海外でのオリンピック報道 ニューヨークタイムズ
続いて6月21日のニューヨークタイムズの記事をご紹介します。
「なぜ東京オリンピックが中止にならないのか?その答えは、何十億ドルもの資金、何年にもわたる準備、そして何千人ものアスリートたちの待ちきれない気持ちにあります」
との表題で数字を挙げて説明しています。
154億ドル
もしオリンピックが開催されなければ154億ドルの投資がほとんど無駄になってしまいます。この数字はオリンピック予算の中でも記録的なもので、昨年だけで30億ドルも膨れ上がっています。しかも、お金の損失に加えて日本の風評被害は計り知れないものがあります。
30年以上日本に住んでいる投資アドバイザーのJesper Koll氏は「結局のところ建設費が回収できるかどうかではなく、国のブランド力が高まるかどうかが重要なのです」と語っています。
40億ドル
これはオリンピックが開催されなかった場合に、国際オリンピック委員会(IOC)が返金しなければならない可能性のあるテレビ放映権収入の額です。この数字は、IOCの収入の73%を占めています。
12.5億ドル
2020年3月米国での放送権を持つNBCユニバーサル社は、東京オリンピックの国内広告を12億5,000万ドル販売したと発表しました。最高経営責任者であるジェフ・シェル氏は先週の投資家会議で、「視聴率次第で東京オリンピックは会社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」と語っています。
5億4,900万ドル
国際オリンピック委員会は各国のオリンピック委員会に5億4,900万ドルを分配しています。多くの国のオリンピック委員会にとって、それは管理費からトレーニング補助金、青少年育成プログラムまで重要な財政基盤となっています。今年の初め、英国オリンピック協会は、もし今夏の大会が中止になった場合、財政的に破綻するという見通しを示しました。
15,500人
延期されたことで、オリンピックでは約11,100人、パラリンピックでは約4,400人、合わせて200カ国以上のアスリートたちが、1年間の待機を余儀なくされました。結婚の予定や大学への入学、さらには子供を持つ計画を遅らせたのです。世界中の競技者が大会の開催を待ち望んでいるのは当然のことです。
37%
これは日本の菅首相の現在の支持率です。菅首相は自分の政治的な運命が大会と密接に結びついているため大会を中止することができないのではないかと恐れているのかもしれません。9月に国政選挙が控えているためです。
最後に日本の政治事情が付加されましたが、基本的には「これだけのお金や人が動いており、中止はできない」という記事です。
執筆後記
オリンピックに関する議論が紛糾していますが、いまの時点で議論しても仕方がない論点も多い気がします。
「コロナの蔓延を防ぐ」と「世界の視聴者、日本の観覧者・関係者、参加アスリート、が楽しめる」は矛盾する課題です。
冷静・科学的なバランス点を具体的に見つける議論をしてほしいものです。
結果的に「コロナで困難な中に開催されたが、東京オリンピックは素晴らしかった」と後世に伝えられるようになればよいですね。
(メルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』 6月27日号より一部抜粋)
社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために
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