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聞こえる軍靴の音。中国人民解放軍の暴走が招く第3次世界大戦

激化の一途を辿る米中の対立。そんな両国の衝突を、メルマガ『国際戦略コラム有料版』著者の津田慶治さんは、「貿易摩擦から文明競争」に移行したと分析します。津田さんは今回の記事中にその根拠を記すとともに、米中の衝突と無縁ではいられない日本が今後進むべき道、取るべき政策を提示しています。

米中文明戦争に発展

中国の習近平は文明論を持ち出して米国を非難してきた。文化戦争の様相を帯びてきた。今後の米中関係を検討したい。

日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月23日26,695ドルになったが、米中貿易戦争再熱で、5月13日25,222ドルまで下落して5月17日25,764ドルで引けている。米中通商交渉の悲観楽観の見方が出て株価は上下している。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落したが、4月24日22,362円に上昇し、5月5日のトランプツイートで、5月7日から5日続落して5月14日20,751円になり、5月17日21,250円で、令和に入って2回しか株価が上昇していない

米中通商交渉は、6月下旬の首脳会談で解決するという期待値があり戻してきたが、トランプ大統領が対中強硬策を取り、それに中国が対応策を取ったことで、米中通商交渉解決のめどが立たなくなっている。

トランプ大統領は、EUと日本に対する自動車関税UPを180日猶予するとしたが、その代わりに数量制限をするとしたことで、東京市場は失望した。同時に、カナダとメキシコへの鉄鋼製品の関税上乗せ分は撤回することで、合意した。

中国は人民元を下げて、関税UPに対応する可能性があり、為替差益と値下げをして、米国の輸出価格を抑える方向で対処すると見たが、トランプ大統領の数段の強硬策を見て中国の態度が硬化してきた。

このように米中貿易戦争の今後は益々見通せなくなっている。今後しばらくの間、株価は、トランプ大統領と中国の政策を見て上下するが、米中の供給ラインの分離が完成したら日本企業の復活になると見ている。

そして、成長がマイナスになる米国の鉱工業株価は落ちるが、GDPに占める割合が小さいので、米国の景気を見るには、サービス産業などを見る必要がある。GDPに占める割合の大きな住宅サービスは金利水準に影響されるが、金利は低いままであるので好調を維持し、賃料は上昇していないし、次に大きな医療サービスは医療技術の向上で好調であるし、価格も上昇していないので、当分、株価も維持して適温相場は続くことになる。鉱工業株は下がるがそれ以外は今の水準をキープする。

そして、FRBの今年利下げ確率が7割と上昇してきた。このように、米国は余力がまだあるので、今年は徐々に下げるかもしれないが大きく下げないように思う。利下げなどで上昇する局面もある。

中国製品価格が上昇しても、他国の安い製品が取って代わることになるだけである。インフラ整備に2兆ドルなどの予算を組むことや、日本企業の米国工場ができてるので、景気後退にならない可能性もある。

何遍も言うが、関税UPだけでは米国経済には大きく影響しない

しかし、日本の部品産業は現時点、中国企業への輸出が大きく、この供給網の変更期間取引量が減ることで景気後退になる。日本は、鉱工業のGDPに占める割合が大きいので、日銀のサポートあっても一時的な株価の下落があるかもしれない。EUは中国の関係が大きいので景気後退になる。世界経済も後退になる。

これを止められるのは、米国が大きく譲歩して6月末の米中首脳会談での合意しかない。しかし、これに失敗すると、当分株価の上昇はなく、今後株価の上昇局面は2つある。1つが、2020年11月の大統領選挙で親中派バイデン大統領が誕生することである。

もう1つが、違う国や日本企業が米国へ製品供給して早期に元に戻ることで、その間だけ、少し景気後退になる。もしこうなると、日本に製造業が戻り日本の復活になる可能性も出る。

米中貿易摩擦から米中文明競争に

トランプ大統領は、米中通商交渉の決裂を受けて、第4弾の中国輸入品全てに対して関税25%UPにすることと、安全保障を理由にファーウェイなど中国最先端企業との取引禁止をして、米中貿易摩擦は、米中ハイテク戦争に変化している。

これに対して、中国の習近平国家主席は、「アジア文明対話大会」の開幕式で演説し、「自らの人種や文明が優れているとしてほかの文明を改造し、果ては取って代わろうとするやり方は愚かで破滅を招く」と述べ、「文明間の交流は対等で平等、多元的であるべきで、強制的で一方的なものであってはならない」と米国の強引な取引に文明論を持って対抗するとした。理屈ではなく、文明の問題としたことで、米中関係は文明戦争に発展したようである。

事実、人民日報は米国製品不買運動を呼び掛け始めている。今後、米国企業の製品は、中国市場では売れないことになったようである。中国人旅行者も米国に行かないことになり、一方、米国は、中国人留学生や研究者を追い出し、中国語や中国文化を教えていた孔子学園を強制的に閉鎖するという。

米国圏と中国圏の分離と日EU圏

次に、米中の市場や移動圏が分離して、米国企業製品が中国には入れないし、中国企業製品は、米国と同盟国には入れないことになる。どこで作っても中国と米国企業製品は違う市場では売れない。製品に使用する部品についても同様なことになる。

このため、中国企業の安い製品が、米国と同盟諸国には供給されなくなり、価格が安定することになる。米国圏と中国圏の分離が起きて、その勢力圏争いが起きるはずである。最後には、米中戦争熱戦に発展する可能性が出てきた。

しかし、米国は、日本やEUを米国勢力圏から除外する可能性がある。米国圏は、北米のみの可能性が出てきた。関税UP除外範囲を見ると北米しかない。米国の偏狭な考えに失望する。

このため、日本とEUは両方の勢力範囲に入らずに、日EU圏を作る必要になってきたようだ。ドイツのメルケル首相は米国を同盟国とは認めない」と言ったが、しかし、中国とも同盟国ではないので、中立的な立場になる。そして、この中立的な立場で、米中が戦争になることを防止する立場になると見る。日本はTPPという環太平洋圏も作り、この中立的な立場の範囲を広げている。今後も広げていくことである。

中国の軍部の暴走

一番心配なのが、中国の体制である。体制的に党の下に軍部と政府が割れていて、政府の言うことを軍は聞く必要がない。党の組織は弱く、軍部を抑えられないので、軍部の強硬な行動を誘発してしまいがちである。

もう1つの問題が、中国経済は今後大きく落ち込んでしまい、軍予算を減らそうとすることになる。このため、軍部は予算を獲得するために、戦前の日本と同じように、対米戦争準備に突き進んでしまう可能性がある。

特に台湾武力統一を習近平国家主席が言ったことは大きい。その発言後、台湾への締め付けが大きくなり、尖閣諸島への締め付けも大きくなっている。軍事費増加率は経済成長率より大きくなり、軍部の権限を拡大させている。戦前の日本を見ているような感じになってきた。

その上に、米国との文明戦争となり、対米戦争の準備をし始めている。対して、米国は台湾への援助を強化している。これは大変なことになると、心配になる。

英国の選択

このように、世界が分離し始めている。この状況を見て、英国は迷い始めている。米国陣営に入るのか、EU陣営のままになるのかという選択肢になる。EU陣営は、日EU陣営に再編することになり、英国の英連邦陣営という括りは難しいことになる。

そして、英国国民は米国陣営には入りたくないと思い、EU陣営でよいと思い始めているようである。徐々に、EU離脱賛成が減っている

離脱方法を話し合う与野党協議も打ち切りになり、6月のEU議員選挙も英国で行うし、メイ首相も6月には退任するというし、総選挙では自由党など離脱反対党が議席を伸ばすようである。英国のEU離脱は、「夏の夜の夢」になる可能性が高くなってきた。

今回のことで英国は、覇権国米国を引き回す隠れた国家から単なる小国になったようである。EU内でもドイツとフランスが中心であり、英国の存在は小さいことになる。英国の没落が明らかになった

中東戦争準備

イラン系の武装勢力が、サウジのタンカーを攻撃したり、サウジを横断するパイプラインを攻撃したりと報道されている。この報道から見るとイラン・サウジ戦争になるようである。そして、イスラエルのネタニエフ首相は、サウジ・米国とイランの対立に中立でいることを軍に指示したという。これは少し変

イラン・イスラエル戦争になったときには、サウジは中立になり、米国とイスラエル軍対イラン・イラク・シリア軍との戦いになるが、米国はサウジも戦争に引き込みたいと思っている。

そして、米ボルトン補佐官はネオコンであり、イラク戦争の仕掛け人でもあり、イラク戦争前夜で駆使した情報操作、陰謀などを使い、イランとの戦争に持ち込みたいようである。そして、その戦争にサウジを引き込みたいと思っている。このため、陰謀や情報操作を行う可能性が大いにあり、気を付けていないと、またイラク戦争と同様なことになる

現時点、米外交官をシーア派が主導するイラクから全員退去させているし、米軍12万人を中東に派遣するというし、戦争前夜の状況になっている。

トランプ大統領も、ボルトン補佐官の強硬姿勢に不満であり、イランと交渉したいだけで、戦争をしたいと思っていないとツイートしている。ボルトン補佐官が一人で戦争に持ち込みたいようである。

ボルトン補佐官は、今後の中国との戦争準備をしないようである。イラン戦になれば、10年間は、中東戦争にかかわり、中国との戦争ができないことになる。このように、中国より中東の方が重要と見ているが、トランプ大統領は対中重視である。このため、ボルトン補佐官をいつ切るかが問題であろう。

一方、イランのザリフ外相は、米国と対立する中国に飛び、中国は、米国による一方的なイラン制裁への反対を表明し、国益を守るイランの取り組みに支援を約束した。事実、中国は、米国のイラン原油禁輸制裁を掻い潜り、元決済でイラン産原油を輸入し続けるようである。ドル基軸体制でのドル決済崩壊の予兆がでてきた。人民元の国際通貨化を推し進めることができることになっている。中国のチャンスである。

このように、中東戦争は、米中代理戦争化する可能性も大きい。

日本はどうするか?

日本は、このコラムでも再三述べているのように、米中戦争など第3次世界大戦を防止する役割があり、そのために努力することである。しかし、日本の位置は、米中戦争での戦場になる可能性が高い位置にある。戦争時には米国サイドで戦うしかない。その準備もするしかないことである。

防止のために、日EU同盟を作り米中に中立的な位置に立ち戦争を防止するべきであり、そのためには、皇室外交が非常に重要になる。皇后陛下は元外交官であり、日本の今の位置には最適な人が皇室に存在していることになる。上皇陛下の譲位判断は適時適切なことであったと感銘する。千年の時を生きる皇室の知恵のような気がする。

欧州の王室と日本の天皇家が、親密な関係を築いて、その上に日EU同盟ができることで安定性が出ることになる。

日本とEUの役割は、中国と米国の2大経済軍事大国の戦争の防止と中国軍部の暴走を抑止することである。それと、世界貿易のルールを確立することである。

どうか、第3次世界大戦を防止して、人間を含めて地球の生命を守りたいものである。

さあ、どうなりますか?

image by: Kaliva / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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