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遅すぎたGoTo停止。無意味な「勝負の3週間」が招くニッポン崩壊

急速な支持率低下を受けGoToトラベルキャンペーンを一時停止とした菅首相ですが、新型コロナウイルスの新規感染者数は増加の一途を辿っています。もはやこの状況に歯止めをかけることは不可能なのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、コロナ対策特別措置法で罰則規定を設けてでも早期の感染拡大防止を行う必要性を強調。さらに自民党に対し、明らかに誤っているコロナ対策を取る菅首相の解任を要求しています。

【関連】今さらGoTo一時停止。産経すら苦言を呈した「国民軽視」菅首相の宰相失格

コロナ感染爆発は必至か?

前回のコラム(「今さらGoTo一時停止。産経すら苦言を呈した『国民軽視』菅首相の宰相失格」)で感染爆発になる可能性があるとしたが、心配したように、東京の新規感染者数は増大して、医療崩壊の危険水位になってきた。それを検討する。

菅首相は12月14日、観光需要喚起策「GoToトラベル」事業を12月28日~2021年1月11日まで全国一斉に停止すると決めた。新型コロナウイルスの感染者が急増し、共同通信社調査(5~6日)の支持率は前月比12.7P減の50.3%、不支持率が同13.6P増の32.8%と内閣支持率が急落したことで転換を迫られたようだ。共同通信の調査が一番信頼性が高いので、官邸は焦ったはずである。

しかし、GoToトラベル一時停止の決定が遅いし、28日までの間に感染拡大してしまうことになる。GoToトラベル中止前に使おうと、旅行に出かけ感染拡大を促進した形になっている。菅政権は、感染拡大の緊急性を理解していない。

その上に、5人以上での飲食を自粛と宣言しながら、8人という大勢でステーキ会食したことで、国民世論が沸騰している。自民党内の岸田前政調会長や田村厚労相からも「自らの行動をしっかり考えていかなければいけない」と批判された。

そして、東京は17日、過去最高の822人の新規感染者が出て、全国では3,211人もの新規感染者が出ている。死亡者も1日で38人、重傷者は全国で605人となっている。18日も東京で664人の新規感染者と、全国で48人の死者、609人の重症者になった。19日も東京で736人の新規感染者となっている。

それと、広島市は18日、直近1週間の10万人当たりのコロナ新規感染者数が20政令指定都市の中で最多の38.9人になり、医師会は「大規模災害に匹敵する緊急事態」とし、市民に不要不急の外出を控えるよう訴えた。

同様に、東京でも重症者数が多く、東京の医療警戒度を最高レベルに引き上げた。相当に医療機関のひっ迫感が強い状態になっている。入院を70歳以上で基礎疾患がある人と条件を引き上げている。

しかし、それでも東京アラートとは言うが、行動規制を小池都知事は求めないので、東京の感染爆発は不可避になっているように見える。なぜなら、繁華街の人出は減らないし、だれも行動自粛をしていない。

国民が専門家の見識に耳を傾け、自らの意思で自粛して危機を乗り越えるスタイルはすでに限界と思える。

このままであると、心配した緊急事態再宣言になる可能性が高いようだ。知事も首相も、経済と命の二兎を追いかけるので、どうしても感染が拡大してしまうことになる。

世界的に見ても、感染拡大したドイツも行動規制の強化となっているし、お隣韓国も行動規制強化とPCR検査の拡大をしている。英国はロックダウンを再度発出している。

日本の北海道、東京、愛知、三重、大阪、兵庫、高知の7都道府県は重症者用か中等症者用病床の使用率50%以上のステージ4(爆発的感染拡大)になっているし、病床の使用率25%以上は22都道府県になっている。ステージ4は、兵庫県63.6%、大阪府が60.4%、高知県が57%、愛知県が54.9%、北海道が54.8%、三重県が51.6%で、重症者用病床の使用率で東京都66.4%である。

ステージ3は、岩手県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、長野県、岐阜県、静岡県、京都府、奈良県、岡山県、広島県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県だ。

しかし、東京などでは行動規制もなく、この感染拡大を止めようという意思を政治家から感じられない。このため、どこまで医療崩壊したら、行動規制するのかが問題になっている。分科会の尾身会長も強く行動規制を菅首相に求めている。

医療崩壊につながるステージ4が行動規制をかける基準だと思ったが、それに反して、小池知事はアラートとはいうだけで、行動規制を取らないし、菅首相も、GoToトラベル中止だけであり、それでは、このステージ4の意味は何であったのかということになる。

全国知事会もGoToトラベルについて、再開や延長する場合の条件を明らかにするよう求めた。医療基準と行動制限の実行条件が曖昧になっているので、県としての計画が立てられない状態になっているからだ。

ということで、行動規制になる基準も示されないで、感染の一層の拡大(感染爆発)が起きると不安になる。

何度も言うように、小池知事も菅首相も、危機の時には早い対応が被害を少なくするという緊急時対応の基本を守っていない。

不要不急の外出自粛という強い行動規制をした大阪や北海道は、この1週間で新規感染者数が減少している。早く、東京や首都圏、ステージ4になった地域も、明確な行動規制が必要な段階にきている。

感染拡大でもロックダウンなどの行動規制しなかったスウェーデンのグスタフ国王が7,800人の死者を出した自国の政策は失敗であったと述べ、その直後、マスク着用を初推奨した。

早く行動規制して、早期に感染拡大を止めないと、緊急事態宣言で交通機関も止まり、日本経済全体も止まってしまうことになる。

事実、現時点でも航空各社の国内線年末年始の予約が、前年45%減で、JR各社の予約は61%減にもなっている。年始年末までにコロナ感染を鎮静化しなかった咎が、交通会社に押し寄せている。

このことで、基本給や賞与などの賃金総額が「減る見通し」と答えた人も29.9%で、「雇用不安」とした人が58%にもなっている。物価も0.9%の下落と、いかにコロナ感染拡大を早期で短期に止める必要があるかを考えさせるデータになっている。「勝負の3週間」は、正しかったが、それに政策が伴っていなかった。

だらだら、行動規制もせずに感染拡大を放置すると、いつまでたってもコロナ感染が拡大して、飲食店の時短要請も1月11日までの延長になったが、感染拡大では時短を長期に実施してもらうとともに、医療崩壊が起きて全面的な行動自粛の緊急事態宣言に追い込まれる。

コロナ対策分科会には経済学者も居て、コロナ感染拡大と経済のバランスをどう取るかを議論したはずである。その分科会の尾身会長も分科会の総意として、早期の行動規制を求めている。感染拡大を早期に防止しないと、大拡大した状態から縮小させるのは、行動自粛のより強固な策を長期間することになる。

このため、強固な策をとるためには、コロナ対策特別措置法で、罰則規定を設けて、その代わり十分な給付を行うことのできる法律が必要である。日本はコロナワクチン接種が遅れているので、正常化するのは2022年春以降になると見込まれるので、早く法律の整備が必要である。

岸田前政調会長に期待か

日本は、中国の前面に位置して、国力、経済力を感染症で削ぐと、中国との経済力差が増して、日本の安全保障力が低下することになる。

そのためにも、コロナ感染症を早く克服して正常化する必要がある。菅首相のコロナ対策は、非常に間違っている。その結果、感染拡大が収束しないので、内閣支持率下落も止まらない。

ここは、岸田氏が対案を出して、次の首相候補として政策を見せて、自民党内外の支持を得て、その上で通常国会後、臨時の自民党大会を開催して、総裁の解任決議をすることである。そして、麻生派、細田派、岸田派が一致して、岸田首相へ向かうべきだ。

このまま、2021年秋を迎えると、自民党はボロ負けになる。そうしないためにも、ここは自民党総裁を変える必要があり、そして、政策を180度転換することである。

その上で、コロナ感染症が下火になったら、すぐに衆議院選挙をするしかない。追い込まれ解散だけはしてはいけない。

この日本を海外投資家は見ている。コロナ感染を早期に食い止めると、海外投資の資金が流入して、日本経済は大きく前進することになる。

もし、できないと、コロナワクチンの接種が遅いのでコロナ収束は、他の先進国より遅れるので、日本売りが起こることになる。

日本の分岐点に差し掛かっている。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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