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なぜ足が付いた?ゴーン氏の脱出費用1.5億円「ビットコイン支払い」の盲点

暗号資産(仮想通貨)の代表格・ビットコインが今年2月に一時「1BTC=600万円」をつけるなど急騰しています。勢いは弱まる兆しを見せず、この流れはしばらく続きそうです。また、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(66)が日本からの脱出を手伝った協力者に、その見返りをビットコインで支払っていたことが判明しました。そんなビットコインについて、ジャーナリストでメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』の著者でもある内田誠さんが言及。読売新聞に掲載された記事を振り返りながら、ビットコインの今後とその可能性について迫ります。

何かと話題の「ビットコイン」を新聞はどう報じているか?

きょうは《読売》から。

ゴーン被告の逃亡を手助けしたとして逮捕された元グリーンベレー

隊員とその息子に対して、ゴーン被告側は1億5千万円近い送信を、なんとビットコインで行ったということです。3面の解説記事「スキャナー」は、緩和マネーが流入することによってビットコインが暴騰していると書いています。

何かと話題の多い「ビットコイン」について、《読売》のサイト内には29件(実質25件)の記事がありました。

【フォーカス・イン】

まずは3面記事の見出しから。

緩和マネー

暗号資産に流入

ビットコイン急騰

従来は個人取引中心だった暗号資産(仮想通貨)のビットコインは、このところ北米の著名企業や機関投資家が相次いで投資に参入すると表明したこともあり価格が急騰。1年で10倍以上に膨れあがった。

米マイクロストラテジー社は10億ドルを投資。資産運用会社ブラックロック社も投資先にビットコインを加え、テスラのイーロン・マスクCEOは15億ドル(約1600億円)を投資したと表明した。テスラは近い将来、支払い手段としても使えるようにするという。カナダのトロント証券取引所ではビットコインの上場投資信託(ETF)が上場された。

背景には新型コロナウイルス対策で、世界の中央銀行が金融緩和を行っていることがある。市場に緩和マネーが溢れているのに低利回りが続いているので、値上がりが期待できるビットコインに関心が集まっている。

ビットコインの価格はこれまでも乱高下を繰り返してきており、各国の金融政策次第で暴落する可能性もある。また利用者の匿名性が高いので、マネーロンダリングに悪用されるおそれも指摘されている。

現在は米ドルでの取引が全体の8割を占めるビットコインも、17~18年には日本の個人投資家の間でブームとなり、一時は6割程度が日本円での取引だった。18年の「コインチェック」の資産流出事件(別の暗号資産NEM)で警戒感が高まり、その後の日本国内の投資家による投資は低調に。

●uttiiの眼

ビットコインの歴史と現在について非常によくまとまった記事。上記の紹介の中には入れていないが、「サトシ・ナカモト」とブロックチェーン技術から始まり、暗号資産は今や8000種に及ぶこと、フェイスブックが計画を発表したリブラ(現ディエム)を巡る問題、主要国中央銀行によるデジタル通貨の試みなどに話が及んでいる。

【サーチ&リサーチ】

*《読売》のサイト内、最初の記事は2017年5月。

2017年5月21日付

「4月に施行された改正資金決済法で、仮想通貨がプリペイドカードや商品券と同じ『支払い手段』と定義され、大手家電量販店ビックカメラが、都内2店舗でビットコインによる決済サービスを開始するなど、実際に使える店舗や企業が増えている」と。

*その後、ビットコインを管理するシステムの分裂、対法定通貨価格の乱高下などが問題となる。そして、「コインチェック」580億円NEM流出事件へ。

2018年3月9日付

「コインチェックの580億円NEM流出から1か月半が過ぎたが……流出したNEMは、匿名性の高いダークウェブ上で販売され、すでに38%が第三者に渡ってしまった」と。

*日本国内では、ビットコインは早々に転機を迎える。

2019年6月6日付

「『仮想通貨』の呼称を『暗号資産』に変更する改正資金決済法などが、国会で成立した。国際的な表記に合わせる。」として、《読売》社説は、「たとえ革新的な金融技術が使われているとしても、実態はマネーゲームの道具である。もはや通貨とは呼べない。」と“決別宣言”でもするかのような言い切り。

2020年1月29日付

「デジタル通貨 中銀は議論尽くし知見共有を」と題する社説で、《読売》は「中銀デジタル通貨が、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)と違うのは、ドルや円と同じ法定通貨という点である。暗号資産のような、国家や中銀が制御できない民間のマネーが広まると、中銀による金融政策の効力がそがれるほか、資金洗浄や脱税に悪用される懸念がある。」として、いわば攪乱された金融世界の救世主として、中銀デジタル通貨に「期待」を寄せている。

*さらに、民間銀行などの「デジタル円の検討会」設立の動きについても期待して…。

2020年6月3日付

「3メガバンクやJR東日本などがデジタル円の検討会を設立するのは、早期導入に向けた議論を活発にさせる狙いがある。米フェイスブック(FB)による「リブラ」や中国の「デジタル人民元」への警戒感から、日本でも中央銀行のデジタル通貨の発行を求める声が急速に高まっている」と。

*その後、身代金要求型サイバー攻撃やゴーン被告逃亡に絡んでビットコインが登場。会津大で日本初のデジタル地域通貨の運用開始など。

2021年1月29日付

「中国当局がデジタル通貨の発行を急ぐ狙い」についての記事で、中国人民銀行の副総裁が強調したのは「ビットコインのほか、米フェイスブックが計画を主導する「ディエム」(旧リブラ)などの暗号資産(仮想通貨)による「侵食」を阻止し、デジタル経済の発展のための基本通貨を投入する必要がある」という点だったと。

2021年2月1日付

北朝鮮からの脱北者がサイバー部隊の養成システムについて取材に応じた。その中であるサイバー部隊要員から聞かされた話として…。彼らは「目的は知らされず、ひたすらプログラミングを習い、行き着いたのがビットコインのハッキングだった」という。

*そして、テスラが投資したことで相場が急上昇したことなど、きょうの記事の内容につながる情報が伝えられている。

●uttiiの眼

国家権力に依存せず、国家の枠を超えて価値の移動を可能にするツールとしてスタートした暗号資産の技術が、次第に国家によって取り込まれ、覇権争いにも利用されてきたと評すべきなのであろうか。間違いないのは、そのことに最も熱心なのが中国であり、デジタル人民元は、暗号資産や他国のデジタル通貨を掣肘し、やがて米国から「覇権」を奪取するツールとして威力を発揮する…そんな可能性があるのだろうか。

ところで、ゴーン被告関係では1つの疑問が浮かぶ。ゴーン被告の息子が逃亡を手助けした2人に対してビットコインで多額の支払いをしたことは、なぜ発覚したのか。

簡単に「足が付く」のであれば、犯罪への悪用は難しい。既に、身代金要求型のハッカー攻撃の結果として多額の身代金がビットコインの形で世界中を飛び交っているのだとしたら、違いはどこにあったのか。

image by : shutterstock

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