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税理士が解説。政府が検討する「M&A税制改正」で何が変わる?

新型コロナウイルスが猛威をふるう令和2年度に改正される税制にはどのようなものがあるかご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』では著者で現役税理士の今村仁さんが、現在検討が進められている税制改正の項目で実現の可能性が高いものを列挙。その中でも「M&A税制」について詳しく解説しています。

2021年度(令和2年度)税制改正速報、M&A税制など

速報と言っても、まだ確定事項ではありませんが、現在検討が進められている項目で実現の可能性が高そうなものを下記に列挙します。

・退職金節税規制
・固定資産税の評価替えに対する据え置き措置
・住宅ローン減税の拡充延長
・海外高度金融人材受け入れ税制
・カジノ税制
・教育資金贈与非課税制度の縮小延長
・M&A税制

今回はその中でも、末尾の「M&A税制」について、詳しく解説します。

M&A税制とは?

政府は、中小企業のホワイトカラーにおける生産性向上に、並々ならぬ意欲を示されていて、税制でもそのバックアップとなることを期待されています。

中小再編、税で後押し 政府・与党、設備投資の最大10%控除(日経新聞2020.12.3)

政府・与党は中小企業の再編を促す税制の概要を固めた。M&A(合併・買収)後の想定外の損失に対応できるよう、買収費用の一部を税優遇し、約5年間は手元の資金を手厚くする。相乗効果を高められるように設備投資額の最大10%を法人税から控除することも認める。菅義偉首相は中小の生産性を高めるための再編に意欲を示しており、税制で支援する。

与党の税制調査会で議論し、2021年度税制改正大綱に盛り込む。政府が21年の通常国会に中小企業等経営強化法の改正案を提出し、中小の再編計画を認定する仕組みをつくる。中小企業は、買収による生産性向上や、買収後の雇用の配慮を盛り込んだ計画をつくり、政府から認められれば税優遇を受けられる。

中小企業のM&Aを促すために税金の控除などがあるのですが、上記記事の最後の方にある「中小の再編計画を認定する仕組みをつくる」となっています。昨今よくあるパターンですが、どの中小企業でも支援するのではなく、事前にきちんと計画を立てた企業のみ支援するというスキームのようですね。

準備金制度の創設

全部で3つの税制改正が予定されていますが、すべてに共通するのは「買い手への優遇措置」ということです。

まず一つ目は、「買収時のリスクを軽減するための準備金制度の創設」です。中小企業のM&Aにおいても、買収後に簿外債務や訴訟案件、労務トラブルなどが発覚するリスクがあります。これらのリスクに備えるために、「買収費用の一部を準備金として計上して税務上の損金(経費)に算入できるようにする」予定です。

買収費用を経費算入できると、もちろんその分、払うべき法人税等が減ります。ただし、準備金制度ですので、買収後5年後あたりからは、益金(収益)計上となりますから、そこで課税の取戻しが行われます。

設備投資減税10%

また他にも、「システム統合などの設備投資も、投資額の最大10%を法人税から税額控除できるようにする」予定です。M&Aを実行してからの設備投資費用に対する支援となっています。資本金3,000万円以下の場合の税額控除率は10%、資本金3,000万円超1億円以下の場合の控除率は7%で調整されているようです。

更には、「買収後に人員削減するのでなく、雇用の継続を促す制度」も導入される予定です。買収先の従業員を雇い続け給与などの総額を前年から一定割合以上増すと、税額控除を認める案で調整されています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 マネーコンシェルジュ税理士法人 【発行周期】 週刊

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