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「GoTo」強行という政府の愚行。コロナ禍に全国で響く弱者の悲鳴

新型コロナウイルスの感染者数が急増し、国内第2波到来とも言える様相を呈してきています。政府は賛否両論渦巻く中で「GoToキャンペーン」を強行しましたが、救いの手を差し伸べるべき先やそのタイミングは適切と言えるのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、各所で上がる窮状を訴える声をはじめ、新聞各紙が伝える新型コロナ感染拡大の影響を分析・解説しています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を各紙はどう報じているか?

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…米欧が巨費 ワクチン争奪戦
《読売》…衛星群 地上を丸裸に
《毎日》…消費者庁、コスモ調査
《東京》…「GoTo全面延期」62%

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…ワクチン 自国優先という病
《読売》…支持回復 トランプ流不発
《毎日》…コロナ休業 フリーランス「綱渡り」
《東京》…脱東京一極集中「チャンス」

プロフィール

■公立病院の窮状■《朝日》

■低所得国の窮状■《読売》

■フリーと名ばかり個人事業主の窮状■《毎日》

■息を吹き返した首都機能分散論■《東京》

公立病院の窮状

【朝日】は公立病院の現状についてのリポート。3面に掲載されている。見出しから。

新型コロナウイルス感染者を受け入れた922病院中約7割が、公立病院と日本赤十字のような公的病院で、それらが経営難に陥っているという。収益が見込める健康診断や救急外来を削って対応しているため。病床稼働率は下がり、外来患者も減っており、「現場では、地域の医療体制が崩壊しかねないとの懸念が広がる」という。

uttiiの眼

記事によれば、もともと「医師不足による人件費高騰など」で、公立病院の6割が赤字になっており、そこにコロナ禍が加わった形。

実例がいくつか挙げられている中で衝撃的だったのは、西日本唯一の特定感染症指定医療機関である、りんくう総合医療センターのケース。ここも4月以降の赤字が10億円を超える恐れがあり、救急の受け入れを一時、最も重い3次救急だけに絞ったことがあったという。医療崩壊はギリギリで起きていなかったとされるが、細かく検証していけばいくつもの綻びがあったのではないかと感じた。

最後段は、公立病院の再編論議に関すること。政府は「地域医療構想」を掲げて、約440の公立・公的病院を再編統合の対象にしているが、そこに「感染症」の観点はなかったという。コロナ禍はこの計画に大きな変更をもたらす可能性がありそうだという。厚労省も「再編・統合対象も含め、公立病院のあり方を整理し直す必要がある」(地域医療計画課課長)としていると。

人口減少を理由にしつつ、これ以上削減したらどうなってしまうのかという状況でもなお遂行されようとしていた医療削減計画が、コロナのために頓挫した形。だからといって、地域医療がこれ以上の削減を免れると即断するのは危険だろう。人口減少の“大義名分”はまだ消えていない。

低所得国の窮状

【読売】は2面と4面に、コロナ禍で大きな影響を受けつつある国際金融の世界についての記事。見出しから。

2面

4面

2面は本記。コロナ禍で悪化した世界経済の不確実性が今後も高いとして、財政出動や金融緩和を含む「すべての利用可能な政策手段を引き続き用いる」ことで一致したというもの。

さらに、「低所得国へのG20各国による貸付の債務返済を今年末まで猶予する措置について「今年下半期に延長の可能性を検討する」ことを明記した」とする。

4面は、低所得国への債務返済猶予に関して敷衍。低所得国の状況は危機的で、「G20による債務返済の猶予」については42カ国が要請し、総額は5,700億円に上るとも。

uttiiの眼

債務返済の猶予措置がなければ、低所得国ではただでさえ脆弱な医療体制が一層脆弱となり、感染状況の把握も難しくなり、そうなれば、今度は先進国にもリスクが及んでくるという判断のようだ。ところが、「返済期限の延長」は「検討」するだけ。これは最も融資額が多いとみられる中国に対する牽制の意味がありそうで、融資による勢力拡大を「透明化」し各国で相互に監視しあう必要があるとの考えを麻生財務相が述べたようだ。

先進国も足もとが揺らいでおり、さらに言えば、支援する側も一枚岩ではない。とりわけGAFAへの課税を巡っては米国とそれ以外の国の対立が露呈していて、米国は国際課税ルール作り交渉の一時中断を提案した。

国際金融の世界の話も、「支援」というような美しい言葉で飾られているが、自国の利益増大を目指す各国の衝突の場だと捉えておくことが必要なのではないだろうか。

フリーと名ばかり個人事業主の窮状

【毎日】は2面の「焦点」で、フリーランスなどの窮状について書いている。見出しから。

個人事業主として仕事を請け負うフリーランスは、営業自粛や経営悪化を理由に一方的に仕事をキャンセルされても、雇用労働者が対象の「休業手当」は支給されないため、苦境に立たされているという。

典型的な「フリーランス」の実例として挙げられているのは、ひとり親で2男3女を育てるピアノ講師の女性。個人レッスンやアルバイトとして働き、生計を維持していたが、仕事が激減し、一時は収入ゼロに。

ヨガスタジオ「ヨギー」で働いているインストラクターたちの例は「名ばかり個人事業主」と言われる形態。組合は「実態は雇用労働者」だと主張しているが、会社側は休業を指示しながら休業手当を払わず、一方的に一部のクラスを打ち切ったりしている。ヤマハの子会社が全国展開する英語教室の講師らも同様で、個人事業主とされているが、会社は報酬を給与として支払い、源泉徴収までしているのに休業手当を支払わず、報酬の20%分が見舞金として1回支給されただけ。このケース、個人事業主かどうかも曖昧なため、持続化給付金の申請が認められるかどうかも不透明だという。

uttiiの眼

人を使う側は、人手を確保したいが為に給与を支払って事実上の雇用関係を結びながら、社会保険料を“節約”するために飽くまで個人事業主として請負契約を結んできたのだと思う。企業が自分たちの都合だけで「人件費コスト」を下げられるように、制度もまた巧妙に仕組まれていたと言うことができる。企業に好都合なシステムが、コロナ禍で一斉に牙を剥き、働く人に襲いかかっている。その状態を、会社は意図的に放置し、大切な労働者を窮地に追い込んで恥じることがない。

皮肉なことだが、コロナ禍によって仕事が奪われてしまったため、現実の労働関係の問題が露わになったということも言える。《毎日》は、フリーランスの働き方を保護する法整備を急ぐべきだという結論だが、本当に考えるべきは労働基準法を、真に労働者の権利を守れる法律に生まれ変わらせることではないだろうか。「労働形態による賃金差別の禁止」という1条を入れ込むだけで、世の中は大きく動き出す可能性がある(当然、全国で「賃金差別」の解消を訴える裁判の頻発が必要だが…)。

息を吹き返した首都機能分散論

【東京】は2面に首都機能の分散についての議論を取り上げた記事。見出しから。

リードは、「新型コロナウイルスの感染拡大で東京に人口や企業が集中するリスクが明らかになった」として、「首都機能の移転・分散の議論が活発化している」という。

首都機能移転の議論は90年代に活発化したが、巨額の移転費用などに慎重論が相次ぎ、移転先と考えられてきた地方を含め、議論はいったん下火に。

今回、コロナ禍を機に再燃した形で、自民党の「社会機能の全国分散を実現する議員連盟」は「一極集中是正は、感染症対策でも経済面からも必要だ」(古屋圭司会長)と意義を強調。

uttiiの眼

当然ながら、小池都知事は否定的なようだ。しかし政府は、骨太の方針などで一極集中を是正する方針を掲げている。また、以前、最高裁の移転先候補地に挙げられていた岐阜県の東濃地区は、リニア中央新幹線の中間駅も設置予定で、「東京に全てが集中している必要はない。リニアで移動もしやすくなる。今がチャンスだ」と意気軒昂なようだが、どうも「便乗」しようという腹が見え見えで、はたして大方を納得させられるような意義を示しうるのか、疑問が残る。

そもそも、テレワークが普通になったのなら、逆に中枢は1カ所に集中していても構わないはずであり、残るは感染症対応ということになるが、政府が地方の医療体制に力を注ぐことを中心に考える方法もあるだろう。

「首都機能移転」ありきでは二進も三進もいかない。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

3紙までは「窮状」で統一できましたが、《東京》はそうはいきませんでした(笑)。まあ、しかし、窮状はそこここに満ちあふれています。政府は「GoToトラベル」を強行するようですね。しかし、西村経済再生相がなんと言おうとも、感染の収束はまだ見えていないのです。

image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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