MAG2 NEWS MENU

【書評】中韓が捏造した歴史をマスコミが喜んで受け入れる理由

中国・韓国が日本に対して歴史を歪曲させ、ハラスメントともいえる感情をぶつけてくるのはなぜなのか、そして日本のメディアがそれに迎合するのはなぜなのか…。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、中韓、そして日本の報道機関はなぜ歴史を捏造するのかを解説した1冊の本を紹介しています。

こうして歴史問題は捏造される
有馬哲夫・著 新潮社

有馬哲夫『こうして歴史問題は捏造される』を読んだ。日本に対する韓国の慰安婦」、中国の南京事件ハラスメントが続いているのはなぜか。日本の新聞やテレビがそれに迎合して、歴史を歪曲させるのはなぜか。問題の根本は「歴史リテラシー」の欠如にあるという。プロパガンダに与せず、イデオロギーに依らず、謙虚に歴史を見つめる作法を説いた、稀にみる良書である。

日本のジャーナリズムでは、予めシナリオを書きそれに基づいて取材し記事や番組にすることが普通に行われている。冤罪を生む検察と同じ手口だ。実害の大きな問題が起きても、あまり罰せられない。この状況を逆手にとり、悪用して、でっちあげ記事を書く輩も少なくない。現在のテーマや問題を扱うとき、時間的制約があるのでという言い訳は、ある程度は許容されているらしい。

だが歴史については許されない。限られた時間で報道するには、踏まえるべき資料、裏とりを要することが多すぎる。ジャーナリストが手がける歴史ものに捏造が多い理由だ。歴史は彼らの都合にあわせてあるのではなく資料も彼らのシナリオや意図とは無関係に存在する。大抵の場合、特定の人物の反証不可能な証言を中心に、不都合な反証を一切無視する捏造の記事、番組が生まれる。

NHKの歴史番組関係者は、企画に都合のいい証言者を仕立て第一次資料などを切り貼りし反証を無視しトンデモ捏造をする。2016年6月8日の「決断なき原爆投下」は、トルーマンと軍部の間に確執があり、大統領が「軍事目標に限定し、女性や子供に向けて使用しないように」と命令したにもかかわらず、軍部が広島・長崎を軍事目標と偽り原爆を投下した、という途方もない内容。

NHKは2001年7月25日の「原爆投下トルーマンの決断」で、トルーマンの原爆投下のプロセスを新資料を織り交ぜ明らかにしていた。NHKは正反対の内容の番組を放映するのに、一言の説明もない。「決断なき原爆投下」は、資料としては最も危険な個人的記録と証言により構成されていた。それはグローヴス少将の証言とトルーマンの日記で、原爆投下はこの二人が議論していたかのように誘導する

原爆はケベック協定のもと、イギリス、カナダ、アメリカが共同開発したものであって、アメリカの単独開発ではない。これは原爆関係に触れるときに、絶対押さえておかなければならない基本知識である。この協定の存在はNHK番組にとって都合の悪い反証となる。アメリカはイギリス・カナダの同意なしに日本に原爆を使用することはできないのだ。だからNHKはこれを無視した。

さらにNHKは、原爆投下に重要な決定を下したアメリカ側の暫定委員会すら無視した。この委員会が原爆投下を決定していくプロセスを時系列で示した資料群は、ハリー・S・トルーマン大統領図書館にあり、その電子テキストはネット公開されている。世界中の無数の人がこれらを読んで内容を知っている。

番組ではトルーマンは原爆について何も知らなかったので、グローヴスの助言に頼ったという。グローヴスは原爆開発の現場責任者ではあるが、原爆開発全体の責任者であるスティムソン長官に、逐一判断を仰ぐ一軍人に過ぎない。彼の言うことは、戦後の核開発から完全に締め出された負け惜しみの自己礼賛に過ぎない

トルーマンの日記を引用しているが、それはすべて後世の人々に非難されることを想定して、自己欺瞞と責任逃れのために書かれたものであり、資料としては使えないことは周知の事実である。NHKは資料として最も危ない個人証言を、都合のいいところだけ使う。そうしないとトンデモ企画の無理は通らないのだ。NHKの歴史番組の捏造は構造的なものである。……初めて聞く真実だ。

日本が中国や韓国と歴史問題を論議しても、絶対に結論が出ないのはなぜか。著者は、歴史という概念が国によって違うからだと説く。民主主義国の歴史と、中韓のいう歴史とは違う。中韓では歴史的事実より「建国イデオロギー政治イデオロギー」が重視される。「物語イデオロギーに変わったといえるのだ。

中国は共産党指導者が帝国主義の日本軍を打ち破って現在の国家を建設した、ということになっている。事実は日本軍を打ち破った主体は国民党であって、その国民党に勝った共産党が中華人民共和国を建国したのだ。対日戦の勝者ではなく内戦の勝者である。だから、中国の建国は日本が敗戦した1945年ではなく、中国民衆が共産党を選んで、国内内戦に決着がついた1949年である。

韓国も帝国主義日本に対して独立運動を戦いその圧政を打ち破って建国を達成したという建国イデオロギーにしがみつく。韓国は日韓併合に基づいて日本に併合された。植民地ではない。日本は韓国と一度も戦争をしたことはない。韓国が戦勝国だという主張は歴史的事実ではなく「建国イデオロギー」である。韓国という国家は戦勝国のご都合主義で生まれた。それが歴史的事実だ。

中韓2か国における歴史とは、「建国イデオロギーを骨格に歴史的事実を断片的に貼り合わせたものだ。共通するのはそれを正当化するための「反日イデオロギー」であり、それが彼らの現代史なのだ。中国がなぜ今頃になって日本との戦争のことを言い出したのか。共産党独裁の正当性が失われており、いまや歴史的事実と違う「建国イデオロギー」を持ち出すことしか術がないのだ。

日本の無条件降伏は、現在の中国とは無関係だ。中国は戦勝国ではない。中国を代表して連合軍に加わっていたのは国民党であり、共産党ではないことは歴史的事実である。カイロ会談に呼ばれたのは蒋介石だが、2015年の中国映画「カイロ宣言」では毛沢東が会議に出ていた(笑)。今の共産党は人民の支持を得ているのか。著者の知る限りみなノーである。インテリほど党を軽蔑している。

韓国は「日本に宣戦布告して連合国の一員として戦った戦勝国である」と、中国以上の大ボラをふく。ダレスは李承晩が「署名国としてサンフランシスコ講和会議に出席したい」と要求した時、「韓国は日本と戦争状態にあったことはなく連合国共同声明にも署名していない」として拒否する。連合国として日本軍と戦ったというに値する実績が韓国にはない、資格がないということだ。

日本が戦争加害者なら、その当時日本国民であった朝鮮半島出身者も加害者である。この事実は極東国際軍事裁判で明確に示された。日本が敗戦国なら韓国人も敗戦国民である。もし朝鮮人慰安婦が「被害者」で、日本軍が「加害者」だとするなら、現在の韓国人も「加害者」である。いま韓国が日本に突きつけている「慰安婦問題」は、韓国自身にも突きつけられるのが理論的帰結である。

中韓の、とくに戦争を知らない若者たちは、自分たちが教えられている歴史が虚構であることに気づいているか。外国にいたことのない人は気づいていない。留学などの経験があり、現に外国で働いている人々は気づいている。気づいていても認めない。メリットがないからだ。歴史的事実は普遍的なものである。いずれ誰もが気づくときが来るのだろうか。来ないかもしれない。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

日刊デジタルクリエイターズこの著者の記事一覧

デジタルメディアで活躍する現役クリエイターたちのコラムで構成されている本格派。総発行部数約16000! 真のクリエイターを目指している方からデジタルに関わる方まで、すべてに向けて発行中!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】 』

【著者】 日刊デジタルクリエイターズ 【発行周期】 ほぼ日刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け