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最悪のシナリオ。「バイデン不況」で4年後にトランプ再登場の悪夢

いよいよ11月3日に投開票日を迎えるアメリカ大統領選。その結果は蓋を開けてみるまで分からないのは当然ですが、バイデン氏勝利を見越し「準備」を進める企業や国家も多いようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、バイデン大統領誕生で米国や各国の対中政策に生じる変化や、巷間囁かれる「バイデン不況」が訪れる可能性を考察。その上で、4年後の「トランプ氏大統領返り咲き」も否定できないとしています。

バイデン大統領でどうなるか?米国および世界の状況

米国の11月3日の大統領選挙で、バイデン氏が勝つ予想が多数を占めている。よって、バイデンが大統領になった時の政策を検討して、それに備える必要がある。バイデン政権の政策を検討する。

NYダウは、2月12日29,568ドルまで上昇して史上最高株価になった。そして3月23日18,591ドルまで急落して、9月2日29,099ドルまで上昇したが、10月16日は28,606ドルで、19日は410ドル安の28,195ドル,20日は113ドル高の28,308ドル、21日は97ドル安の28,210ドル、22日は152ドル高の28,363ドル、23日は28ドル安の28,335ドル。

追加経済対策の進展具合で、株価が上下に振れている。また、大統領選挙では、バイデン当選、上下院ともに民主党となるトルプル・ブルーとなる予測も出て、市場もバイデンシフトになっているが、楽観的展望のまま。

そのため、2.8兆ドルの経済対策や多額の公共事業などの多額の財政赤字で国債増発を見越して、国債金利が上昇し、ドル安に振れて104円台になった。

また、GAFAに対する独占禁止法の一環として、米司法省は、グーグルを独占禁止法で提訴した。ハイテク規制が民主党政権前から、一部始まっていることになる。しかし、米中ハイテク覇権の米国の中心的な存在に、どこまで規制をかけられるのか疑問を呈する人たちもいて、株価は大きく下落しない。

しかし、追加の経済対策がなく、ロビンフッダーたちも資金枯渇で、投資資金を積み増すことができないで、株価停滞になっている。

金価格も株に連動しているために、高値で上値も重い状態になっている。VIXも30前後で高くはない。皆がリスク回避のため、11月3日の大統領選挙結果待ちになっているとも見える。

日本の状況

日経平均株価は、2018年10月02日に24,448円でバブル崩壊後高値になり、3月19日16,358円まで下げ、10月16日は23,410円、19日は260円高の23,671円、20日は104円安の23,567円、21日は72円高の23,639円、22日は165円安の23,474円、23日は42円高の23,516円。

コロナワクチンの安全性に疑問が出てきたことや、104円台の円高で株価が一時下落したが、23,500円を維持している。22日マザーズは4.51%の下げで1,259p、23日一時4.8%安の1,199.05pと1,200p割れしたが、最終的には1,247pまで戻した。マザーズ人気が剥落したようだ。

ということで、日本も11月3日までリスク回避の様子見の状態になっている。このようなことを受けて、商い閑散で、出来高が2兆円割れが続いている。

先週までは、海外投資家が菅政権への期待から出遅れの日本株に投資していたが、菅政権の支持率が下がって、日本株先物の売りが出てきた。

そして、日米での実質金利では、日本のほうが金利が高いので、104円を下抜けすると、100円まで円高が進むことも考えられる。円高注意が必要である。

円高で日本株売りになる可能性もあるが、中国の景気は良いので、日本企業、特に自動車関連や機械関連の企業の業績はよくなるために業績が上振れる可能性もある。

今期は、前期比でマイナス33.5%の減益予想を出しているが、それが上振れると、株価は上昇する可能性もある。

ということで、米大統領選結果と決算発表待ちになっている。

バイデン大統領の対中政策

23日に第3回目の大統領選挙の討論会が行われて、FOXはトランプが勝ったと言い、CNNはバイデンが勝ったと言っている。要するに5分5分ということのようである。

大統領選挙は進行中で、混雑回避のために期日前投票も4,750万人がしていて、既に9割の人が投票先を決めている。期日前と郵便投票で8,000万人が投票するという。米国の投票者数は1億5,000万人であるから、約半分の人が投票日前に投票するということになる。そして、フロリダ州ではすでに開票が行われている。

その動向から既存のマスコミは、そろってバイデン勝利の予測を出している。

このため、、米大統領選挙でトランプ再選なら、今の政策が継続になり、対中強硬策が継続していくことになるが、バイデンが大統領になったら、どうなるのか心配になる。

選挙中は、国民の多くが対中強硬策を支持しているので、バイデン候補も対中緩和策は言えない。しかし、息子のハンター・バイデン氏は中国企業との関係が緊密であり、中国政策をオバマ元大統領時代の関与政策に戻すとも指摘され、中国ハイテク企業への制裁が解除されるのではないかとも言われている。

この時、日本は対中政策をどうすればよいのか、今から検討する必要がありそうだ。トランプ大統領も去年までは、対中政策を自国優位な関与政策であり、日本も中国との関係を友好的にしていた。

バイデン大統領が関与的対中融和政策をとるなら、これに、戻すしかない。よって、今はバイデン有利となり日本の政策も、どちらでも行けるように調整する必要が出ている。

現にドイツはバイデン勝利とみて、対中政策を友好的にした。米国次第で、日本も自国の政策を変えるしかない。日本は、台湾と違って中国敵対で前に出る必要もない。中国の行動で対応を調整することだとみる。

日本企業の多くは、中国ビジネスでの売り上げが多く、中国工場の利益率も高い。このため、企業経営者の多くは、日中友好を掲げている。二階幹事長もその日本企業の意見を基に親中的な発言をしている。

しかし、習近平国家主席は、おいそれと戦狼外交という対外強硬外交を止めることはできない。国内の親米派王岐山副国家主席などとの闘争で、欧米に甘い顔ができない。海外に敵を作り、国内の愛国心を盛り上げて、経済的な苦境を乗り越える必要があるためだ。

このため、台湾やインド、日本への軍事的な圧力を緩めるわけにはいかない。この状況では、エスパー国防長官も台湾海峡や南シナ海に軍事的に対峙するしかない。しかし、中国の兵器拡充の進展で、米国も軍事的にはこの海域には近づけなくなっている。

ということで、米国の軍事的な状態は、アジアシフトをするしかない状態である。バイデン候補は、軍産学の複合体の利益代表者でもあり、米軍の意向を反映する必要がある。エスパー国防長官をトランプ大統領も止めさせることができなかったように、軍部の意向をトランプでさえ拒否できなかったから、バイデンなら、なおさらである。

ということで、バイデン大統領でも、当初は対中政策は融和的になる可能性があるが、中国の対応が変化しないなら、米国も対中強硬政策に戻るしかない。

しかし、それに要する時間がわからないので、ドイツと同様に、日本も慎重な対応をするしかない。

バイデン不況は来るのか?

バイデン政権の政策として、インフラ投資、再生可能エネルギー整備、ハイテク企業の独占禁止法適用、法人税の増税、富裕税の増税などという政策を出している。

米国市場は、楽観的な見方をして、インフラ投資が膨大であるので、株価は上がるし、反対にコロナ下で企業が苦しいので増税はできないし、米中対立でハイテク規制もできないと高を括っている。

しかし、急進左派のウォーレン女史やバニー・サンダースが民主党にいて、この人たちの影響がどこまで政権に反映するのかが、わからない。財務長官はブレナードFRB理事になるのかウォーレン女史になるかで大きく違うことになる。

もし、ウォーレンが財務長官になったら、株価は大暴落になるとみる。これをウォール街も無視はできまい。

しかし、ブレナード財務長官になっても、法人税の増税は政権発足と同時に行うとカラマ・ハリス副大統領候補は前回の討論会で述べているので実行することになる。

バイデン候補も第3回討論会でも、「株で儲けて、生活する人は地元にはいない」と言っている。法人税の増税などの株価に影響する政策を示唆したように感じている。

法人税を21%から28%に増税すると、企業の収益は落ちるとされている。ということで、インフラ投資に浴さない多くの企業が減益になる。どこでバイデン不況を市場が織り込むのかが見物である。

菅政権の財政金融政策

コロナで企業業績が落ち、日本人の所得が減少して、それに伴い消費支出も減少してきた。このため、物価も下落してデフレ状態になっている。このままにすると、日本は再度、深刻な景気後退を招いてしまう。

GoTo政策は、著しい低下にあるサービス業・飲食業を助けるためであり、それ以外の多くの企業を助けていない。勿論、これも行う必要があるが、それだけでは不足している。

本来は、景気の良いときに金利を上げておいて、この局面で金利を下げる金融政策をするべきであったが、安倍政権は、景気の良い時も金利を上げずに、ゼロのままにし、また、金融緩和政策も量的緩和を長期に行ってきたことで、PERやPBRなどで制御しないETF買いなどをしたことで量的緩和も限界点に来ている。

このことは、再三再四注意したが、安倍政権と黒田日銀は無視してきた。その報いが現時点で出ている。このため、金融政策面ではできることがない。

よって、できることは財政出動政策しかないことになる。所得減少の原因は、企業業績が落ちたことによるので、デジタル化に必要な公共投資や民間会社への劣後株取得をしたり、中小企業や地方銀行の再編を促進するためや、一時的に業績が落ち込む空運業などに、資本注入などを政府が積極的に行い、そこで発行する国債を全額日銀が買い取ることだ。日銀法の改正が必要になる。

もう1つが、これらの効果は徐々にしか現れないので、即効果のあるのは、国民全般にもう1回、特別給付をすることであるが、これも複数回はできない。毎月の特別給付では急激な通貨量の増大になるのでインフレを起こす。

抑制した通貨量の増加にして、インフレの可能性も少なくするしかない。需要が減少する人口減少でのデフレ圧力と通貨量を急激に増加させないことでインフレを抑止するしかない。もう1つが、日本は、衰退モードに現時点はあるからだ。

衰退を止めるには産業政策が必要であり、菅政権は、デジタル化という産業政策を行い、衰退を止めようとしている。

それに対して、米国は、国民全般に広く毎月給付をするような通貨量を急激に増大させる政策をとるので、インフレの可能性が出ている。米国は、もう1つ、人口が増加してインフレ圧力が元からあるので、それに輪をかけることになる。

このため、米国は、国債金利上昇でインフレになり、国債に頼る財政政策ができなくなるために、スタグフレーションを起こしてしまう危険性も感じる。米国の衰退は、意外と早いような気もする。これに伴って、インフレからドル安円高になる可能性もある

このため、バノン氏が言うように、4年後に、再度トランプ氏が大統領になる可能性も否定できない。

さあ、どうなりますか?

image by: Christos S / Shutterstock.com

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