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トランプ大統領と話す金正恩の姿に思う「彼は英語を話せるの?」

「金正恩朝鮮労働党委員長が絶好調に見える」と切り出したのは、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で、北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんです。宮塚さんは、板門店で実現した米朝首脳会談の様子を見ての感想と、その少し前に日本で行なわれた北朝鮮の元英公使太永浩氏の出版記念講演会で感じた、その人物の印象について綴っています。

太永浩元英公使の日本についての知識を聞いて感じたこと

金正恩朝鮮労働党委員長が絶好調のように見える。世界の大国・アメリカのトランプ大統領と1年以内に2度も「出会い」と「別れ」を演じ、さらに、6月30日にはトランプ大統領と訪問先の板門店の休戦会談場(北朝鮮側は停戦会談場)で会い、トランプ大統領を休戦ラインの北朝鮮側に招き入れることさえも行った。 満面の笑みを浮かべた金正恩は、堂々とトランプ大統領と話していたが、彼は英語を話せるのかな。父の金正日は何を言っているのか分からないような話し方だったので、ついには「新年の辞」を自らの言葉で話すことなく、三紙合同社説という形で掲載していた。

それにしても天下のアメリカの大統領と「たった1本のツイートをきっかけ」に投稿からわずか1日後には会談を成立させている。 東洋の小国の閉鎖された国の北朝鮮の最高権力者が「よくぞここまでにやれるようになった」と感心すべきであるが、今回の会談は最初から「何らの成果も結果もない」ものであった。それを承知の上で、日本のマスコミはさも大事な出来事のように扱い、テレビのワイドショーではいつもの専門家と言われている人たちが、得意げに話していた。

同じように、日本の北朝鮮研究者やマスコミが期待していた太永浩元北朝鮮駐在英公使の講演会が東京で開かれた。何しろ、今では黄長ヨプさんに次ぐ大物脱北者である。 太公使の手記ともいえる『三階書記室の暗号』は韓国では16万部も売れたといわれ、今回の訪日はこの本の日本語訳(『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録(文藝春秋)』)が出版されたのに合わせての訪日であった。

私は太さんとはこれまで2度会っており、韓国版の原書も読んでいたので、今回の講演会の話はある程度、理解していた。ただ、言わせてもらうと日本語版の中で監訳者の鐸木昌之先生(尚美学園大学教授)の「監訳者解説(?)だったか、これはよくできた文章で、さすがは北朝鮮研究者の中でも「第一人者」と言われる所以のある解説文である。

当日は私も朴斗鎮先生とコメンテーターとして出席したが、太さんの話に聴衆(60人限定)は食い入るように聞き入っていた。特に、北朝鮮の対日外交で前面に出てくる宋日昊・日朝正常化担当大使を「保衛省出身」と発言したことに会場はどよめいたが、宋日昊は保衛省出身ではない、ということが後になって明らかにされた。 また、拉致問題の解決に「小泉純一郎氏を最後の切り札・交渉役に仕立てたらいい」と言う発言にも関心が集まったが、太さんがどれだけ拉致問題に関心と情報などがあるのか、不透明である。

私は以前、会ったときに、太さんに「日本人拉致についてどれだけご存じですか?」と質したときに、「平壌で知人と管理する招待所で、“あの女性は日本人です”と知人が話したことがある。後ろ姿だけだったので顔は見ていない」とのこと。 太さん自身が日本語版の「日本語訳にあたり」であったか、自分自身は拉致について「知っていることは乏しい」と言うようなことを述べているので、今回の「小泉純一郎を交渉役に」という発言も、講演会に合わせて話されたのだろうか。私が太さんに「ところで太先生、日本人で知っている方は誰ですか?」と質すと、「尾上健一」(※チュチェ思想国際研究所事務局長)とすぐに答えてくれた。

尾上健一なる人物を知っているのは、私らのような年配者か(娘は知らなかったが)それとも朝鮮総連系の人物だけであろう。私は密かに「金丸信」と答えることを期待していたが、外れた。尾上健一とすぐ答える程度の古い時代の日本しか理解していなかったのだろうか。一部には「賞味期限が切れた」という人もおり、いまさら彼から聞き出すのはない、だから韓国政府は彼の出国を認めたのだと。そして、あわよくば彼が日本でテロにあったら、韓国の文在寅と金正恩は「大喜びをするだろう」と。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: pantid123 / Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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