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株バブル崩壊も。日経平均が「年初来高値」でも楽観視できぬ理由

昨年暮れに2万円を切る暴落となり先行きが不安視されたものの、4月15日には年初来高値を更新、4ヶ月ぶりに2万2千円台まで回復した日経平均株価。このまま株価を維持することは可能なのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、国内外の様々な要素を詳細に分析した上で、日本株価の今後を占っています。

日本経済の脆弱化で

とうとう日経平均も上昇してきた。NY株価が最高株価に近づき、出遅れ株への投資に向き始めたことによる。しかし、日本経済は一層脆弱化してきている。今後を検討しよう。

日米株価

NYダウは、26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月5日26,487ドルになり年初来高値になったが、4月12日26,412ドルになっている。数日、利益確定売りが出て、出遅れ株を探る展開になっていたが、JPモルガンの決算がよかったことで買戻しも出た。そして、全体的に強気相場継続である。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落したが、3月4日21,860円で、4月12日21,870円と年初来高値になった。安川電気の決算内容は悪かったが、株価は上昇している。これは、海外投資家が、出遅れている東証株を買い始めて、日本株を2週連続で買い越し、買越額は1兆4,637億円にもなっているからである。

NY株式市場はFRBが金融緩和方向であると安心感に包まれて総楽観で上昇相場になっていたが、株価が高いので利益確定売りが出て、安い出遅れ株を探し日本株を買い始めている。このため、日本株も上昇し始めている。ジャンク債の金利も低く売れている。バブル最盛期という感じになってきた。悪いニュースを無視して、よいニュースだけに反応する相場になっている。当面バブル拡大と見る。

しかし、取引額は減っているし、ここまで株価を押し上げたのは、自社株買いであり、この規制を民主党や共和党議員が言い始めている。将来は禁止になる可能性が出てきた。今後、NY株も試練があるかもしれない

日本株が上がる条件は、1つに海外投資家が日本株を買うことである。日本人で株投資をしている人は高々1,600万人しかいないからであり、投資家の数が少ない。2つに円安になることが必要である。3つに企業業績が良くなることである。現在株価が上がり始めたのは、海外投資家が買うからである。その他の条件は、むしろ悪くなる方向である。

米国の手本は日本

NY株式市場が高値安定期にあるので、トランプ大統領は、110億ドル分の欧州からの輸入品にも追加関税を掛けると言い始めたが、それにも市場は反応しない。EUも米国からの輸入品に対抗措置を検討している。トランプ大統領は、欧州との貿易戦争も始めるようである。

一方、トランプ大統領は、株価の下落がないので、自分の宣伝のために、貿易戦争を拡大していくようである。メキシコに対しても移民を止めない場合は、自動車関税を上げると脅している。国土安全保障省の長官も交代させて、国境管理を厳重にするようである。そして、中南米人や中国人だけではなく、インド人、日本人などすべての移民を止める方向である。技術者H1Bビザの発行も制限している。

移民を止め、金融緩和を行い、しかし、経常収支を黒字にして日本と同じ環境にして財政赤字を拡大させて、米国はMMTを行うようである。日本で成功した財政赤字拡大でも金融緩和して長期金利をゼロにすることで国家破綻しないのを見て、米国は同じ方法を取るようだ。

しかし、米国で一番難しいのが、経常収支の黒字化であるが、貿易収支の赤字国に対して厳しい制限をすることで、それを達成しようとしている。日本が米国の手本になっている。というように、米国の経済的な弱さが出始めている

2020年の大統領選挙まで、トランプ政権は、FRBを金融緩和方向に維持させて株価を高値で安定する意向のようである。このため、2020年11月までは、NY株価を高値維持する可能性もある。

米中通商交渉

米中通商交渉でも米国は強気であり、中国がある程度折れると、次の要求を突き付けてくるので、中国は米国との交渉に限界を感じ始めている。その上に交渉責任者の劉鶴副首相は中央政治局委員であり、党内順位は低い。

総書記(習近平)、政治局常務委員7名、その下の政治局委員18名の中で、劉鶴副首相は党内序列10位程度あり、政治的判断を単独では下せないために、上へ上申する必要があり、米国の一方的な要求を即断することができない。上申しても通らないために、時間だけが経っている。交渉開始から1年もたっているのに数歩の譲歩をしただけである。

中国の外交専門家の地位が低いので、外交交渉が難しい。交渉現場に首相や国家主席が出ないし、首相や国家主席が甘い妥協をして決めてきたことでも、交渉現場担当者が条件を付けて、潰すことも多々あり、中国との交渉はどの国でもうまくいかない。多くの国で約束した工事が開始もしない。

このため、とうとう、欧州でも東南アジア諸国でも中国との関係を見直し始めたのである。このため、米国も中国との交渉では、相当に厳しい条件を付けて、逃げられないようにする必要がある。

よって、米中通商交渉は、一歩一歩しか進展しないが、株価が心配で今まで、トランプ大統領はうまくいっているとリップサービスをして交渉継続をしてきている。しかし、ここに来て相場が楽観的になり、中国との合意がまだまだと米中首脳会談の日程も提示しなくなっている。合意は、まだ遠いことを示している。

中国も減税や金融緩和により、景気は持ち直しているし、輸出数量の落ち込みが少なくなってきた。輸入が少なくなり、貿易黒字はむしろ増加している。しかし、本格的な景気回復ではない。習近平国家主席は欧州への輸出拡大を狙い、フランスやイタリアに行き、李克強首相も欧州に行っている。輸出を米国から欧州に向けている

部品などの技術を持つ日本や欧州の会社を買収して、生産を中国に移して輸入を減らした効果が出ているので、米国との通商合意を急ぐ必要がない。中国は米国なしでもやっていける体制を構築し始めている。

この面からも米中通商交渉は、転換点に来ていると思える。米国の経済覇権が揺らぐことになる。ドル為替SWIFTシステムなしでも送金できるブロックチェイン技術のシステムを中国は構築しているし、経済力でも米国を上回る可能性が高まっている。世界的にその国の一番の貿易相手国は、中国になっている。

しかし、米中両国は通商交渉決裂にもできない。中国は米国への輸出が大きいので、これ以上の関税UPは避けたいし、米国は世界経済縮小で米国製造企業の輸出に影響があり、また株価を維持からも交渉継続するしかない。

日米通商交渉と日本株

米国は、2020年の大統領選挙で目に見える成果が必要になり、交渉上、一番容易な日本との交渉を先にして成果を上げようとし始めている。円高にシフトさせて、米国内に工場を建てさせ、農産品を買わせて、貿易赤字をなくせと要求してくる。

しかし、米中通商交渉を続けながらの日本との交渉になり、日米交渉は進まない可能性大であり、とりあえず、農業産品の日本の輸入関税引下げだけを個別に審議することになる。農務省が前面に出て、USTRは側面となるはず。

4月15日から始まるので注意が必要であるが、今の米国投資家は、実際に悪い結果が出ないと反応しないようであり、そのような予測があっても関係ないようで、積極的に日本株を買いあさっている

特にソフトバンクGなどは、借金して投資をする両建て経営で大きくなってきたが、リスクオフの総楽観相場では、評価が高くなる。このため、大幅な株価上昇になっている。

どちらにしても、安倍首相のトランプ大統領への接待外交で日本への要求を下げてもらうしかない。米国から石油や安いLNGを輸入して、カタールからの高いLNGを止めることである。中東からの石油も止めることで米国への貿易黒字は無くなる。

中露の時代に

北朝鮮は、米国との非核化交渉を打ち切り、再度瀬戸際戦略に戻るようである。米国も交渉継続を打診するが、完全な非核化の条件を下げることはしないので、このままの状態が継続することになる。北朝鮮の金正恩委員長は、米国の譲歩を条件に再交渉を進めるというがそれは無理である。

問題は韓国文大統領で、4月11日にトランプ大統領との首脳会談を開いたが、会談時間は2分と短く、その前にボルトン補佐官などとの会談時間が長く、北朝鮮との融和政策を中止して非核化に協力しろと強い調子で要求されたようである。トランプ大統領も韓国が期待する南北経済協力の推進には「今は適切ではない」と述べ、容認しない考えを示した。首脳会談後のコメントも、非核化に取り組むと簡単なものであった。トランプ大統領は、韓国の人道上の支援を認めるとしたが、完全非核化を強く要求したようである。

米国と北朝鮮の仲介役として、再度取り持つと文大統領はワシントンに向かったが、結果は逆になったようである。国境線の監視所などを取り除いたり、鉄道線路を繋げたりしたが、これを元に戻すことになりそうである。

一方、中国は北朝鮮との関係を強化している。北朝鮮との新しい橋ができて、物資を送り込むことができている。経済制裁を解除はしないが、米国との貿易関係が疎遠になると、ロシア・北朝鮮との関係を強化してくる可能性がある。

ロシアは、シリアを手に入れて、次はベネズエラに介入して、リビアを手に入れて、米国の代わりに各地で覇権を取っている。ハイブリッド戦術で、1つづつ米国の地域覇権を取っている。そして、北朝鮮との関係を強化していくようである。

ロシアと米国の第3次世界大戦が始まっているとも見える。今までの戦争とは様相が違うが、広い意味では緩い戦争である。地球の地面の取り合いと見ると、現時点では、圧倒的にロシアが勝っている。東欧を失った代償を世界的に求めているとも見える。

徐々にロシアが武力で米国に勝ち、中国が経済で米国に勝ち、反米勢力が世界の主流になる可能性が高いし、米国は自国優先であるので、武力や経済力を使ってそれを排除しない。このため、結果は見えている。当分中露の時代になる。

そして、最初に米国を離れるのが韓国のような気がする。その韓国の動きが世界に衝撃を与えて、世界的な雪崩現象を起こすことになるような気がする。嫌な感じがする。

紙幣刷新と金融資産への課税

令和の時代、紙幣も刷新するようである。これにより1.数兆円程度の経済効果が出るというが、銀行などの経営が圧迫されることになる。銀行は支店を減らし、ATMの台数を減らし、行員を減らして、金利ゼロ時代で利益が出ずに経営のスリム化をする必要になっている。この時に新札を出すと、この改修費などの負担により一層のスリム化が必要になる。

もう1つが、銀行預金に利子がないので、高齢者はタンス預金をしている。このタンス預金を銀行にシフトさせて、金融資産への課税準備と見ることもできる。これ以上、消費税増税を続けることはできず、次の増税は金融資産への課税しかない

所得に課税しても銀行預金の金融資産には利子がないので、課税できないことになっている。このため、金融資産に直接課税することになる。結果、銀行預金をすると、マイナス金利になる可能性が出てきている。

日本政府は、1,100兆円もの債務を抱えて、1%の金利とすると11兆円の負担になっているが、この金利が3%になると、33兆円にもなる。国家予算の社会保障費より大きいことになる。国家破綻の可能性が高まっている。日銀の量的緩和は、財政破綻を防ぐために長期金利を上げないことに尽きる

しかし、経常収支が赤字になると円安になり輸入物価高騰でインフレになり、量的緩和を止めてインフレ防止に舵を切る必要になる。日本の技術力が低下して部品などの輸出額が減り、大企業の工場が海外展開して、石油や食料の輸入は減らないと、いつか経常収支が赤字に転換する可能性があり、この時点で日本は財政破綻の危険性が高くなる。

事実、この数か月、貿易収支は赤字になり、インバウンドでの黒字で経常収支は黒字を維持したが、徐々に日本の経済基盤が脆弱化してきている。

その準備をするためにタンス預金を追い出して、金融資産を把握しておくことが必要になっている。勿論、金融資産への課税の準備のためである。そして、財政赤字を無くして、財政黒字にして累積債務を解消しないと、財政破綻になるからである。日本はMMTから脱しないと国家破綻になる危機を迎えている。30年以上も金融緩和政策をすれば、累積債務が膨らみ身動きができないことになる。当然だ。

日本株価の今後

米中通商交渉も合意に至らず、米欧貿易戦争も起きて、日米通商交渉も始まり、中国の景気は良くなったわけではないのに、米国の株価は最高値近くにあり、総楽観的な市場になり、この浮かれた状況は、いつまで続くのか疑問視する必要がある。

どうも量的緩和というモルヒネを使い、景気を上げたが、モルヒネ中毒にかかり、モルヒネがなくなると、中毒症状になり、モルヒネを要求して、その要求にFRBは応えている状態になっている。企業業績とは関係ない流動性相場に戻した。

しかし、この環境も企業業績が一層悪くなると、突然反応することがあり、その時は大暴落することになる。その切欠は何かということになる。

4月15日から始まる日米通商交渉が切欠になるか、企業の決算発表で、今年度見通しが低くなることが切欠になるか、いつ、突然反応するのか、それが問題になってきたように感じる。NY株も今年度第1四半期報告が出るので、その結果で状態が変わる可能性もある。日本は、NY株とは違い、有効な追加の緩和策は限られていることで株価維持が難しい

日本の銀行手持ちの多くの株を4月前半に売っているが、その株を海外勢が買い、株価は安定しているが、後半には銀行の益出しの手持ち株がなくなるので、日本株は上がることになる。しかし、海外投資家が買うのは、将来性のある株か出遅れの優良銘柄であり、ソフトバンクGなどの少数に集中するはずである。海外投資家の買い以外は、全体資金は少なく、それが循環しているだけのようにも見える。

さあ、どうなりますか?

image by: Twitter(@首相官邸)

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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