新型コロナウイルスの影響により滞っていた「一帯一路」に変わり、「ワクチン外交」で勢力拡大を目論む中国ですが、思わぬ事態に見舞われているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんが、自国製ワクチンの効果に疑問符をつけられた中国による卑劣な行いを糾弾するとともに、今後も習近平政権が様々な謀略を仕掛けてくる可能性があるとして、日本にも注意を促しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年2月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
他国批判で自国評価を上げようとする中国の卑しさ
● 自国のワクチンにケチがついた腹いせにファイザーのワクチンが危ないと言いふらす中国
中国は自国開発のワクチンを他国へ輸出する「ワクチン外交」を展開しています。とくに貧しい発展途上国に対して安いワクチンを大量に輸出し、中国の影響力を拡大しようと目論んでいます。
現在、習近平政権が注力を傾けてきた「一帯一路」は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によりほとんど停止状態にありますが、それに代わって中国は「健康のシルクロード」という構想を喧伝しています。
● 中国が仕掛けるワクチン外交 「健康のシルクロード」建設着々
「一帯一路」は、中国を起点にヨーロッパやアフリカまでを陸と海のシルクロードで結び、その沿線国のインフラ建設を中国が支援してヒト・モノ・カネの流れをスムーズにすることで、巨大な経済圏を建設するというものでした。
しかしその実態は、中国がインフラ建設支援という名目で発展途上国に多額の資金を高利で貸し付けて借金まみれにする、いわゆる「債務の罠」を仕掛け、支払不能になった国からインフラ使用権を巻き上げ、中国の言うことを聞かせるといった、「経済植民地化」でした。
その手法があまりに悪評で、友好国であるはずのパキスタンすらも、一帯一路に関連した鉄道路線改修計画などを再考せざるをえなくなっていました。
● 焦点:「借金の罠」恐れるパキスタン、中国一帯一路計画を再考
そんな折に、新型コロナウイルスが世界的に蔓延し、一帯一路は完全に止まってしまったわけです。そこで中国が出してきたのが、「ワクチン外交」だというわけです。
中国からすると、「債務の罠」を警戒して中国支援のインフラ建設を見直す国が続々と出てきていて、もともと一帯一路は停滞気味だっただけに、むしろ、より差し迫った問題である新型コロナウイルスへのワクチンを支援するほうが、カネが稼げます。
香港の安信証券の試算によれば、中国は、低・中所得国のワクチン市場のわずか15%を獲得しただけで約28億ドル(約2,900億円)の純利益を見込めるそうです。
新型コロナウイルスは中国が情報を隠蔽したことで世界に拡散したわけですので、ワクチンを低所得国へ流すことで、中国への批判を緩和しようという狙いがあるのでしょう。また、現在はインフラ建設よりもこちらの支援のほうがカネも稼げますし、さらに、このワクチン外交で発展途上国を借金漬けにすることも可能です。
日本もそうですが、感染拡大は政権に対する不満を高めます。そのため、各国ともワクチンは喉から手が出るほど欲しいはずです。それだけに、中国は自国への批判をやわらげるのみならず、恩も売れますし、カネも稼げる。一石三鳥の効果が見込めるわけです。
ところがここにきて、中国製のワクチンの有効性について、疑問が呈されるようになりました。1月12日には、中国・シノバック製のワクチンの治験を行っているブラジルで、その有効性が当初の78%から50%に引き下げられるということがありました。
50%の有効性では、2人に1人には効かないということになります。
これに対して、アメリカのファイザー社のワクチンは、同社の診療試験では95%の有効性があると発表、また、イスラエルの治験でも92%の有効性が発表されています。
● ワクチン有効性「92%」 ファイザー製2度接種で―イスラエル
こうなると、腹の虫が治まらないのが中国です。ブラジルで中国製ワクチンの有効性低下が発表されて以来、中国によるファイザー製ワクチンについてのフェイクニュース拡散が急増しているそうです。
たとえば、ノルウェーでは、ファイザー製ワクチンの接種を受けた高齢者施設のお年寄り30人が死亡したということですが、もともと他の高齢者施設では1日平均45人が死亡しているところもあり、ワクチンとの因果関係は高くないとされているにもかかわらず、中国の官製メディアでは、いかにもファイザー製ワクチンの副反応で死亡したかのように伝えるケースが多いということです。
冒頭「ニューズウィーク」の記事によれば、ノルウェーでは昨年の12月27日以降、約6万3,000人がワクチンの摂取を受け、そのうち104件に副反応が起こり、死者も出ているそうですが、ノルウェーの医薬品庁は、もともと弱っていた高齢者の状態が更に悪化した可能性もあると見ているとのこと。
しかし、中国では人民日報系の環球時報や中国中央電視台(CCTV)系のニュースチャンネルCGTNなどは、「西側メディアは、この問題をすぐに報じなかった、見て見ぬ振りをしている」と批判したそうです。暗に、ファイザー製ワクチンによって多数の死者が出ているのに、西側諸国はこれを隠蔽しているとほのめかしているわけです。
こうしたフェイクニュースや、嘘の評価というのは、中国の十八番です。
例えば、大手通販サイトのアマゾンでは、中国企業がサクラを大量に雇って、自国商品に対して高評価をつける「やらせレビュー」を書かせる行為がさかんに行われています。そればかりか、他社のライバル商品には最低評価を大量につけて、商品価値を下げるといったことも横行しています。
同じような商品でも、日本のメーカー品にはやたらと低評価が並び、一方で名前も聞いたことがない中国製品にやたらと高評価が目立つというケースでは、そうしたサクラ行為が行われている可能性が高いでしょう。
「戦わずにして勝つ」というのが孫子の兵法であり、そのために相手の評判を落として信用を失墜させることも、当然の戦略とされています。
もっとも、西洋随一の「中国通」として知られ、四書五経を英訳したことでも有名なレッグ博士は、儒教思想について「古代野蛮への回帰」と評しました。儒教は祖先を崇拝する尚古主義であり、新しいことを考えることはしません。
だから中国では昔から、新しいことは行わず、アイデアや技術は他国から盗み、自己宣伝と他者を貶めることばかりが横行してきたのです。
昨年(2020年)7月、日本の防衛省は2020年版防衛白書を発表しましたが、そこでは、「中国が新型コロナウイルスを利用して、自らに有利な国際秩序の形成や影響力の拡大を目指す動きがある」と警告しました。
ワクチン外交はその一環であり、そのためには様々な謀略をしかけてくる可能性があるのです。
日本もこれからワクチン接種が始まりますが、中国のフェイクニュースにはくれぐれも気をつける必要があります。
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