車を持って恋人を助手席に乗せて屋外の大スクリーンで映画を観る。若者たちがそんな姿に憧れる時代がありました。都会の若者の車の所持率が下がり、映画はシネコンで観るのが当たり前になったいま、コロナ禍によりまさかの復活を遂げようとしているのが「ドライブインシアター」です。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では今回、ドライブインシアターを積極的に展開するイオンの取り組みを紹介し、コロナ時代の経営資源の使い方のヒントを探ります。
なぜ、今ドライブインシアターなのか?~ウイズコロナ・アフターコロナのヒントになる経営資源の使い方
最近、ドライブインシアターが再注目されています。ドライブインシアターは、今少なくなりましたが、広大な場所に駐車場をもうけ、そこに特設のスクリーンを設置し、映画を写し車の中から見る、というものです。
私も子供がまだ小さいころに、親子3人でドライブインシアターに行き、「タイタニック」をみに行ったのを覚えています。息子が途中で飽きても、寝かせていればいいし、ぐずっても車内なので、他のお客さんの目も気になりません。車なのでお酒は飲めませんが、食事もできるし、意外とゆっくりできます。そのまま、帰りも楽だし、意外と便利ですよね。
今なぜ、日本でドライブインシアターなのか?
土地が広いアメリカでは昔からあったと思いますが、日本でもバブル時代の80年代後半くらいから、1990年代に流行りました。日経新聞によると、その後映画を見るスタイルが、一箇所に多くの映写場がある、「シネマコンプレックス」の形式に移行していったので、このようなドライブインシアター形式が減っていった、ということです。
イオンモールでは、ここのところ一部の店舗で、ドライブインシアターをやっているとのことです。イオンのホームページによると、鑑賞料金は、1台につき税込みで3000円、ポップコーン、ドリンク付き、1台あたりの鑑賞人数は、乗車定員以内、とのこと。複数の人数で行けば、通常の映画と同じか、それ以下のリーズナブルな価格で、映画を鑑賞することができます。
イオンのドライブインシアターは、他と何が違うのか?
イオンの場合、今まであったドライブインシアターと異なるのは、イオンの屋外駐車場を利用して車を止めること、そして、ショッピングモールの壁面を、スクリーンとして使うことです。その仮設のスクリーンに映写して、車の中から見るという感じで、映画のセリフや音楽は、FMラジオを通して聴けるということになります。
ドライブインシアターの形式であれば、不特定多数の人たちと一緒に、閉じた空間で映画を見る、というわけではないので、密を避けて鑑賞ができる利点があるため、映画好きだけれど、ここ最近映画館の、大スクリーンで映画を見ることができていない、という人たちのニーズに合っています。
雨が降ったりすると中止になったり、暑い時は、エアコンをかけっぱなしにしなければならない、ということはありますが、ウィズコロナ、またアフターコロナの「新常態」での映画鑑賞にとって、1つ見直されていくスタイルかと思われます。
イオンのドライブインシアターの経営上の特徴は何か?
またイオンでは、新しく設備投資をして映画館を建てる、ということではなく、現在ある駐車場と、壁面を利用する、ドライブインシアターになります。これにより、新たな設備投資が必要になったわけではありません。
また、映画を見る時の食事やドリンクを買ったり、見終わってから買い物をしたり、という、映画を見るコトの周辺にある、買い物需要もあるはずです。その意味で、今の資産を活用しつつ、「売り伸ばし」を目論むこともできそうです。
イオンエンターテイメントは、7~8月に全国10カ所で約2700台(8000人超)の、来場を見込んでいるとのことで、9月以降も継続し、開催場所を増やす方向で検討するということです。
この動きはイオン以外も出ていて、海水浴場での開催を計画されるなど、ドライブインシアター復活への動きが、広まりつつあるそうです。以前はやったものが再度形を変えて流行する、「リバイバル」のようなものです。
以前あったものに、ちょっとした工夫を加えて、低コストで実現できた、この駐車場を利用しての、ドライブインシアターには、コロナ禍の中でのマーケティングの工夫において、おおいに参考になる事例でした。この機会に、経営資源の見直し、そして、今の顧客のニーズを洗い直しをやってみるのも、いいかもしれませんね。
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