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もって1年か。コロナ拡大もGoToを止めぬ菅政権が選挙で大敗する日

もはや第3波が到来したとも言われる、新型コロナウイルスによる感染症の流行拡大。それでも政府は来年1月末までとしているGoToトラベルを中止するどころか、延長する方針すら示しています。本格的な冬を迎え感染の広がりが懸念される中でのこの判断は、国民の理解を得ることはできるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、来年の総選挙の自民党に対する評価について「トランプ大統領に向けられた選挙結果と同じことになる」と予測。さらに菅首相に対して、新型コロナ感染抑制失敗による辞任だけは避けるべきとした上で、今もっとも重視すべきことを記しています。

コロナ感染「再拡大」の日本

コロナ分科会では、感染拡大でフェーズ3地域に対して、「GoToトラベル」を中止すると尾身会長は言うが、菅首相は、「GoToトラベル」の中止はしないと強く述べた。

しかし、現時点でもGoTo宿泊施設従業員の感染は133人にもなっている。地方の感染した従業員たちは、地方のお年寄りに移すことになる。地方の死亡者数増加や病院ひっ迫が起きる可能性も視野に入れる必要がある。

「ハンマー&ダンス」政策で、コロナ感染拡大時には、経済的な縮小を伴う感染防止の方向の政策であったはずが、菅首相は経済優先で、コロナ感染拡大でもハンマーを使わないとした。

西村担当相も、菅首相に追従して「(GoToトラベルを利用するかどうかは)国民の皆さんの判断だと思います」と述べ、感染拡大でもGoToトラベルを中止しないようである。

これは、経済優先でポピュリズムのトランプ路線であり、科学的な知見を無視することであり、その先にはコロナ感染拡大で重症者の増加、死亡者の増加と病院機能の麻痺という結果が待っている。

今現在、日本でもコロナを完全に制御できているわけではないし、コロナ・ワクチンが急に準備できるわけでもない。期待できるのは重症化する患者を早期に見つける血液検査で、アトピーの診断で用いるCCL17の量を計ることだという。CCL17が少ない人は重症化しやすいという。それでも、感染者数が増加すれば、その分重症化する人が増えるので、解決にはならない。

ということで、野党は、日本学術会議の任命拒否問題より、コロナ感染拡大でも、「GoToトラベル」を行う菅首相を追求した方が、国民の支持を得ることができる。

そして、来年は総選挙を実施することになるが、国民の審判は、おそらく、トランプ大統領に向けられた選挙結果と同じことになると予測できる。選挙では自民党が大幅な減少の敗北になり、しかし政権は維持できるが、菅首相の任期は1年と短くなるような気がする。

地銀再編や規制緩和・デジタル化を積極的に進める菅首相に期待したいので、コロナ感染拡大防止を無視することで辞任する事態だけは避けてほしい。

国民の生命と経済とのバランスが重要であるが、最後は生命を重視する必要がある。菅首相は、業界団体や県知事たちの意見に流されているが、最後は国民の生命を優先するという基本的な考えを持ってほしいものである。哲学が大事な時である。

生命を優先すると、企業のリストラが加速して、中高年の失業者が溢れて、自殺者も増えるので、中高年失業者への特別給付金のような手当が必要になる。全体的な死亡者数を抑えるためにも必要なことである。国民全員ではなくても、失業者への手当は絶対に必要である。

しかし、自民党の敗北時を想定して、岸田氏は準備していてほしい。また、安倍前首相は、4年後のトランプ再任時の切り札カードとして温存してほしいものだ。1年後に再度首相になると、4年後にはトランプ氏が裏切りとして大変なことになる。それより、今は我慢してトランプ氏との暖かい交流を続けていてほしい。

バイデン政権は、民主党の左右激突で4年後、米国民はトランプ氏を再度、大統領にする可能性が大いにあるからだ。

株価の高騰抑制

海外投資家が日本株を買い始めている。日銀のETF買いの契機は、海外投資の売りによる日本株の下落で、日本経済の過小評価を是正するためでもあった。

そして、2020年度の税収も3兆円の大幅な減収が見込まれている。今、日経平均株価は25,500円であり、日本経済を過大評価しているように見える。

過大な評価の株価にすることは、資産バブルを放置することでもあり、バブル崩壊後の混乱を引き起こすことになるので、日本経済にとってもよくない。

その上、日銀は国家機関であり、税収の落ち込みを補填する方法があるのにしないのは、おかしい。もう1つ、株価と景気がバランスしていない。この調整を日銀がするべきである。株価はPBRやPERの評価基準で見て、過大な評価なら是正することは、日銀がETF買いをした時点で、発生した責任でもあるはずだ。

日銀が行うべきは、株価下落時の株買いを行うなら、基準以上で上昇時の株売りを行うべきなのである。勿論、株価が上がっている時に、大幅な下落をさせるのは、いかがなものかと思うが、株価の上昇を抑える程度の少量の株売りを長期に行う必要がある。

そして、ある程度の株を売れば、余剰金が出て、税収の落ち込みを補填できるはずである。そして、それが資産を適正に保ちながら、ETF買いの金融政策を長く行えることにもなる。

次の統制資本主義社会にするためには、株価の操作を上方向だけではなく、下方向もないと統制できないことは制御理論の鉄則でもある。

バイデン政権の4年間

米国の大統領選挙の開票がすべて終わり、最終結果でもバイデン氏306でトランプ氏232となり、バイデンの勝ちになっている。トランプ氏が提訴してもひっくりかえすのは、無理であろう。もう、バイデン政権の今後を見たほうが良い。

そして、バイデン政権の政策が少し見えてきた。対中政策は強硬的であるが、制裁関税などではなく、同盟国とともに口頭で非難をするだけのようだ。

菅首相との電話会談でも尖閣を日米安保の範囲としたが、中国に気を使い、公式には尖閣を述べないなど「言行不一致」もある口先外交になっている。それを見越した中国は、米国を脅す方向になる。しかし、米国は口先外交で、それ以上には踏み出さない。

北朝鮮に対しても同じであり、口先外交をするだけのようだ。金正恩委員長は、埒のあかない米国に対していらだち、ICBMの試験を大々的に行うでしょうね。日本にICBMが飛んできて、その都度、大騒ぎをすることになる。

バイデン政権は、政権発足と同時にレームダック化する。上院で共和党多数になり、人事も予算もすべてマコーネル共和党上院院内総務との了解の元で決まることになる。裏を返せば、何もできないということになる。

このため、民主党的な大判振る舞いも富裕層への増税、オバマケアの拡充も、大学無償化もできない。社会主義的な政策は封印される。できるのは、コロナ対策など限られる。

外交は、同盟国重視というが、中国やロシアに対しても弱腰で、軍事費も増やさないので、何もできない。中国は南シナ海の領有権を確保して、次に西太平洋に出てくる。益々、中ロは勢いを増すことになる。

バイデン大統領は、中ロとの戦いを避けて、中東などの途上国に、爆弾を大量に落とすことしかできない。軍産複合体の利益代表であるバイデン大統領は、戦争を始めることもないが、戦争を止めることもない。

その内に、大判振る舞いもないので、デフレになり景気も落ちて、ワクチンができて特別給付もなくなり、貧困層の生活が苦しくなり、米国民はトランプ時代の失業率の低い完全雇用状況の経済を懐かしむことになる。しかし、デフレになるので、MMT理論は有効になり、財政出動をできるが、共和党が予算を阻むことになる。

この赤字財政と、ワクチンができて特別給付もできず、IT企業への規制と課税で勢いがなくなり、その上、有効な産業政策も打たないので、ドル安になると見通せる。勿論、株価も大幅な下落になり、経済的な衰退も起きる。

日本企業や韓国企業の工場を誘致するなどの産業政策を行うべきであると思う。しかし、韓国は中国陣営になり、米国を振り向かなくなる。

ワクチンもできて、FRBの金融緩和の名目もなくして、打つ手がないことになる。財務長官にイエレン氏がなると、イールドカーブ・コントロールで金利は低い状態をキープできるが、通貨の下落で埋め合わすしかなくなる。

このため、円高にもなる。日本経済も大きなダメージを受けるが、米国の投資家が日本株を買うので、株価は上昇する可能性もある。菅首相のデジタル化政策などの産業政策が重要になる。

一方、米国ではバイデン政権で、米国の衰退を隠すことができなくなる。軍事費と社会保障費など取り合いで民主党内での穏健派と左派の戦いは、収拾がつかなくなるはず。

このため、4年後の大統領選挙では、トランプ氏が優位になる。バイデン大統領は4年で辞めるので、次の民主党候補はカラマ・ハリス氏になるが、米国民は再度、トランプ氏を選択することになる。

日本も4年後を見据えて、準備しておくことである。トランプ氏が出てきたら、日本は安倍さんが出ていくしかない。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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