業績が悪化した企業の経営者らがよく口にする「コストカット」という言葉、自身の社内で耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。しかし、この言葉を上層部が口にしたら経営手腕を精査すべきと語るのは、無料メルマガ『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』の著者である佐藤しょ~おんさん。誤解して使っている人が多いという「コストカット」という言葉の真意と、ビジネスにおいてまず「コストカット」の前に優先すべきものについて詳しく解説しています。
コストカットの前にエクスペンスカット
景気が悪くなると、やたらと耳にするのが、
■ コストカットをする
という言葉なんですね。
あなたの会社の経営者がこのセリフを言い出したら、その人はビジネスを良く分かっていない可能性があるので、経営者を値踏みするつもりで、その真意を確認しましょう。
コストは日本語で原価です。ビジネスとは有り体に言えば、「何かを誰かに売ること」で成り立っています。売るモノが形のあるプロダクトなのか、形の無いサービスなのかという違いはあっても、売る何かがあって、それを買う人がいて成立するわけですね。
そして原価とはその「売る何か」を成立させるために必要なおカネのことです。プロダクトの場合には、モノを作るための材料費がそれにあたり、サービスの場合にはサービスを提供するための人件費などがあたります。
つまりコストカット、原価を削るということは、売るモノの質にダイレクトに影響があるということです。今まで1,000円で作っていたモノを800円で作れということで、何もしなければ200円分の何かが失われるということなんです。
もちろん会社が要求するのは、200円原価を削っても同じ質になるようにしろということなのですが、そのためには
- 材料費を圧縮したり
- 何らかのイノベーションを起こしたり
- 製造数を増やしたり
などなど…どこかに売るモノに影響が出るわけですよ。そんなの当たり前じゃないかって。私がここで言いたいのは、
- 原価の前に削るモノがあるでしょ
ということなんです。前述したように原価というのは、売るモノに直接影響を与えますから、影響を与えないようにするための施策が必要になるんです。ところが、売るモノに全く影響を与えないおカネがあるんです。こっちを先に削れといいたいわけです。それが経費(エクスペンスまたはオーバーヘッド)と呼ばれる科目です。
経費というのは、売るモノに影響を与えないけど、使わないとビジネスができなくなるおカネのことです。
ここを混同している人がたくさんいるんです。
コストカットだ!といって営業所の蛍光灯を間引いて電気代を下げようとする社長は、原価と経費の違いを理解していません。電気代がコストになるのは、モノを作っている工場の場合だけで、それを売る側の営業所の電気代はコストではなく経費です。
このおカネは売るモノを成立させるのに絶対に必要なのかどうか?を考えると、製造工場での電気はモノを作るのに必須なので、これはコスト(原価)だと言えますが、モノが出来上がって売る立場の人たち(それが営業所です)が使っている電気は、それを止めても売るモノに何も影響を与えない(だって既にモノは完成しているから)わけですから、これは経費になるわけです。
そう考えたら、
- 社長が乗っている社有車も
- 接待費も
- セミナーなどの勉強代も
- 出張で使う飛行機やホテル代も
これは基本的に(一部ビジネスモデルによっては例外があります)コストではなく、経費なんですよ。
そして、経費というのは、これは使わなければ全額が利益になるのです。経費が20%減ったら、その20%分はそのまま利益に上乗せされるのです。だから真っ先に減らすべきなのは、コストではなく経費なのです。
経費削減とコスト削減は全く次元の異なる話で、この違いを正しく理解する必要があるのです。
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