男性も女性も好きになるバイセクシュアル両性愛者)」とし、「過去の私を含め、同性を好きになることが悪いことだと思う傾向が、この社会は強すぎる。同性愛は、悪いことでも誇ることでも卑下することでもない。ニュートラルに自分も考えたかったし、社会が変わる一つのきっかけになればと思った」と公表の理由を語っています。

LGBTの問題は、これまでも何度か取り上げてきましたが、今回の勝間さんの気持ち、なんかちょっとだけわかる。というか、年を重ねると「男女」の枠ってあんまり意味がなくなるんじゃないかって、個人的に思っているのです。

そもそも恋愛って何なのだろう? 相手のことが「好き」で、一緒にいて、楽しいことが恋愛なのか? そこに性行為の関係があれば、恋愛なのか? いつも一緒にいたいと思わなければ、恋愛じゃないのか? 性行為の関係がないと恋愛じゃないのか? などなど。

若いときには「恋愛⇒一緒にいる⇒性行為⇒やがて結婚」という常識に何も疑問を抱かなかった。でも、年を重ねてくると、性行為に対して欲望も薄れてくるせいか(苦笑)「愛」とか「関係性」とか、「生活を共にする」とか「人生を共にする」という行為を、必ずしも男と女の間でのみ成立させる必要はないんじゃないか? と。誰の中にも、男性性と女性性の両方が潜んでいるんじゃないか? と、考えるようになってきました。

30歳になったときに、「ああ、もう若い女の子を演じる必要がないんだ」とホッとし、「ひとりの人」として周りと関係性を構築することの心地よさを感じた時と似たような感覚に浸る自分に、気付く瞬間があるわけです。

フランスの哲学者ミシェル・フーコーによれば「同性愛は不道徳」という概念は19世紀の産業革命の文脈から生まれたとされています。産業革命により「公=工場」と「私=家」が分離され、そこに男と女のジェンダー区分(社会的な性)が重なり、それをより確かなものにするために、男女が永続的に結びつき(=結婚)、次世代の労働力を生産(=出産)するという家族形態が必要になったというのです。

そして、それが「正しいセクシャリティ」として高い価値がおかれる一方で、同性愛などは不道徳とされるようになった。「子どものいない夫婦、婚外子」なども、不完全で差別の対象となっていったと解釈されています。

つまり、ジェンダー論で恋愛や結婚を捉えると「普通」とされていることが実は作られた普通であり人の本能によるものではないという結論に行き着く。

男性と結婚し、子どもも出産し、今は女性と交際・同居する勝間さんは、ある意味、本能にしたがっているだけ。誰もが例外なく、自由を求め、自分らしく生きたいと願っているのに、LGBTを偏見のまなざしで見るのって、おかしくない? などと思ってしまうのです。

私が関わっているLGBTのグループの中には、女性同志で生活し、子ども2人を授かったカップルがいます。彼女たちは「子どもがイジメられないよう」と「自分たちの関係性」を理解してもらうために、お母さんたちのグループに積極的に参加していました。

「いちばんしんどいのは『子どもには男親が必要』と言われてしまうこと」と彼女たちは嘆いていました。勝間さんのカミングアウトが、そういった偏見のまなざしも和らげてくれるといいなぁ、と心から願っています。

image by: Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年5月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年5月30日号)より一部抜粋

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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